第4話 ゼルカト山麓の町
▼26.06.13誤字修正
▼26.07.08後書き追記
あわあわしててもしょうがない。先ずはシステムの総チェックだ……うん、問題なし。
じゃあスキルか?
隠し効果や変な効果付きのスキルがないか一つずつ確認していこう……うん、習得スキルの四つが引っかかった。
【うっかりエッグマニア】
【不完全リヴァイブスプラウト】
【異常空腹】
【うふふ、私リリカよ!!】
確かにこれらは僕の産まれた時には無かったスキルだ。
実態の無いものを解析すると疲れちゃうけど、こればっかりはやらないわけにはいかない。スキルの名前をじ~っと見つめて、詳しい情報がぼんやり浮かび上がってくるのを待つ……うわぁ、どれもこれも隠しバッド効果があるじゃん。
魔力や精神力不足でスキル自体は使えないのに、バッド効果だけはしっかり発動してるところがアイツらによく似てる。
縁を切っても迷惑をかけてくるなんて、とことんムカつくやつらだ。な~んてイライラしてたら、いつの間にか町の中に入っていた。
「ねぇ、町に入るにはお金を払わなきゃなんだよね? 僕の分出してくれたの?」
小声でロイに聞いてみたら「そうだ」って返事がきた。
何か悪いことしちゃったな。後でちゃんと返さなくちゃ。
「あ、僕、この町に来るの初めてだから犯罪歴とかの確認もいるんじゃない?」
これも勉強したんだ。何の意味があるのかわかんないけど、セキュリティがばがばの魔道具で調べるんだって。
少し間を置いてからロイは教えてくれた。
なんでも、ゼルカト山の山麓には東西南北に四つの町があって、それらの住人が衛兵に心付けを渡して責任を持つって一筆書けば、連れの身元確認は不要らしい。
それはまたずいぶん呑気な……いや、それだけどの町も治安がいいんだろう。
そうか、だからロイみたいな優しいヒトが住んでるんだ。
よし、決めた!
「あのさロイ、よかったら僕と友達になってくれない?」
「と、友達? 俺とお前が?」
「うん。実は僕ね、家出してきたんだ。一応、たくさん本を読んで外のことは勉強したんだけど、わからないことも多くって……ロイが友達になってくれたら心強いなって思ったんだ。あ、僕ばっかり助けてもらったりしないよ。ちゃんと僕もロイの役に立つからね」
ちょっと恥ずかしくて早口になっちゃった。
カゴの中だから見えないけど、ロイが嬉しそうに頷いたような気がした。
「宿はとってるのか? それとも山麓の町……ここは南町だが知り合いを頼りに?」
「ううん。僕、外に知り合いはいないんだ。生まれてからずっと同じ所にいたから……」
「そうか」
それっきりロイが喋らなくなっちゃった。重い話だと思われたのかも。まあ重いっちゃ重いか。
「とりあえず俺の家に行こう。落石が多いから蓋をするぞ。カゴの目は粗いけど危ないから手を出すなよ。それから少し寒い場所なんだ。もう一枚布をかける」
一旦カゴを下ろしたロイが分厚い布をかけてくれる。
暗くなったし声もよく聞き取れなくなったけど、その心遣いが嬉しかった。
それから二十分くらい経ったかな。カゴの外が少しざわざわしてきた。太鼓や管楽器の音も聞こえてくる。もしかして今日はお祭りだったのかも。だとしたらラッキーだ。
ロイと一緒に屋台を回って食べ歩きなんてどうだろう。絶対楽しいと思う。嗅覚も完全にイッてるからロイの臭いも気にならないだろうしね。
わくわくしてたらカゴが地面に置かれた。ロイの家に着いたんだ。どんな家かなぁ。広いかな。まあ狭くてもいいけどね。僕がボディをコルキスフレームにすればいいんだ。
「ねぇ、ロイ。もう出ていい? それとも片付けるからちょっと待ってくれ、とかそういう感じ?」
変だな。返事がない。
あ、分厚い布のせいで小声じゃ聞こえないのか、なんて思ってたらバサッと布が取り払われた。眩しい。
「――でございます!!!」
ふぁ……広い部屋にたくさんヒトがいる。皆、ロイの家族かな。僕を見てるね。挨拶した方がいいかな。
「おお、これは素晴らしい! さあ、先ずはガルベール金貨500枚から! はい、1000枚! 1300枚! なんと63番様が3000枚! おっ、107番様が5000枚!」
拡声の魔道具を持った司会の男が場を盛り上げてる。それにつられて僕を見てるヒトたちが金貨の枚数を増やしていく……お祭りのゲームなんだろうけどよく分からない。外には不思議なゲームがあるんだなぁ。
「何とも凄まじい! 15番様が6万枚!」
金貨6万枚の発言でどよめきが走った。凄いとか流石とかって聞こえる。何がだろう。ガルベール金貨って混ぜ物だらけで嫌われてるカス金貨なのに。
でもこれでここがどこかわかったね。ガルベール金貨を有り難がってるのはフェリペスアス大陸の東側しかないって本に書いてあったもん。
「さあ6万枚以上の方、いらっしゃいませんか!? いらっしゃいませんね!」
「はいはいはい! オルゲルタ金貨8万ま~い!」
皆盛り上がってて楽しそうだから、僕も参加したくなってちゃった。カゴの隙間から手を出して大声を出す。
ふふっ、ガルベール金貨6万枚でどよめくくらいだもん、ずっと価値のある世界三大金貨で参加したら失神しちゃうんじゃないかな……あれ? 静まり返っちゃった。
「僕、何か失敗しちゃった?」
こっちを見てポカンとしている司会の人に聞いたら無視された。
「どうやら、薬が効きすぎているようです! 失礼いたしました! それでは他にいらっしゃらないようですので15番様の落札です!」
司会のヒトが小さな木槌をコンコンすると、皆が僕を無視してわ~って盛り上がった。
それでゲームは終わったみたいで、僕はカゴごと別の部屋に運ばれて行く。
むぅ、感じ悪いなぁもう。失敗してたんなら教えてくれてもいいのに。
途中、ロイが知らないおじさんにペコペコしてるのが見えた。なんだか袋を受け取って泣きながらお礼を言ってる。落とし物を拾ってくれたのかな。ん、いやあれはお金だ。
はは~ん、今日はお給料日だったのか。わかるなぁ。僕もお給料日は泣くほど嬉しかったもん。まあそれも近年は忘れられてたんだけどさ。
なんだかタカるみたいで悪いけど、デコイズが使えるようになるまではロイに食べさせてもうわけだし、なんたって今日はお祭りだもんね。だからいいよね。
「ねぇ、ロイ~! この後、お祭りで食べ歩きしようよ!」
大きめの声を出したつもりだったけど、ロイには聞こえなかったみたいだった。
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