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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
怪人六面相編

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第18話 都市伝説

 プライドシティ 学生街 サピエンティア地区 グレートブリッジ高校


  午前11時、宇宙センターがある人工島と街をつなぐ橋の近くに建設された、

 グレートブリッジ王立高校の教室で大勢の学生がVRグラスを着けていた。

  彼らは脳インプラントの代わりに、VRグラスによって仮想空間に入り、

 自然溢れる環境の中でAI教師による授業を受けている。AI教師が喋った。


「では、ループ量子重力理論に基づいて、この課題に取り組みましょう。

 アリー・クロイツさん。量子トンネル効果による変換が起こると、

 ブラックホールはどうなるか、分かりますか?」


  眼鏡を掛けたエルフの男性に見えるAIに質問され、アリーは戸惑った。

 金髪碧眼で、ボブヘアが特徴の少女アリー。得意な科目は特になしで、

 アリーはキョロキョロと周囲を見回していた。誰も彼女を助けなかった。


 数秒後、AI教師はアリーの無回答を気にせず、語り出した。


「量子トンネル効果による変換が起きますと、粒子が本来通過できない障壁を

 確率的にすり抜け、内部から外へ放出されます。この過程によって粒子は

 質量を失って蒸発しますが、量子重力効果でブラックホール自体が最終的に

 ホワイトホールへ変化する可能性を秘めています。」

「ブラックホールに吸い込まれた粒子の情報は消滅するのか。量子力学では、

 ブラックホールの表面にホログラムのように記録され、蒸発する粒子の

 情報はホワイトホールによって放出されると言われています。つまり、

 ホワイトホールを発見すれば、ブラックホールに閉じ込められた情報が

 出てくると物理学者や情報産業界の間では話題となり_____」


  授業が終わると、生徒達はVRグラスを取り外し、リアルの教室を出ていった。

 ふて腐れた態度のアリーに対し、隣に座っていたピンク髪の少女が話しかけた。


「ね、今回の授業、マジでつまんなかったね。」


  キャシー・アリンガム。学力テストでも上位に入る彼女は、AI教師による

 授業を酷評した。彼女とアリーは同じ平民出身で、現在は校内にある寮で

 暮らしていた。アリーはキャシーにうなづき、食堂に向かうことにした。


  シティではAIによる代替が原因で、シティで生まれた市民のみが定期的に

 支給されるスタンダードインカムによって最低限の生活ができていた。


  贅沢したければ、経済活動で資産を増やす。今の環境に満足する

 アリーの両親は、毎日働かないでゲームや動画視聴で時間を潰し、

 夜はECサイトの値引きセールで購入した冷凍食品とパンを食べる。

  そんな両親を見ていたアリーも、それが平凡な生活だと思った。


  労働に参加せず、消費も最低限のシティ生まれに経済成長の鈍化を

 懸念した経政連は、移民を受け入れることを考えた。出生率が高く、

 勤勉な外国人労働者を新市民にする。移民はAIが買わない商品も買う。

  これが近年、シティの移民問題へとつながってしまった。


  グレートブリッジ高校の食堂に着いた二人は空いている席を探した。

 テーブルには液晶画面が埋め込まれており、アリーは液晶モニターに

 映し出されたメニュー表に向かって話しかけた。


「Aランチ、一つ。ライスは大盛で。炭酸飲料ジュシーも追加で。」

うけたまわりました。それでは席でお待ちください。」


 続いて、キャシーもテーブルの液晶モニターに話しかける。


「あたしはCランチで。スープの代わりにサラダにして。あと食後にコーヒー。」

「承りました。それでは席でお待ちください。」

「あ、コーヒーは砂糖とミルクたっぷりでね。」

「承りました。コーヒーは砂糖とミルクを入れたままで宜しいでしょうか?」

「ダメ。分離して持ってきて。分かった?」

「承りました。それでは席でお待ちください。」


  キャシーが注文し終わると、突然ポケットから小型のタブレット端末を

 アリーに見せた。画面には『ブロードゴシップ』と書かれたサイトに、

 この前二人で偶然見つけた希少な鉱物がある川の情報が書かれている。


 アリーは無表情で、ニヤニヤ笑っているキャシーに対して言った。


「・・・うちらが見つけた川じゃん。なんでネットに書き込んでいるの?」

「これ、情報をネットオークションするサイトなの。投稿したら手数料を

 取られるけど、競売が終わったら全額あたしのものになる。川にあったの、

 レアメタルだから相当関心高いよ。これ絶対、企業も参加していると思う。」

「・・・へぇ。キャシー、そんなにお金に困っていたの?」

「別に。うちのパパやママにも不満ないよ。将来に不満があるだけ。」

「・・・・・・」

「もうAIのせいで給料良い職業に就けなくなったし、ネットライバーに

 なって配信か、株買って生活するしかないじゃん。だからあたしは、

 この国を出て、無人島でのんびり自然に囲まれて暮らすんだ。小屋で

 ニワトリを飼ってさ。そのためのお金がいるからやっているの。」


  キャシーの人生設計を聞いているアリーは、腹が立っていた。

 顔は笑っているが、脳内ではキャシーに対する怒りが芽生えた。


 はぁ? なに・・・自分だけ得しているんだよ。その場所、私が先に

 見つけて、あんたに教えたんだよ。・・・勝手にネットオークションの

 ネタにしやがって。図鑑に載っていない珍しい石を、私達だけの秘密に

 しようと思っていたんだよ!! それをあんたは私を裏切ったな・・・・・・。


 キャシーはアリーの心の中を気にせずに、アリーに向かって話した。


「まぁ、そういうことで。明日からあたしもAI検索で色々とネタ探すからさ。

 アリーもこのサイトでお金稼いでみたら? 二人でやった方が効率良いし。」


 アリーは心の中の声を抑え、キャシーに笑顔で答えた。


「うん、分かった。ありがとう、キャシー。私は大丈夫。頑張ってね。」

「そ。じゃあ気が向いたら悪いけど、あたしの情報、高評価しておいてね。」


  二人が話していると、両耳にピアスをしているウサギの獣人の女性が現れた。

 メイドのような恰好をしており、顔はウサギそっくりだった。彼女は言った。


「お待たせしました。こちらがライス大盛りのAランチでございます。ここに

 ドリンクも置きますね。それと、こちらがCランチでございます。食後の際に、

 申し訳ございませんが、お嬢様がスクリーンの呼び鈴マークを押して下さい。

 私共がお嬢様のコーヒーをお持ちします。ごゆるりとなさって下さい。」


 ウサギのメイドに対し、キャシーは椅子にもたれながら答えた。


「ん。コーヒーはミドロワーナで、砂糖とミルクは別々にね。」

「かしこまりました。それでは、お食事をお楽しみ下さい。」


 キャシーは去っていくウサギのメイドを見送ると、アリーの方を向いて言った。


「大変だよね。移民はスタンダードインカム、もらえないからさ。銀行から

 ローンで家を購入したり、市営団地に住んだりしてさ。お金を稼ぐため、

 やりたくない仕事やる。うちら、シティで生まれて本当に良かったよね!!」


  彼女は屈託くったくない笑顔でアリーに言った。アリーも笑いながらうなづいたが、

 心の中では別のことを考えていた。それは移民のことではなく、今後のことだ。


 よし。生成AIを使って、またキャシーをVRゲームのキャラにしよう。

 こいつをゲームでブチのめそう。もうイライラする。早く帰りたい。


  アリーは箸を持ち、かつ丼に似た丼物どんものを食べ始めた。キャシーもブルーベリー

 ソースをチキンステーキの上にかけると、ナイフとフォークを使って食べた。





 プライドシティ 住宅街 フォートランド地区





  マンションの一室を事務所にしたジンとミシェルは、立体映像に映っている

 ターミナル画面を見つめていた。企業が開発したAIエージェントを使わず、

 自分達だけでプログラミングをしていた。ミシェルは手に埋め込んである

 マイクロチップを応用したエアタイピングでコードを入力していた。


  ジンは眼球カメラを利用し、それでターミナル画面の表示物を解析させ、

 人工海馬に記憶したプログラミング知識を両手のマニピュレータに転送。

 ジンの手が勝手に動き出し、エアタイピングでアルゴリズムを作っていた。


  一方、ソファでくつろぐボサボサ頭のゼンはタブレット端末を持って、

 『ブロードゴシップ』のランキングを見た。ゼンが独り言を言う。


「どれどれ~・・・・・・おー、今人気なのは都市伝説か。なになに?

 この世界にはアカシックレコードという白いモノリスが置かれている。

 モノリスに手を触れると脳が拡張し、未発見の現象のアルゴリズムが

 見つけることができる・・・はぁ?」


  投稿者の名前はワイズマンで、異世界転生者と自称していた。彼の投稿には

 10万以上もイイねの数があり、彼を高評価したレビューを見たゼンは言った。


「・・・ワイズマンさんの言っていることは本当です。私はシティにある

 AerospaceXエアロスペースエックス社の宇宙センターで働いていますが、ブラックホールが量子

 トンネル効果でホワイトホールに転換することが最新の研究で分かりました。

 白いモノリスの正体はホワイトホールの入り口である可能性が・・・って!!

 なんじゃこりゃあ!! これただのオカルトじゃねえかよ!! これで500万ダナーも

 値段がついているのかよ!! おかしいですよぉ、ミシェル姉さん!!」


 ゼンの呼び声に反応したミシェルが作業を止め、ゼンの方に向かって話した。


「ゼン、まだ退勤時間じゃないでしょ? ちゃんと仕事しろ。」

「姉さん、さっき200件ぐらいメール送って、100件も電話かけました。

 果報は寝て待てってヤツです。あとは向こうからの連絡待ちなんすよ。

 うちのサービスを使って、消費者が欲しい商品開発したいでしょうし。」

「う~・・・ならいい。休め。」

「それよりも姉さん、エビデンスがない情報が高評価されているのは

 マズくないッスか? 俺らのサービスは現実世界の情報提供ッスよね?」


  ゼンの素朴な疑問に、自動操作でコード入力していたジンは、手を止めた。

 そして立体映像を閉じると、ゼンが座っているソファの位置まで移動した。


  ジンは黒い布マスク越しに、タブレット端末を持っているゼンとコーヒーを

 飲んでいるミシェルに向かって、『ブロードゴシップ』の理念について語った。

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