第5話 オジサンのオジサンによるオジサンの為の気持ち悪い話
運ばれた部屋にロイは来なかった。
代わりにムラサキヘドロドクガエルが着飾ったような太ったオジサンがやって来て、ドカッとソファに座った。
とても偉そうな態度でお付きの執事に金貨を数えるように言ってから、僕を運んできたオジサンの方を向いた。
「よもやこんな掘り出し物があろうとは。下町にも来てみるものだな」
オジサンが僕をチラ見してにちゃりと笑う。さらにもう一回見て舌舐めずり。すっごく気持ち悪い。
この人はロイのお父さんなのかな。だとしたら全然似てないや。ロイはすごく汚かったけど、お風呂に入りさえすればきっと爽やか青年って感じになるもん。
「いやはや、ウェクタール様にそう仰っていただけて光栄にございます」
僕を運んできたオジサンが立ったまま揉み手をしながら答えた。よく見たらさっきの司会のヒトと瓜二つだった。
「しかしかなり臭うな」
「もっ、申し訳ございません」
「拾いものらしいが、風呂に入れる時間もなかったのか?」
「え、ええ。なにぶん急な持ち込みだったもので。目下、大至急教会から司祭を呼び寄せているところでございます」
揉み手男は一瞬自分のお尻を押さえていた。けど僕が臭いと指摘されたのがわかって、少しホッとしていた。なんでだ?
「くれぐれも摘まみ食いはさせるなよ」
「心得てございます」
なんの話だろ。司祭が来て摘まみ食い……恵まれない子供たちへ美味しいご飯を届けるのかな。
まあそれは勝手にやっといてくれればいいや。
「ねぇねぇ、ロイは? 一緒にお祭りを回りたいんだけど」
僕が話しかけると揉み手のオジサンが、腰に下げた棒を手に持って近付いてきた。
「誰が喋っていいと言った!!」
カゴの編み目から棒を入れて思い切り僕のお腹を突いてくる。すごく痛い。
「おいおい、帰りしなに見せびらかして楽しむのだ。傷を付けるなよ」
「ご心配には及びません。欠損の治癒もできる司祭を呼びつけておりますゆえ」
「ほう、知らんな。そのような者が我が領地に?」
「つい先日派遣されてきたのです。おそらく次回の代官会議の際にご挨拶があるのかと」
「ふんっ、これだから教会は……」
話ながらも揉み手男は僕を叩き続けている。
さすがにおかしいと気付いた。ここはロイの家じゃない。ロイは優しいからこんなこと許すはずないもん。
早くロイの所へ行こう。
でも今の僕じゃカゴから出られない。ボロいけど石を運ぶためのカゴも、蓋を縛っている縄も頑丈だった。もう一つの固有スキルを使ってもいいけど魔力がなぁ……。
ものすごく嫌だけど、連結しなけりゃどうすることもできない。今この部屋にいるのは僕以外に四人。ヘドロと揉み手とそれぞれのお付きだ。解析してみるか。
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【名 前】イントロデ・ウェクタール
【種族名】ニンゲン
【出身地】フェリペスアス大陸フェリペ東部連合国ドジ地方
【職 業】ゼルカト山南地方代官
【性 別】男
【年 齢】54歳
【能力値】
〖体〗C〖攻〗G〖守〗G〖速〗G〖精〗G〖魔〗G
【属 性】土
【魔 法】下級:土
【スキル】
〖固有〗無し
〖習得〗体罰,傲慢,酒池肉林
【特記事項】
ムラサキヘドロガエルそっくり,権力を乱用しがち,性欲を満たすことが生き甲斐,27回の離婚歴有り,数多の性病に罹患している
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【名 前】モッテミー・オホー
【種族名】ニンゲン
【出身地】フェリペスアス大陸フェリペ東部連合ノドン地方
【職 業】脱法オークショニア,人身売買組織地方幹部
【性 別】男
【年 齢】42歳
【能力値】
〖体〗F〖攻〗G〖守〗G〖速〗G〖精〗G〖魔〗F
【属 性】水
【魔 法】無し
【スキル】
〖固有〗簡易鑑定
〖習得〗算術,話術,視力強化
【特記事項】
レコリパオーガに似ている,違法なオークションハウスのオーナー,人身売買にも手を染めている,障害を持つ双子の弟がいる,肛門の臭いがキツい
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【名 前】モーへン
【種族名】ハーフドワーフ
【出身地】フェリペスアス大陸カロルネ王国カッカ地方
【職 業】脱法オークションハウス経理
【性 別】男
【年 齢】76歳
【能力値】
〖体〗E〖攻〗F〖守〗F〖速〗G〖精〗G〖魔〗G
【属 性】火
【魔 法】無し
【スキル】
〖固有〗無し
〖種族〗半長寿
〖習得〗高等算術,筋力強化
【特記事項】
ニンゲンとドワーフの混血,ゴロツキ気質で軽犯罪を繰り返していたところをオホー兄弟に拾われた,大卒,やたら笑顔になる危ない葉っぱ中毒
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【名 前】エリック
【種族名】ニンゲン
【出身地】フェリペスアス大陸フェリペ東部連合国ペベル地方
【職 業】執事,スリ師
【性 別】男
【年 齢】39歳
【能力値】
〖体〗D〖攻〗E〖守〗G〖速〗F〖精〗G〖魔〗G
【属 性】風
【魔 法】無し
【スキル】
〖固有〗無し
〖習得〗中級算術,簡易執事術,簡易体術,高速手技
【特記事項】
ハンサムゴブリンに似ている。12歳の時に両親が他界,翌年叔母夫婦によってウェクタールに売り飛ばされた,手癖が悪い,数多の性病に罹患している
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………だめだ。
能力値が低いのもそうだけど四人中三人が病気持ち。他一人も肛門の臭いがキツイってのが受け入れがたい。
頼みの綱はここに向かってる司祭さんか。それまでは頑張って耐えよう……ん、待て待て。そういえば僕、ストーンゴーレムの魔力結晶体の破片を拾ってたんだ。
厳密には魔核ではないから燃料にできるか不安だけど、試してみる価値はありそうだ。
隙をみてポケットから破片を取り出し口に放り込む。魔核に比べて味は薄めかぁ。不味くは……ない。いきなり噛み砕くのも、一気に飲み込むのも心配だから、キャンディみたいに口の中でコロコロしてみる。
「ん? む? ぬ? う~ん……」
燃料になってるような、なってないような……ただ確実に少しずつ溶けている。
ま、やってみるか。
魔核燃料機構を起動させると、途端に『燃料不一致! 誤作動の恐れあり!!』ていうエラーメッセージが頭の中を駆け巡った。頭がガンガンするよ。でもやってできなくはなさそう。
よし。じゃあちょっと恐いけど最終安全装置解除のキーワードを唱えよう。
「いくぞ! やるぞ!! ぶっ殺せ~!!!」
思いきって魔核燃料機構を作動させると、カゴはあっさり引き千切ることができた。




