第60話 とっても楽しい町遊び
▼26.10.27誤字修正
▼26.11.03加筆修正
シムと友達になった次の日、僕らは目一杯遊び回った。
僕は子どもたちに教えてもらった指折りや爪剥がし遊びを提案したんだけど、皆から非難轟々で却下されたんだよね。子供っぽすぎたのかな。
代わりに武具店や魔道具店なんかを見て回ったり、宝石屋さんや本屋さんで買い物もしたよ。
特にロイとオルのはしゃぎっぷりがすごかったね
ロイは本が大好きで、オルは光ものに目がないってこのときわかった。
そうそう、あのクソババアのマリアがやってる素材屋さん、えっと『素敵な素材屋ペパロニピザ』だっけ。あそこにも顔を出したんだ。
オル以外はばっちり体を見られてた。
あ、僕はちゃんとレジストしたよ。対策はばっちりだったからね。
それでもマリアってばすんごく上機嫌になって僕の頭を乱暴に撫でたあと、ラビロが止めるのも聞かず破格の値段でいっぱい良質な魔石を売ってくれたんだ。あの美味しい草もオマケしてくれたよ。
お得って嬉しくて楽しいね。
それでさ、僕が魔石を頬張ってニコニコしてたら、皆が吐き出せって羽交い締めにして腹パンにビンタまでしてきたんだよ。もったいないとか、トチ狂ってんのかとか色々罵詈雑言付きで。
シムもすっかり不良のノリに馴染んでて、ユックが引くほど本気で殴るわ蹴るわ。最後は胸ぐらまで掴んで魔石を吐き出させようとしてきたんだ。
やっぱ借金持ちだからかな。気迫が違うったらなかったよ。
今度パパっとダンジョンに潜ってもっと良い魔石を盗ってきてあげようかなぁ。
新しく作ったのを除けば、確かこの大陸にあるのは……巨人の聖杯と小人の呪壺だったっけ。
う〜ん、前言撤回。今の僕じゃパパっとは難しいや。
あ、ちなみにだけど、ちゃんと順々に皆に腹パンとビンタのお返ししてあげたよ。屋台で食べ歩きしてるときにね。
最初はユック。
無警戒だったからビンタ一発で頬張ってた肉串を吐き出して呆然と僕を見てきたよ。それからキノコ焼きの件もあったから、ユックの食べかけと反対の手に持ってたのを取り上げて目の前でもぐもぐしたんだ。
ユックは大激怒してたけど、これぞ真の友情で結ばれた友達のやり取りって感じで、感情が昂ぶったなぁ。
でもそれからは空気が一変。
皆、買い食いの度に僕を警戒してたけど、超が何個もつく優秀なゴーレムの僕が、わずかな隙も見逃すわけがない。
それに皆それぞれの吐き出しっぷりを見て爆笑してたから、ヒリヒリしたスリルを味わいながらも結局楽しんでたよ。
でも一番楽しかったのは屋台で食べ歩きからの酒場で朝までどんちゃん騒ぎ。
たまたま居合わせたあのキノコ屋のお姉さんが、実はお兄さんだったてわかったときは驚いたなぁ。元々中性的な顔らしいけど、固有スキルを使うと髪の毛がバサッと伸びてお姉さんみたくなるんだって笑ってた。
そんで大変だったのは夜明け前だよ。
キノコの従魔がお酒に飲まれて主ともどもこの町を苗床にしようと、胞子をバンバン飛ばすは菌糸をわんさか伸ばすはで大騒ぎ。
僕がダメでしょって叱ったら反撃してきてさ、これが強いのなんの。
途中から参戦してきたお兄さんの緑色の燻製ウサギが僕側についてくれてなかったら危うかったかもだよ。
町の危機を救った僕は領主からお礼をもらうべきだね。
それからはまたどんちゃん騒ぎの再開。本当に楽しかったなぁ。これでメネスがいれば最高だったのに。いったいどこに行っちゃたんだろ。
そうそう、僕らの支払いは全〜部シム持ちだったんだよ。そうすればフンコロドルチェのことは許すってユックが言ったからなんだけど、散々殴った後にそれだもん。ユックって本当に性格悪いよね。
シムはシムで「手持ちが……」なんて青い顔してたけど、すぐにフンコロドルチェでひと稼ぎしようと画策するしさ。僕がそれはダメって言ったら、今度は何の迷いもなく借金してきた。リローナ金貨千枚も。怖いくらい潔いいよね。
きっと利子の計算も理解できずに、トイチも裸足で逃げ出すよな利子率で契約したんだろうなぁ。まず間違いなく複利だね。
ロイたちは借金なんていざとなれば踏み倒して他国へ逃げればいいとか言うしさ。
これはもう一番お兄さんな僕がしっかりしなくちゃ。なんてことをお酒を飲みながら思ったような思わなかったような……寝て起きたらあやふやになってた。
今は朝日が本気を出し終えてお昼ご飯を食べる頃だ。僕は窓辺に座って涼やかな風を浴びることにした。
「ふぁ〜、この世にあんな楽しいことがあるなんてなぁ」
まだお酒の飲めないオルだけはすやすや寝てるけど、他の皆は二日酔いで苦しそうだからね。今日は静かに過ごそうと思ったんだ。
「おま、なんでそんな普通なんだよ……」
比較的回復の早いユックがベッドの上から睨んでくる。
「僕は超が何個もつく優秀なゴーレムだもん。お酒なんかに負けるわけないじゃん」
「どの口が……一番酔っ払ってめちゃくちゃだったじゃねぇか」
「そかな? はしゃぎはしたけど、町の平和を守ったり良いことしたと思うんだけど」
「馬鹿キノコを唆して、一緒にこの町を征服しようとした奴が何言ってやがる」
「……? ユック大丈夫? 悪いこと言わないから、記憶が混濁するまで飲むのは止めた方がいいよ?」
明らかにイラッとしたユックが何か言い返そうとしたとき、部屋の扉が乱暴に明け放たれた。
「やっと見つけたぞイコルア!!」
入ってきたのは汗だくのジェダだった。




