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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第35話 パール襲来

▼26.06.27誤字修正

 教授会議からの帰り、ジェダは授業の準備があると言って僕たちと別れた。

 魔法実践場が壊滅的だから今日は座学しかないらしくて、急遽捩じ込まれた授業がアンバーボルト教授の属性融合とメキザパッド学長の魔法陣干渉。どっちもえげつない難解さで学生は皆苦労してるんだって。


「属性融合も魔法陣干渉も慣れれば簡単なんだけどなぁ~」

「ふぁらら~?」

「メネスにもできるよ。僕が教えてあげるね」


 といわうけで、使い魔的にはなんにもすることがなかった僕に予定ができた。使い魔の塔(ラウンジ)へ行ってメネスとキャッキャ言いながら勉強会をする……つもりだったんだけどね。まさかのパールが待ち構えてたんだ。一般ラウンジで。

 あ~あ、友達と勉強会するの憧れだったのに、厄介事の予感がするなぁ。


「話がありますの」

「僕はないよ」

「私が! 話しがあると言っていますの!」


 え~、面倒臭そう。なんか昨日から怒ってるし、一緒にいたくないんだよね。


「行きますわよ」

「どこへ?」

「上級ラウンジに決まってますわ」


 髪をふぁさっと靡かせてパールが歩き始めた。でも僕はついて行かない。


「それじゃメネスが一緒に行けないじゃん」

「……その尻尾四角錐(テールピラミッド)も私のお世話係に任命して差し上げますわ」

「それはダメだよ。パールって絶対我が儘でしょ。ううん、くそ我が儘放題。大切な友達が被害にあうなんて僕、看過できないよ。あと僕、パールのお世話係になるの了承してないから。そんなのまっぴらごめんだよ」


 きっとまた真っ赤な顔で怒り出すんだろうけど、言うことは言わなくちゃだ。なんて思ってたらパールの目からはらはらと液体が溢れ始めた。魔力オイルだ。口から回収してないから、ものすごくもったいない。


「わ、わた……」

「綿? あ、もしかして急に涙腺が馬鹿になっちゃったの? パールのボディパーツって安物だからそういうこともあるよね」


 涙腺を塞ぐのに良いものがないかなとポケットに手を突っ込んでみたけど、やっぱり綿なんて都合の良いものは持ってなかった。ただ、代わりに良いものが入ってたよ。


「あいにく綿は持ってないけど、拾ったお菓子の包み紙ならあるよ。すっごく良い香りがするんだ。とりあえずこれ詰めとく?」

「う、ううぅぅぅ……」


 どうしよう。故障が激しくなっちゃった。魔力オイルがぼろぼろ溢れるてるや。ヘパイスを呼ぶべきかな。


「ふぁら、ふぁらら~らぁ!」


 メネスが女の子を泣かせちゃダメだよって怒ってる……いや、男の子でも泣かせるのは良くないと思うよ。

 え、ていうか泣いてるの? 僕のせいで? なんで?


「あ~、えっと……とりあえずこれ食べたら? その捨ててる魔力オイル分くらいの補充にはなるんじゃないかな」


 ポケットから、昨日のお手本(・・・)後にこねこねして作った小粒魔石を差し出す。泣いてる子には食べ物を渡せば九割解決するって本に書いてあったよね、確か。

 ちなみに中粒のはあげられないよ。僕とメネスのおやつだからね。


「ふぁら~」


 なんでだろう。メネスが呆れてる。


「ふぁらら、ふぁらふぁら~」

「うう、ありがとう尻尾四角錐(テールピラミッド)。私、あんな酷いこと言われたの初めてで……」


 わぁ、パールは尻尾四角錐(テールピラミッド)語がわかるんだね。意外だよ。


「どうしてメネスの言葉がわかるの? パールには翻訳機とかついてないよね?」

「……勉強しましたの。ここ二日でものすごく」

「あ、そうなんだ。ふ~ん」


 もしかしてパールも尻尾四角錐(テールピラミッド)派なのかな。犬派とか猫派とトカゲ派ばっかりで、なかなかいないんだよね尻尾四角錐(テールピラミッド)派。ちょっと印象アップかも。


「でもメネスは僕の友達だからね。さっき言ったけどパールのお世話なんてさせられないよ」

「ふぁら~、ふぁふぁふぁら~」

「え、パールは優しい? うっそだぁ~」

「ふぁらら!」


 メネスが怒っちゃった。

 なんでかなって思ってたら、パールは前々からオーラメイダーに殴られたメネスを治療してたんだって教えてくれた。


「パール! 君はなんて優しいんだ! それこそ低品質フェアリアルパウダーの正しい使い方だよ!」


 僕が感激してるのにパールは訝しげな顔になった。


「それですわ。私が話したかったのは、それ。イコルア、あなたどうして私のスキルを知っているのかしら?」

「え? 何でって、そりゃ解析したからだよ。パールのことは何でもわかるよ。身長、体重、ボディパーツの劣化具合やコア情報、あと本当はレグルスより高性能だけど、兄妹設定(シスタープログラム)のせいで強く言えないとかね」

「ふぁ、ふぁ……らぁ」


 どうしたんだろ。メネスが困った顔してる……パールも真っ赤な顔だね。また怒鳴るのかな。そしたら離れればいっか。


「い、いやぁ……」


 パールが手で顔を隠したよ。何か見たくないものがあったのかな。害虫? そう思ってきょろきょろしてみたけど、そんなのどこにもいなかった。


「ふぁふぁらぁ、ふぁら~」

「え、そうなの!? いやでもなぁ……」


 メネスは使い魔を勝手に解析するのはマナー違反だって言うんだ。でもそんなことどの本にも書いてなかったし、いちいち解析していい? なんて聞くのは……でもとりあえず謝っとこうかな。友達の注意は聞くべきだもんね。


「ごめんねパール。使い魔を勝手に解析しちゃダメって知らなかったんだ」

「か、かまいませんわ。レジストできない私が悪いのですから……」

「あ、だよね。やっぱりそうだよね。だってメネス。やっぱ今のはメネスが間違ってるよ」

「ふぁららぁ……」


 メネスは呆れてるけど、解析しないってのは危機感が無さすぎると思うんだよね。相手を知ることはとっても大切なんだよ。


「それから、私のスキルを使ってましたわよね? まさか解析すると使えるようになるなんてこと……」

「ないよ。そういう固有スキルがあるんだ。昨日、僕たちの番のとき、パールの精神力の消耗がいつもより激しかったでしょ? そういうことだよ」


 なんだかよくわかってない顔をしてるけど、概ね納得してくれたっぽい。


「じゃあもう話は終わりだよね? 僕、これからメネスと勉強会するんだ。行っていいよね?」

「私も参加させていただくわ」

「え? 嫌だけど……」

「ふぁらら!」

「ええ!? メネスはオッケーなの? ならいいけど……上級ラウンジには行かないよ?」

「かまいませんわ」


 すごくやり難いなぁって思ってたけど、意外にもパールは真面目にメモ取ったり質問してきたよ。メネスがわからなくて困ってると優しく解説してたし、わかるまで根気よく付き合ってた。子守りスキルにそういう使い方もあるんだって、僕も勉強になったよ。

 お昼も三体で食べることになって「案外草もいけますわね」な~んてパールがびっくりしてるところに、学長の使い魔がやって来た。魔書みたいな蝶々だよ。


「罰は破壊した魔法実践場と学生寮の材料調達に決まりました。明日、日の出前にジェダと学長室に来なさい」


 使い魔が学長の声でそう告げてきた。


「ふぁら~ら~ら~」

「あの爆発、イコルアの仕業でしたの!?」


 明日と明後日は休日なのに大変だねって慰めてくれるメネスと、驚いて目が真ん丸になったパールだったけど、何故か材料調達付き合ってくれるって言ってくれたよ。

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