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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第6話 ゴロツキがいっぱい

 いきなり叫んでカゴを壊した僕に皆の視線が刺さる。

 ははっ、み~んな目が真ん丸だ。


「ねぇ、さっきのゲーム本当は僕の勝ちだったでしょ!?」


 発声機能が制御しづらくて思ったより語気が強めになっちゃった。だからなのか、揉み手男がビクッと体を震わせる。

 その拍子に落っことした棒を拾ってへし折るよ。これでもう僕を叩けないね。


「訳あって今は出せないけど、ちゃんとオルゲルタ金貨を持ってるんだからね! あとそこのムラサキヘドロドクガエル! 病気をばらまいちゃダメでしょ! この後来る司祭さんに相談すること!!」


 とりあえず言いたいことは言った。

 僕を棒でシバいてきて揉み手男とは友達になりたいと思わなかったから、やり返したりなんかしない。

 早くロイの所へ行こう。


「ちょっと待て!」


 僕を呼び止めたのはムラサキヘドロガエルだ。ソファから立ち上がってぶふぅぶふぅと粗い呼吸をしながら叫び散らす。


「貴様は私が落札したのだ! 逃げ出そうったってそうはいかん! エリック!!」


 何だかよく分からないけど、名前を呼ばれた執事が音も立てず僕の背後の回って腕を取ってきた。揉み手男とその従者もナイフを取り出して近付いてくる。

 乱暴だなぁ。

 だから威嚇のつもりで「わぁっ!!」って大きな声を出した。そしたらそれで終わちゃってた。

 音圧に耐えられなかった部屋は、一瞬でヒビだらけの穴だらけ。僕以外の四人も白眼を剥いて倒れてる。耳からプシュって血が噴き出してるけど、ピクついてるから死んではないね。


「もう、ゲームでズルしたのそっちなのに……」


 こういうの逆切れっていうんだよね。ヤダヤダ。

 四人を置いて部屋を出る。さっきロイを見かけた方は……あっちか。

 ロイがペコペコしてた場所にさっきのオジサンがまだいた。でも寝てるね。他にヒトは……見当たらないや。

 頬っぺたを叩き続けて3分。オジサンの意識がちょっと戻ったから、ロイがどっちに行ったか聞いてみる。


「ロイ~?」


 このオジサン、怖そうな顔してるけど朦朧としてるのにちゃんと返事してくれる良いヒトだ。


「あ、石拾いって呼ばれてるって言ってたっけ」

「石拾いぃ……?」


 オジサンが黒い幕の方を指差した。風に吹かれてぴらぴらしてて光が入ってきてる。つまりロイは外へ行ったんだ。

 僕も外へ出た。


「うわぁ~……」


 さっきはカゴの中にいたからわからなかったけど、ゴロツキだらけだったんだねこの辺り。

 ものすごく見られてる。モヤッとするけど元ご主人様(くそアルファド)の言ったとおりだ。そのうち皆が喧嘩を始めるだろうから足早に通り過ぎよう。

 とりあえず一本道だから真っ直ぐ進む。少し先に十字路が見える。その辺りから突然、道が細くなって荒れた家や汚い身なりのヒトが増えてきた。


「お祭り会場はさっきの所だけだったのかなぁ……わっ」


 キョロキョロしてたら女の子にぶつかちゃった。


「ごめんね――」

「ケッ! 何も持ってねぇのかよ!」


 足を蹴られて唾も吐かれた。

 10歳いかないくらいの子どもなのにガラが悪いなぁ。

 走り去る女の子は少し行くとまたヒトにぶつかった。

 目が悪いんだろう。今度あったら眼鏡をプレゼントしてみようかな。そしたら仲良くなれるかもしれない……ふぁ、なんか良い匂いがする。

 嗅覚異常が治まったのか、お肉を焼いてるいい香りに気付いた。


「あっちからだ」


 誘われるように進んでいくと、屋台が並んでる通りに出た。なるほど、この通りがお祭りのメインなんだね。

 薄汚れてはいるけど、それなりの身なりをしたヒトが行き来している。中にはさっきの子やロイみたいなザ・不潔みたいなヒトもいるけど、数はかなり少ない。


「あ、ロイだ!」


 ロイは屋台でお肉の串焼きを注文していた。10本って言ってるからきっと僕の分も買ってくれてるんだね。

 よかった~。実はちょっと心配になってたんだよね。てっきり置いていかれたんじゃないかって。でも先にお肉を買いに来てくれてただけなんだ。やっぱりロイは優しいね。


「テメェみてぇなのに売る肉はねぇんだよ! とっとと失せな!!」


 僕が駆け出したのとロイが厳つい屋台の店主に突き飛ばされたのは同時だった。ロイは尻餅をついちゃって持っていたお金をバラまいてしまった。

 僕は直ぐ様ロイの側まで行って、お金を拾うのを手伝う。

 ロイは何でか僕を見て一瞬ぎょっとした顔になったけど、すぐに俯いてお金拾いを再開した。


「ねぇ、オジサン! ロイが何かしたの!? なんで突き飛ばしたの!?」


 僕は友達が突然暴露振るわれてカッとなった。僕に睨まれてたじろぐ屋台の店主だったけど、近くにいたお兄さんがスッと前に出るとホッとした顔になった。


「汚ねぇスラムの犬にこの串焼きは高級過ぎんだよ」


 犬? どうして今、犬の話が出てくるんだろう。この兄さん酔ってるのかな。それとも葉っぱキメてる?

 不思議に思ってると他の人たちもポツポツと喋り始めた。


「そ、そうよ。そのお金だって盗んだものに決まってるわ」

「それに臭いもの。食べ物に近付いていい人間じゃないわ」


 なんて聞こえてくる。

 ほぇ……不思議だ。何でそんなことが言えるんだろ。


「ロイはお金盗んでないよ。ちゃんともらってるの僕見たもん。あとそのお肉が高級品? 騙されてるんじゃない? 食べて健康でいられるかもわからないド底辺品質じゃん。それにさ、汚くて臭いのは君たちも同じだと思うけど」


 あっという間に怒号が飛び交うようになった。もう誰がなにを言ってるのかさっぱりわからない。


「はぇ~、これが僕を巡って行われるっていう喧嘩か」


 皆、醜い顔で罵り合ってるなぁ。


「なんか煩くなっちゃったね。あっち行こ」


 僕はロイの手を取って来た道を戻ることにした。

 

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