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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
コレクター編

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第17話 電気羊の夢

  スプリンクラーの機能が停止し、大広間が水浸しになった。

 赤いパワードスーツの女は、自分の髪を振った。水しぶきが

 飛び、赤いメッシュが入った青い髪が激しく動いている。


 その動作を見たジュリアは、青い髪の女に向かって話した。


「うちで飼っていた犬を思い出したわ。あんたより可愛かった。」

「あら、そう。青い毛の犬なんてこの世に存在するのかしら?」

比喩ひゆよ。あんた、ロズノフの犬って世間じゃ評判よ?」


 ジュリアの挑発に、青い髪の女は笑いながらこう答えた。


「ふふふ・・・。ロズノフ? 初めて聞く名前ね。」

「まだとぼける気? あんたが機械生命体ミュータントで、ヒトの脳みそを

 ロズノフの命令で集めている最低野郎って知っているんだよ。」

「最低野郎・・・ふふふ・・・それがあなたの最大限の悪口?」

「・・・壊す前に聞きたいわ。あんた、名前ってあるの?

 名前もないなら最低野郎にするけど?」

「・・・エスカ。あなたが最後に知る名前になりそうね。」

「エスカ、ね。終わったら、その名前を名付けた奴を探すことにするわ!!」


  二人の戦いが始まった。まずジュリアは両手の平を向き合わせ、指先を

 軽く曲げて見えないボールを掴んでいるような形を作った。そして叫んだ。


散弾砲火ショットガン・フレア!!」


  宙に浮く光の球がジュリアの手元に出現し、それをエスカに投げつける。

 突然光の球は破裂し、そこから赤い色の光の粒が四方八方に飛んで行った。

  エスカは光の粒を猛ダッシュで避け、ジュリアの方へ向かっていった。


  光の粒が当たった場所は爆発を起こし、大広間は燃え盛る炎に包まれた。

 その様子を見たエスカは、ニヤリと笑ってジュリアに話しかけた。


「いいの!? このままだとあなた、二酸化炭素中毒で死ぬわよ!?」

「あたしも機械化人間サイボーグでね。肺も人工物なんだよ!!」

「なら、安心ね!! 逝きなさい!!!」


  エスカは右フックでジュリアに攻撃するが、ジュリアはしゃがんで避けた。

 次の瞬間、エスカは素早く左足でジュリアのこめかみを蹴った。ジュリアは

 よろめき、無我夢中でエスカの次の攻撃を両腕でガードし始めた。


 苦悶の表情を浮かべるジュリアに対し、エスカは打撃を加えながら喋った。


「ヒトってもろいわねぇ!! だから虚勢を張るのよぉ!!」

「く・・・!!」

「私はあなた達を学習したわ!! 誰かとつながるために平気で噓をつく!!

 獲物を狩るためじゃなくて獲物をもらうために!! 不自然な生き物!!」

「ああ・・・!?」

「でも安心して!! 私達はあなた達を救うために働いているのよ!!」


  そう言ったエスカはジュリアにボディブローを食らわせ、その衝撃で

 ジュリアのバストは思いっきり揺れた。体勢を崩したジュリアの首元を

 エスカは両手で掴み、ジュリアを高く持ち上げて、やがて語り出した。


「私達は脳の機械化を目指しているの。脳の構造を徹底的に調べて、

 電子部品で代用できる部分を開発しているのよ。ヒトの意識を

 機械に移植できるようになれば、もうヒトの脳は萎縮いしゅくしない。」

「あ・・・がぁ・・・!!」

「私は脳の代わりにナノマシンで体を操作しているの。だから脳は

 必要ない。そしてナノマシンでヒトの脳を分析し、集めている。

 私の研究成果により、ヒトが超越者になる日が来るのよ!!」


  口から泡が流れ出してるジュリアは、気絶してしまった。

 それを見たエスカは笑いながら、目の前に映るジュリアの

 首をへし折る準備を始めた。骨がきしむ音が聞こえる。


  突然、大量の銃弾がエスカの左側面に当たり、黄色い火花が散った。

 エスカは首を左方に傾け、自分を攻撃した正体を探る。ジンだった。


 自分の右腕を自動小銃のM4カービンに変異させたジンは、エスカに言った。


「そいつを離しな。次はもっとデカいのが来るぜ!?」


  エスカはデカいのが来ると言う発言を聞いた後、反対方向から音がした。

 振り返ると、炎の壁を突破し、飛び蹴りをするゼンが眼前に迫り来る。


  ゼンの靴がエスカの顔面にめり込み、エスカは手を離してジュリアを落とし、

 飛び蹴りによって宙に飛ばされた。エスカは、背中から後ろ向きに倒れる。


 その様子を見たゼンは、構えながらエスカに向かって大声で言った。


「おやっさんの仇だァ!! 往生おうじょうせいやァ!!!」


  ジンはジュリアを抱きかかえ、アミにジュリアの容態を調べさせた。

 アミによる適切なアドバイスのおかげで、ジュリアは息を吹き返した。


「ウッ!! ゲホゲホゲホ・・・。」

「大丈夫か。いいか、無理をするな。」

「あ、あ、あ・・・」

「見てろ。今からオレの仲間があいつと戦うところを。」


  ゼンとエスカの戦闘が始まった。お互いに激しい打撃を行い、ゼンが

 掌底しょうてい打ちでエスカの顎を攻撃し、よろめいたエスカに向かって叫んだ。


「鬼神流ぅぅう!! 眼力大斬がんりきだいざん!!!」


  両手の人差し指が青白く輝き、ゼンは猛スピードでエスカの両方の

 こめかみに自分の指を突き刺すと、エスカのニューラルネットワークを

 司る電子回路を破壊した。エスカの体は痙攣けいれんし、エスカの眼球カメラには、

 睨みつけるゼンの顔を最後に、何も映らなくなる。闇がエスカを覆い隠した。

  ゼンは畳み掛けるように、手を振り下ろしてエスカに言った。


「鬼神流・・・九沙那儀クサナギ!!」


  ビームナイフと化した手刀はエスカの顔面に振り下ろされ、エスカの体は

 真っ二つに割れ、様々な電子部品やケーブルが露出した。エスカは沈黙し、

 ゼンは見つめている。しばらくすると、ゼンは見下ろすように言った。


「おやっさん・・・仇ィ、取りましたよ・・・。俺ァ、おやっさんに

 何も返すことができなかったけど、おやっさんの命奪った奴に報いを

 受けさせました・・・。でも、何も晴れることはねぇです・・・」


  ついに、ゼンはマシュアの命を奪った機械生命体ミュータントを機能停止に追い込んだ。

 後ろを振り向くと、ゼンは倒れているジュリアを抱えているジンの方へ向かう。

 ゼンは虚無感にさいなまれていた。マシュアは本当に復讐を望んでいたのか、

 そう思った瞬間、ジンの声に気づいた。ゼンの耳にジンの声が聞こえてくる。


「まだだ。まだ終わってねぇ!! ゼン、後ろだァ!!」

「!!」


  ゼンに分断されたエスカの体から無数の糸が発生し、引き裂かれたエスカを

 修復していた。分離されていたエスカは結合し、ゆっくりと立ち上がった。

  糸で穴が開いたこめかみを縫合ほうごうし、眼球カメラも復旧した。エスカが話す。


「ふふふ・・・言ったでしょ? ナノマシンで動いているの。」

「バケモンかよ、てめぇ・・・ッ!!」

「何度でも自己修復できる。諦めなさい、あなた達は神の器と戦っているのよ。」


  不敵に笑うエスカ。そこに騒ぎを聞きつけ、ようやく炎の中からトレバー達が

 姿を現した。ジンは早速トレバーにジュリアのことを頼むと、エスカと対峙する

 ゼンの方へ走り出した。ゼンもジンに気づくと、ジンに話しかけた。


「社長!! どうやって奴を倒しますか!!」

「30秒、時間を稼いでくれ。オレがあいつを消滅させる武器を作る。」

「分かりましたァ!! 頼みましたよ!!」


  ゼンはエスカに攻撃を開始した。トレバーはジュリアを担ぐと、社員達に

 ゼンの援護をしろと伝え、大広間から離脱した。『ケルベロス』の社員は自動

 小銃でエスカを銃撃した。ゼンとエスカが殴り合うようになると、メンバーは

 攻撃を止め、ゼンがエスカから離れた瞬間を狙って攻撃するようになった。


  一方、ジンは右手で左腕を触り始めた。物体錬成は前世で見た記憶か、

 ジンが内部構造を全て理解した物体しか生成できない。ジンは量子通信で

 アミに話しかけた。ジンはアミにこれから作る武器のことを量子通信網で

 調べてほしいと頼んだ。アミは了承し、しばらく待つようにジンに伝えた。


 それを聞いたジンは、大声でゼンと『ケルベロス』のメンバーに叫んだ。


「すまねえ、皆!! あと3分時間を稼いでくれ!!」


 エスカの攻撃を避けながら、銃のリロードを行う『ケルベロス』の男が話す。


「こっちはもう時間を感じられるほど余裕はねえぞ!! 急げ!!」


 エスカの猛攻を受けるゼンも限界を迎えていた。一方、エスカは疲れない。


  突如、ジンの左腕が変形し始めた。左腕が裂け、見る見るうちに別の物体に

 変わっていく。左手は小型のパラボラアンテナになり、残りの腕部分は長方形の

 コンデンサユニットに変化した。変異した左腕を右手で支えると、ジンは量子

 通信網を利用して、通信受信機を耳に入れているゼン達に命令を下した。


 (みんな離れろ!! 今から赤い奴にこいつを食らわせる!!)


  ジンの声はエスカには聞こえず、ジンの言葉を聞いたゼン達は一斉に

 エスカから離れた。エスカが周囲を見渡すと、白いパラボラアンテナが

 視界に入った。そして、次の瞬間。アンテナから電磁波が照射された。


  ジンのコンデンサに蓄えられた量子エネルギーが一気に解放された。

 発射されたのは、光速で空間を叩く電磁波の津波。それはエスカの体を

 通過した瞬間、彼女の周囲が陽炎かげろうのように歪み、やがて収束していく。


  エスカの動きが止まった。そして電子制御されたナノマシンは過電圧で

 故障し、形を維持できなくなった。数兆のナノマシンは黒いすすになり、

 まるで子供が砂の城を壊すように、エスカの体は崩れ落ちる。黒い砂塵さじん

 山へと変貌したエスカは、かつての美しい女暗殺者の面影おもかげを感じさせず、

 エスカが奪ったキャサリン・アンダーレッドの脳みそごと、消滅した。


 激しく燃える大広間の床に現れた、すすの山に向かって、ジンは言った。


 「世のため、人のためとか・・・てめえの身勝手な夢を押しつけるなァ!!」


  ジンはこれまで戦った者達のことを思い出した。ヒトの未来のためだと、

 ハンクは子供を宇宙へ放出した。骸骨顔の男はシティのためだと言って、

 移民を攻撃した。そして、コレクターはヒトを超越者にさせたかった。

 どうして彼らは自分本位な夢を見るのか、ジンには理解できなかった。


  屋敷は炎に包まれ、ついに倒壊した。外では既に脱出したトレバー達が

 ジン達の帰りを待っていた。しばらくすると、トレバーの視界にはゼンに

 肩を貸しているジンの姿が映った。他の『ケルベロス』の社員も無事で、

 コレクター事件の被害者はこれ以上はないと思える、そう彼は確信した。

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