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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第57話 金貨いっぱい嬉しいね

▼26.10.18誤字修正

 金目のものかぁ。

 ぽつんと残された五つの扉がある部屋で考えてみる。僕の思うものとユックの思うものが一緒かどうか、記憶を探ってもいまいち自信がない。

 それに最初に来たときはそんなの気にしてなかったから、看板と本しか解析しなかった。

 とりあえず面倒臭いけど、改めて建物全体を解析しよう。盗り逃しがあってあとで文句言われないようにたっぷり魔力を使ってね。


「あっ……」


 見つけちゃった。最上階に金貨がわっさりある。あと建物の上下四隅に、フラテムルビーとヴォルキリオゴールドとスファメリスアガーウッドを組み合わせた特殊タリスマンが埋まってるや。

 何を防ぎたくてこんな異常お守りを……いや、違うね。精霊の住処を作るためだ。火の大精霊を召喚しようとした痕跡がある。

 囚われてたヒトたちがいた上の階から最上階の二つ下までが、そのための空間なのか。この建物すっからかんすぎて耐震性に不安しかないね。

 え〜っと、やったのは二年で……大失敗っと。火の魔力や精霊力が暴走して何人ものフラテリス教神官と、供物として誘拐されたヒトたちが燃えカスになっちゃったっぽい。そして今も空間中央に浮かんでる空間穴作成型放射魔法陣から火の精霊力がだだ漏れ。

 う〜ん、これ耐震云々の前に特殊タリスマンが耐えきれなくなったら建物ごと大爆発するんじゃないかな。

 身の程知らずにもヒト種が大精霊を召喚しようとした結果がこれかぁ……ん、あれ? これってチャンスなんじゃない?

 むふふ、僕ってツイてるね。行き方は……隠し部屋から行けるのか。そうとわかれば現場へダッシュだ。


「ほへぁ……」


 隠し部屋のさらに隠し階段を登って着いた部屋には、封印が施された厳(いかめ)しい扉があった。ていうか――


「封印しきれてないじゃん」


 ヒト種が頑張って封印したっぽいけど、所詮はヒト種レベルの封印かぁ。

 何人たりともこの扉を開けること叶わぬとか書いてあるけど、僕はヒトじゃなから関係ないよね。


「こんな封印クソボケ雑草チビ(アドイード)のに比べたら楽勝楽勝〜♪」


 ここをこうして、こっちああしてぇ……ふふん、思ったとおり大したことないね。じゃあ、次はあそこを――あ、ミスった。はわわわ、扉から火魔法がバンバン飛んでくる。

 こねこね、こねこね、こねこね――ああもう、熱いし面倒臭い!


「フォグミストヘイズ!!」


 魔法も封印も扉ごと全部まるっと霧にして瓶詰めしてやった。ふぅ、最初からこうしとけばよかっ――どわぁぁぁぁ!!?


 封印扉がなくなってぽっかり空いた穴から尋常じゃない炎の波が襲いかかってきた。

 もう一回フォグミストヘイズを発動して霧にしてるけど全然追いつかない。とどまることを知らない精霊力が暴走してるんだ。

 部屋に充満した霧とまったく衰えない炎の波がせめぎ合ってる。なんでか知らないけど特殊タリスマンも炎の波に加勢してて、このままじゃ大爆発一直線だ。


「ぬぬぬぬぬ、解析してなんとか状況の打破を……ぬはっ!!」


 魔法陣の向こう側で火精霊の集団がニヤニヤしてる!  

 くっそぅ、そういうことか。魔法陣が機能しっぱなしなのは、精霊たちが遊ぶためにわざとそのままにしたからなんだ。

 捕まってた子どもたちにやたら火傷が多かったのも、熱がるあの子たち見て笑ってたんだよ。向こう側から閉じられるってのに本当精霊ってタチが悪いや。目にもの見せてやる!


「せいっ!!」


 胸をかっ開いてコアを露出させて、そのまま霧もろとも精霊力を吸い込んでいく。

 一定量を超えたところで、ぽこんぽこんとコアが分裂して小さな偽物のコアが僕の周りに漂い始めた。スピリットデコイズの完成だ。


「小さのが五つか」


 やっぱ下級だとこの程度だよね。

 ちょっと残念に思いながらデコイズを操作して、魔法陣の向こう側へ。

 ふふふ、身の程知らずな精霊たちが慌てふためいてるや。僕に喧嘩売ったこと後悔させてあげるよ。あと子どもたちをイジメた仕返しもね。


「捕獲捕獲〜♪」


 十数体いた下級火精霊をデコイズでパックンすると、さっきまでが嘘みたいに静かになった。


「さて、と……」


 折角だから魔法陣も引っ剥がしてこねこねしとこう。けっこう魔力が残ってるからね。

 そうだ。折角だしミステリーモードでこねこねがいいね。欲しいものモードと違って何が出てくるか分かんないけど、こねこね効率はこっちのが断然上だもん。もしかしたらいいもの出てくるかも……はへぇ、なんだこれ。


「深紅色したぺらぺらの風船……?」


 ちぇっ、いらないや。あ、でもオルにあげたら喜ぶかもね。風船だぁ〜って子供らしく……遊ばないか。そんなの全然想像できないよ。

 他にもこねこねできそうなものはあるけどもういいや。早いとこ最上階の金貨を集めてユックの所へ行こうっと。


「……ん?」


 移動中、何だから建物が揺れてる気がした。地震かなって思って、それなら浮けば関係ない――なんて悠長なことを考えてた僕がバカだったよ。

 建物が木っ端微塵になっちゃったからね。

 たった二年間とはいえ精霊力でびたびたになってたあの部屋は、魔法陣という要を失ってた崩落。おまけに特殊タリスマンも金貨のある最上階や違法奴隷店を巻き込んで破裂。ううん。爆発だったね、あれは。

 町の人たちは轟音とともに空から大量の金貨が降ってきて大喜びだったらしいけど、僕は大わらわ。

 しかも後でユックに正座させられてさ、宿屋で小一時間も説教と嫌味を繰り返されたよ。

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