盲点だったわ!
そんなに都合の良い展開は……
サラが、異世界恒例の通過儀礼を頑張ってから3日が過ぎた。
サラは「やれば出来る子」だったみたいで、今や料理も安心して任せられる様になった。
次にサラの近接武器は「棍」にしたのだが、理由は盗賊共の討伐の時に殺らなくて良いのなら殺りたくないみたいだ。
そこで「棍」な訳だ。
棍なら、レベルが上がれば相手との距離を、自分でコントロールが出来るから盗賊共程度なら棍がちょうど良いんだ。
まあ、一応は短剣を持たせているけど、保険程度でしかない。
「ゼン殿!」
「どうした、ラン」
「風上に花の香りがするであります!」
「分かった」
……で、行ってみると、街道の野営用スペースの横に花畑が有った。
「昼食は、あの花畑でしよう」
「分かりました」
「やったであります!」
「良いわね」
それで俺達は、この花畑の真ん中で昼食を取る事にしたが、俺は密かに無詠唱で雷撃弾を撃ちまくっていた。
理由は、この花畑が、モンスターに取っての「狩場」みたいで、先程からちょくちょくとモンスターが花畑に侵入しようとしているから、雷撃弾で花畑に侵入する前に駆除している訳だ。
「……お腹一杯よ」
「それは良かったな、サラ」
「ありがとう、ゼン君」
「ゼン様。行ってまいります」
「気を付けて」
「ランも行くであります!」
「ああ。ランも気を付けてな」
こうして、リンとランは、俺が仕留めたモンスターを回収しに行った。
「リンとランは、何をしに行ったの」
「無粋な出歯亀だよ」
サラが、ジト目で俺を見る。
「……本当は?」
「俺達を狙っていたモンスターが居て仕留めていたから、回収しに行って貰った」
「いつの間に!?」
「これが、あの有名な『無詠唱』だよ」
「……凄い!」
「サラも直に出来る様になるよ」
「本当?」
「本当だ」
「……そっかー」
この後、少しサラと甘い時間を過ごしていると、リンとランが漫画みたいに討伐したモンスターを縄で括り担いで戻って来た。
それらのモンスターを俺の「倉庫」にしまうと、昼食は終了して、再び王都を目指して出発した。
……ベータグシム王国の王都に到着した。
「……マジで何も無かった」
「……本当に無かったわね」
「確かに、盗賊共の討伐や、エグゼに刺激され襲って来たAランクやSランクモンスターとかは討伐したが、ゲーム的なイベントが一切無かった」
「そうよねぇ。道中に寄った街とか都市とかで、違法な人身売買とか、お家騒動とか全く無かったわねぇ」
こうなったら最後の手段だ!
【本当に手を加えてない?】
カランカラン!
【幾ら、貴方にとっての『剣と魔法の世界』という異世界とはいえ、この世界に生きる者達にとっては『現実』です。
そんな頻繁にゲーム的なイベントは起きませんよ】
……そうなのか。
【アドラ様。バカバカしい質問にも関わらずお答え頂きありがとうございます】
……まあ、そうだよな。
「それに、対処出来るから笑い話だが、普通はAランクやSランクモンスターが襲って来たら、充分に物語的なイベントだよな」
「……確かに!」
サラの顔が「盲点だったわ!」に、なっていた。
俺達は、宿屋を探したが、流石は王都だけあって、最高級じゃなくても、エグゼも大丈夫な宿屋が幾つも有った。
俺達は、その中の1つを選んで泊まる事にしたが、決め手は俺を馬鹿にしなかった事だ。
まあ、俺の外見はまだ10歳ぐらいだから、その所為で宿屋からは見下されるばかりだったが、1つだけ見下さなかったから、俺はそこを泊まる宿屋として決めた。
次は、冒険者ギルドに行って狩ったモンスター等の売買だ。
Sランクモンスターは、色々と使い道が有るから解体だけお願いして、それ以外のモンスターと、盗賊共が貯めた金銀財宝を売った。
「……ご、合計で、し、白金貨1枚と大金貨3枚に、金貨8枚に大銀貨9枚となります」
「……どうも」
俺は、受付嬢が出した小袋の中身を確認して「倉庫」に仕舞う。
……チンピラ4人が近付いて来た。
「おい、ガキ!」
「えらく稼いでいるじゃないか」
「依頼を失敗して違約金を払って苦しいんだ」
「だから、ちょっと貸してくれねえか」
「序でに女も貸してくれよ」
「断る。受付嬢」
「は、はい!」
「この王都の門番は馬鹿なのか?
オークとゴブリンのハーフが紛れ込んでいるぞ」
「あ、あの……」
「……ぶ、ぶっ殺してやる!」
……3分後には、リンとランにボコられ身包み剥がされ、鉱山労働行きになったチンピラ4人が、ギルドスタッフに因って運ばれていった。
「2度とゼン様の前に現れないでください!」
「駄犬以下であります!」
「成仏してね」
チンピラ4人分の所持金と売った装備品で、合計が大銀貨1枚と銀貨1枚となった。
Sランクモンスターの解体は今日中では終わらないらしいから明日の午後以降に引き取りに行くが、この後はどうしようか?
「ゼン君。折角だから王都観光しない?」
「そうだな」
「ゼン様が良いのであれば賛成です」
「アタイも賛成であります!」
サラの提案に、俺が応じたからリンとランも反対は無いみたいだ。
そして、俺達は王都観光を始めた。
そして、いざ観光が始まればリンが従者気質を発動させ俺の三歩後ろを歩いている。
ランもリンに習い俺の三歩後ろでリンの横を歩いている。
「流石は王都だな」
「まさに、そうだね」
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