うすいさちよの行動とロマン
紅茶のパックからはみ出ている茶葉を指先で摘み、引き抜く。そこから出てきたのは茶葉でも虫でもなく、アニメ『おじゃる丸』に出てくる「うすいさちよ」に関する記憶だった。
幼い頃に見たうすいさちよ(=28歳、漫画家を目指す独身女性)は、未知の行動をする不思議な生き物だった。
部屋に吊るされた紐に、大量のティーパックを干し、それを何度も使う。
そして、ティーパックでお茶を入れるときには、指先でティーパックの紐を摘み吊るしながら、空いている方の指先でティーパックの表面を何度もついばむ。
――そう。
私は大人になってから、不思議に見えていた「うすいさちよ」の行動を無意識に追体験し、それがきっかけとなって、不思議に思えた他人の行動の理解に繋がった。
とても、とっても感動した。
他人の不思議な行動の意味を真に理解することは、私の人生には無いことだった。
なぜなら、「考える」という行為が私の人生には常にあるため、私の未来には既に先入観が立っている。
心で人を理解することも、
その理解を完了したことも1度もない。
だから自分の行動が意図せず、アニメのキャラクターと重なり、その意味が経験として理解できたとき、私は深い感動を覚えた。
他人の心にひとときでも重なれた気がして、「その人を理解」とまでは行かないが――「うすいさちよ」という不思議な人の心に少しだけ触れた実感があった
◇
私はその時まで、うすいさちよのティーパックを摘むエピソードを忘れていた。
なぜそんなことを覚えていたのか、今となっては分からないままだが⋯⋯昔から不思議に思ったことをずっと覚えている様子があるから、幼い自分なりに、何か強く惹きつけられるものがあったのだろう。
人は思い出せるものだけを「記憶」と呼ぶけれど、実は頭の中には思い出せない「記録」がたくさんあるのかな?
以前、私が人生に詰まっていたときに、その無機質な記録から、あるアニメの曲で知った「青い花」と「ノヴァーリス」という単語が浮かび上がってきた。
気になって「青い花 ノヴァーリス」と調べてみると、そのときの私に必要な「ロマン」の話だった。
思い出せないだけで、そこに「大切なもの」は残されているのかな?
このエッセイを読み終えたとき。
あなたが不思議な気持ちを感じたのなら、私がこのエッセイに込めた「ロマン」を分かち合えたのだと思う。




