第38話 皆まとめて自然破壊
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準備時間が終わる五分前に僕とメネスは皆の所へ戻った。
パールは何度か実習でここに来てるらしい五回生の使い魔たちと情報交換をしてたようで、どの辺りにどんな魔物が出るのか教えてくれた。調達目的の木が好む環境とか珍しい薬草が生えてる場所もね。
解析すればだいたいわかることだけど、ありがとうって言ったらパールが嬉しそうに笑ったよ。
「パパパパ、パール。ぼく、こ、ここ、こんな危ないところ初めてで怖いんだ。ぜぜぜ絶対側を離れないっ、ないでね!」
隣で青ざめてたヘパイスが、パールの手をぎゅって握ってる。
こんなに怖がることはパールなら予想できただろうに、なんで一緒に来るって言ったんだろ。
「もちろんよ。私はヘパイスのお姉さんだもの。何があってもあなたを守るわ」
あ、そうだ。今のうちにヘパイスにパールのバグのことを教えてあげよう。製作者じゃないけど主だもん。知っておかなきゃだよね。
「ふぁら、ら~ふぁらら~ふぁふぁ」
「え、ああ確かにそうだね。メネスってば気配り屋さんですごいね」
タイミングは今じゃないってメネスが教えてくれたんだ。あんなに怖がってるのにバグがあるなんて知ったら正気を保てないって。そのとおりだよね。今すぐどうこうなるようなバグじゃなかったから、大学に戻ったら伝えよう。
「イコルア! 地図をもらったぞ! 確認しよう!」
ジェダが五回生にもらった地図を振り振りしてる。今まで先輩にも見えてなくて無視されてたから、きっとやり取りできて嬉しいんだろうね。
今の僕なら解析で事足りるけど、仕方ないから付き合ってあげようかな。
「じゃあヘパイスとパールも頑張ってね。僕たちと一緒だと危ないから。ほら、ね」
やたら大人しくて、ずっとニヤニヤしてるオーラメイダーの方をチラッと見るとヘパイスとパールが「ああ……」って頷いた。
「念のためにアンドロミカ教授の側から離れない方がいいよ」
「そうですわね。イコルアたちも気を付けて」
「ふふっ、僕たちなら大丈夫だよ。ね、メネス」
「ふぁら~」
「いや、そこは私の名を言うべきだろ」
ジェダが突っ込んできたところで、準備時間が終了になった。
「準備は万端だね!」
「イエス、マム!!」
ギガゾディア教授は相変わらず熱血だ。アンドロミカ教授の方はやわやわな空気感でなんとも羨ましい。どうやらこっちの邪魔にならないよう、向こうは僕たちの十分後に出発するみたいだ。
「森に入ったら先ずは各々に出した課題を採取しな! そのあとは自由だ! だが四時間後に第三野営地へ集合するのを忘れるんじゃないよ!」
「イエス、マム!!」
あ~あ~、ジェダまで同じノリになっちゃって……偽の地図を渡されたってのに、なんだか悲しいね。
「そいじゃあ行ってきな!」
「イエス、マム!!!」
ギガゾディア教授のゴーサインで目付きのヤバい軍団が駆け出した。同じく駆け出そうとしたジェダを止める。
「暗殺のこと忘れてるでしょ。あとね、ガルルーいたよ。仲間と一緒に僕らを殺る気満々で森で待ち構えてる。そこら中に罠が仕掛けてあるし、先に行った学生たちもたぶん僕らの邪魔するつもりだよ。地図も偽物だったし。大怪我したくなかったら慎重に行動した方がいいよ」
「そ、そんな……」
ショックを受けてるジェダが可哀想だから、地面にワラルーが寝転んでる絵を描いて元気付けてあげる――痛っ!
あとちょっとで完成だったのに手を叩かれた。よしよし、元気が出たみたいだね。ジェダ、大慌てで絵を消してるもん。
「さて……っと」
改めて解析した感じだと第三野営地は積み重なった森の下から五段目にあって、目的の木もそこから上にしか自生してない。それにそこまでに棲みついてる魔物はせいぜいDランク止まり。
どうやら暗殺者もオーラメイダーの使い魔っぽいし、それならガルルーとその仲間の方がよっぽど厄介だ。どうしよっかなぁ~。
「どうした? 行かないのかい?」
ギガゾディア教授が挑発するような顔で言ってくる。ガルルーが待ち構えてるのがバレてるとは思ってなさそうだ。ふふん、お見通しだよ~だ。
「僕、この罰を楽しい遠足だと思うことにしたんだ」
「なんだって?」
「だから真正面から相手するのが馬鹿らしくて……ねぇ、ギガゾディア教授の学生は戦場でも死なないんだったよね? じゃあいいよね?」
「あんた何するつもりだい……」
僕はギガゾディア教授に答えず、スキルのオッドダンスを発動する。
「な、なんだその奇妙な踊りは?」
突然踊り出した僕にジェダが引き気味だ。おまけに残ってる学生たちは僕を指差して笑ってる。オーラメイダーなんかお腹を抱えて爆笑してるよ。まったく、僕のダンスはセンスの塊だってのに失礼なやつらだね。
ついでにいうと、パールは僕が何をしてるのか見極めようとこっちを凝視してて、メネスはあわあわしてる。
「おいおい、嘘だろ」
「あんた……」
メネスに続いてアンドロミカ教授とギガゾディア教授が気付いたみたいだ。森の中に大量の低級魔物が出現してることに。さすが教授だね。
オッドダンスは動植物に魔素を流し込んで魔物化させることもできる便利なスキル。ただ最大でもAAAランクまでの魔物にしかできないし、その魔物とは意志疎通できないから友達にはなれないのが欠点かな。
「あとは~、それっ!」
僕は仕上げでペネピゾン森林に火を放った。ユックの中級聖火魔法使ってね。ちょっと物足りなかったから、これまたユックの赤き煌めきの祈りとアンバーボルト教授の上級風魔法を使って火力をドン、ドドドンって煽っていく。でも燃やすのはちゃんと第三野営地がある五段目から下だけにしてあるから安心だよ。
「わ~い、大炎上大炎上」
学生たちはここまできてやっと驚いてる。僕のダンスを馬鹿にする前に、もうちょっと色々頑張った方がいいと思うな。
「これで面倒臭いこと一気に解決だね」
「イコルア、お前なんてことを……」
「ジェダは気にしすぎだよ。さ、行こ。メネスも一緒に来る~?」
「ふぁららら~」
「そっか。じゃあ気を付けてね」
メネスは健気だよね。あんなでも主は主だからオーラメイダーの側にいるんだって。一緒に連結スキルを選び直したから、もう殴られても怪我はしない。でも心配は心配だよね。心は痛いはずだもん。
「やってくれたねイコルア……この森は学生以外も使うんだよ」
「でも今日は貸し切りなんでしょ? 学生以外はみ~んなテントで待機してるの、僕気付いてるよ」
「チッ、てことはガルルーのことも――なんだい!?」
僕はテントから出てきた冒険者たちに詰め寄られてるギガゾディア教授を尻目に、ジェダを抱えて第三野営地目指して浮かび上がった。




