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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
コレクター編

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第13話 心機一転

  ジンは新しい会社名を決めると、いま自分がやっていることが

 異世界の歴史の改ざんなのではないかと、自問自答を始めた。


 しかし、これでオレはもう過去のジンがやっていたことを

 変えてしまったな。かすかに感じるジンの亡霊ゴーストがオレに

 何かを言っているような気がした。ベンジャミンの言葉も

 思い出す。本当の自分を認めない限りは本物になれない。

 ジンの人生か。異世界に転生し、途中から昔のジンのように

 生きることを目指したけど、どうやっても過去に戻れねえ。


 ならオレは、新しい人生を作り出すよ。ジン、悪いけど、

 オレはもうお前の生き方を真似るのをやめるよ。今日から、

 オレが『ワイルドパンク』のジンとして、伝説を作る!!


  ジンが決意を固めると、インターホンが鳴った。モニター越しに

 ベージュのトレンチコートを着たゼンが現れた。ミシェルと3人で、

 近くにあるカフェで、ランチする約束を思い出した。ベンジャミンは

 夜の7時頃に来る。それまで3人で今後の事業計画を話すことにした。



ミドロワ王国 沿岸地域 『シンク・バレー』



  プライドシティの朝が始まる。沿岸部には高層ビルが立ち並び、

 大陸部に石造りの旧市街があった。ミドロワ王が支配する領域に、

 突如として現れた都市は、調和というものを一切考えていなかった。


  街の至る所にある電柱に設置された、屋外拡声スピーカーから声が

 突然聞こえてきた。陽気な語り口で、街を歩く人々に話しかける。


『ハーイ!! プライドシティに住むセレブリティとルーザーズ!!』

『今日も元気か!? 俺とジュディも元気にニュースを届けるぜ!!』


  それはプライドシティで唯一放送されているラジオ番組だった。

 今は立体映像で動画ニュースを見るのが当たり前のシティでは、

 ラジオで最新ニュースを聞くのは最早、時代遅れになった。

  それでも、隣国のクロムウェル王国で生まれたラジオを

 レトロとして好む株主が多く、特別に放送を許可された。


『昨日もSWSソーシャル・ウェブ・サービスで知ったと思うけど、Meroメロ社で

 逮捕されたジン・ゼッカードはコレクターじゃなかったわ。

 これで振出しに戻った訳ね。どう思う、ニコール?』

『ジュディ、俺は最初からジンじゃないと思っていたぜ。

 だってそうだろ? このシティで名を上げていた奴が

 いきなり量子通信網ネットワークを管理する会社を襲うか?答えはノーだ。』

『あら。どうしてそう思うの?』

『ハハハ、簡単な話さ。理由なしにメディアを襲ったら、

 その襲撃犯は恰好のネタになる。おまけにMeroメロ社は傭兵スレイヤーに対して

 中立的な立場をとっていた。偏向もなかったし、ジンが襲う理由がない。』

『誰かに依頼されたのはどうかしら? お金もらってキャサリンを

 地獄に送ろうとする人達はこのシティの株主にはたくさん居るわよ?』

『居るだろうな。だからジンは利用されたんだよ。キャサリンは既に

 コレクターに命を奪われ、呼び出されたジンは殺人犯に仕立てられた。

 だけどマシュアも消したのはまずかったな。これじゃあ、マシュアに

 仕事を依頼したことのある人間が捜査線上に浮かぶだろう?』

『なるほどね。マシュアは口封じに消された。おそらくジンを

 キャサリンに会わせるためにマシュアは利用されたのかもね。』


  二人のラジオDJが話していると、数秒間の空白の時間があった。

 しばらくして、ジュディがたった今届いたニュースを読み始めた。


『オーケイ、ガイズ。今届いたホットなニュースよ。シンク・ディファレントの

 CEO、ルカ・フェルメスが殺害されたわ。犯行時刻は昨日の夜11時。場所は、

 オリエント地区にあるナイトクラブね。本当にあそこ治安悪いわね。』

『ああ、まったくだ。ジュディ、あそこは犯罪企業ギャングの『黒桜會こくおうかい』の縄張りさ。

 彼らは王を崇拝しててね。王は転生者の子孫である彼らに寛大だったから。』

『オリエント地区って異世界の地球からの転生者が集まる場所だっけ?

 なんでかしらね。でも、王様に敬意を持っているのに、なんでシティには

 悪さをするの? 真面目に皆が安心して使えるサービスを考えないの?』

『だからさ、ジュディ。彼らはミドロワ王国で犯罪はやらない。その代わり、

 プライドシティでやるんだ。シティは今や独立国家だからね。シティは

 ミドロワの通貨、ダナーを使っていて、自治権も認められている。だから、

 通貨発行権があるミドロワ王国にプライドシティの連中も逆らえないのさ。

 一方でミドロワ王国も、技術力があるプライドシティを蔑ろには出来ない。

 お互いが依存し、バランスを保つことで、戦争しないようにしているのさ。』

『ドワーフに金槌って奴ね。いくら手先な器用なドワーフも、工具なしでは

 何も作れない。覇権国のミドロワもシティの技術開発がないとダメ____』





 プライドシティ 住宅街 フォートランド地区





  ジンとミシェル、新入社員のゼンはマンションの近くにあるカフェテリア、

『ヌーベル・テクスチュア』で昼食を楽しんでいた。ミシェルは生牡蠣のような

 貝を食べており、ゼンはどう見ても日本の喫茶店にあるナポリタンと、ピザに

 似た食べ物を味わっていた。脳以外を機械化しているジンにとって、目の前の

 料理は美味しそうに見えるが、食欲は不思議と感じなかった。ゼンが話し出す。


「ほぉふふ、ひゃあ美味い!! 何日ぶりだろう、こんな豪華な食事!!」

「そうなの? ゼンくん、オリエント地区に住んでいるなら美味しい

 ご飯を毎日食べられるんじゃないの?あそこは屋台も安いし。」

「ミシェル姉さん、そりゃあ違いますよ。俺ァ、普段は自炊なんです。

 毎日スーパーに売っている魚介類や安い鶏肉を買って、山菜をぶち込む。

 まぁ、鍋料理です。たまに茄子とひき肉買って、マーボー茄子を作るのが

 俺の中では贅沢なんですよ。へへ。」

「え。でも、マシュアさんの会社で働いていたんでしょ?給料安かったの?」

「いや、おやっさんがケチって訳じゃないんですよ。高いんすよ。光熱費が。」

「あー・・・最近値上がりしたよね。うちのスラム街でも上がった。」

「え!! スラム街も? そりゃあ、きっついスね。うちは他にも水道代が

 高くなって・・・洗濯物も家でやるよりコインランドリーの方が安いッス。」

「う~。コインランドリー・・・昔、ジンくんと行ったなぁ・・・。」


  電気代や水道代の話で盛り上がっているミシェルとゼンに対し、

 ジンはタイミングを見計らって、2人の目の前に立体映像を出す。

 その映像には今後の事業計画が描かれ、ジンは2人に説明した。


「オレ達、『ワイルドパンク』が今後始める新事業はこれだ。」

「・・・・・・情報投稿ネットオークション!?」

「社長!! ・・・なんすか、それ?」

「この世界では企業が生成する情報に株主が右往左往するんだよな?」

「うん。株主が参考にするのは主に企業が集めたビッグデータだね。」

「ビッグデータって、何十年も集め続けているっていうあれスか?」

「そう!! だが、それはトップダウンで全部受け入りだ。

 そこでオレは考えた。情報をユーザーが集め、ユーザーが

 信頼できる情報を高評価し、その評価が高い情報をネット

 オークション形式で売るっていうサービスだ!!」

「オークションって・・・情報を競売にかけるの?」

「社長!! 客が情報を売り買いするってことスか!?」

「ああ。うちのサービスである『ブロードゴシップ』に

 登録したユーザーが情報を投稿する。逆に情報が欲しい

 ユーザーは持っているユーザーの情報を評価し、もしも

 欲しい場合は競売で手に入れる。例えば報道機関よりも

 早く情報を手に入れるとしよう。投稿者はうちのサイトに

 投稿し、その情報を競売にかけることで、多くの金を得る。

 うちは手数料を売り手から取る。これがうちの収益になる。」

「・・・メディア関係者がユーザーになって、会社に黙って競売に

 参加するのかもしれない。上層部にコントロールされる現状に

 我慢できない社員が情報をリークすることになるかも・・・。」

「ヤバいっスね!! 社長と姉さん、頭良すぎないですか!?」


 まあ、こういうのは地球でも考えられているだろうな。

 この異世界は地球と違って、大手企業が調べた情報を

 一方的に享受する仕組みたいだ。だからオレが犯人と

 メディアが発表すれば基本誰も疑わない。逆に一般人が

 欲しい情報を、一般人が持ってくるようにすれば良い。

 この異世界では受動的に情報を得る一般人で溢れていた。


 ミシェルがあごに手を添え、少し間を置いて、ジンに話しかけた。


「ジンくん。投稿者の役に立たない情報やフェイクニュースには

 どうするの? 大量にいたずらで偽情報を投稿されたら大変だよ?」

「そこも考えてある。手数料だ。サイトに情報を投稿する際は手数料が

 取られる。そうすると投稿者は手数料よりも利益を出そうと最初から

 ユーザーが関心持ちやすい情報を提供するようになる。情報が欲しい

 ユーザーも買う前に内容を調べられる。架空のレストランの場所を

 教えたユーザーを他のユーザーが通報もできる。だったら最初から

 美味しいレストランの場所を教えた方が都合が良いだろ?」

「なるほど、タダで書き込めないからお金になりそうな情報を

 能動的に投稿するように、私達が仕掛けるんだね?」

「というか、コミュニティ作りだな。基本ユーザーがサイトを

 支えていく仕組みなんだ。おそらく皆、企業が管理する情報の

 牢獄にうんざりしていると思うんだ。個人が自由に情報を売り

 買いする、そんなサービスをオレは世界に広めたいんだ。」


  ジンの話を隣で聞いていたゼンは、正直よく分からなかったが、

 何かこの人はデカいことをすると思い、無言でうなづいた。

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