第33話 魔法の実技授業~舐めプ!~
▼26.06.25加筆訂正,誤字修正
▼26.07.08後書き追記
主への攻撃を察知したガルルーは迷わなかった。
一瞬で防御対象をギガゾディア教授に変更、球状変化させた防御魔法で守りつつ、咆哮を上げながら僕とジェダに上級土魔法を放った。
上下左右と後ろから襲いかかってくる無数の槍は殺意の塊。とてもじゃないけど学生相手にぶっ放していい魔法じゃない。
でも僕だって既にマナローブを何枚も使って、ガルルーの防御魔法みたくしてジェダを守ってる。
それからわざと作られた逃げ道の前方にあえて直進してガルルーに魔導砲のゼロ距離射撃――すると見せかけて蹴り飛ばし、ギガゾディア教授を守る防御魔法の内側に大量の低品質フェアリアルパウダーとウィンドボムを出現させてボカン。
そして「46ページ」の効果であらゆる影に潜めてた聖火属性魔力を装填済みの魔導砲を撃ちまくって、外側からもギガゾディア教授を攻撃する。
二割の防御魔法をぶち壊すならこれでオッケーのはずだったんだけど、ガルルーの本気にはこれだけじゃ足りない。追撃も考えてるし、もちろん立ち上がろうとするガルルーにはファイアライズをプレゼントしてあげてる。足元から火炎の竜巻が発生して――
「――あっ」
まずい、ジェダの呂律が回らなくなってきてる。精神力が尽きる一歩手前だ。まだ四秒も経ってないのに。
ガルルーはファイアライズを防いだみたいだし、砲撃の隙間から見えたギガゾディア教授は、額にぶっとい血管を浮き上がらせてる。
小さき書物を一回使ってあとはパールの装備とスキルだけで終わらせようと思ってたけど、こりゃ早いとこ止めを刺さなきゃだ。ジェダが廃人になっちゃう。
僕はすぐにフォグミストヘイズでステージを濃霧化して皆の視界を遮ると、影属性と相性の良いコルキスフレームにチェンジ。そのままジェダを連れて上空へ飛翔して小さき書物に魔力を全ぶっぱ。
空が一瞬で黒雲に覆われて雷鳴も轟きだす。黒雲の下には小さき書物から飛び出したすべてのページが集まって、大きな禍々しい魔法陣に変じていく。
そしてその中心に僕たちがいる。
外側だけになった小さき書物が青白い光を放ちながら近付いてきて、既に意識のないジェダの胸に吸い込まれていった。
その直後、魔法陣が完成した。
初めてのことなのに、まるでこれまで何度もそうしてきたかのように僕の人差し指がギガゾディア教授たちを指し、口からは自分でも驚くくらい冷酷な声が出た。
「裏表紙、装画――影渦雷」
黒雲が渦巻く漆黒の雷となってギガゾディア教授とガルルーに襲いかかる。
ジェダの体からも同じものが一分間、放たれ続けた。
全部が終わると世界は静寂だった。
よかった。ジェダが廃人になる前に終われたっぽい。
「ふぃ~、もうすっからかんだねジェダ」
土煙に紛れながら荒れ果てた地面に降りてルトルフレームに戻った僕は、ピクピク痙攣してるジェダを最も平らそうな地面に寝かせてあげる。
さすがにあれだけやったら、ギガゾディア教授とガルルーも失神くらいはしてるは――ずっ!?
全然気配とかしなかった。
なのに突然ギガゾディア教授が目の前に現れた。ガルルーを小脇に抱えてて、左手に持ったルツェルンハンマー型の魔杖の切っ先を僕の首元に押し当ててる。
「油断したねぇイコルア。死体は消し炭に、魂は消滅させる。そこまでが戦いってもんだよ」
「それは同感だね」
「はんっ、生意気言うね。にしても無茶苦茶してくれるじゃないか。実践場が荒れ地より荒れてるよ」
影渦雷の影響で地面の至るところがガラス化してるし、辺り一面に充満した影と雷の魔力が他属性の存在を否定してる。
「マム! ガルルー、まだヤれる!!」
「無理さね。悔しいのはわかるが、属性拒絶反応で目を開けてるのもやっとじゃないかい」
「むむぅ……むぅ!」
生粋の軍犬の割には聞き分けがなってないねガルルー。ギガゾディア教授の腕の中で弱々しくジタバタしてる。
じゃ、まったく警戒してない今のうちに、フォグミストヘイズ……っと。
このまま触られたくないのと、ちょっとした意趣返しのつもりでギガゾディア教授の左腕を霧にする。
「油断、しちゃったのかな? 良くないよね、そういうの。僕、まだ体も魂もぴんぴんしてるってのに」
「おや、まあ……ふっ、そのとおりだねぇ」
不敵な笑みを浮かべるギガゾディア教授は、腕一本くらいなんてことないみたいな空気感だ。
うへぇ、やっぱりジョヌム魔法軍の生き残りって怖いや。同じ生き残りでも「マムに何しやがった!!」ってめっちゃ睨んでくるガルルーが可愛く思えちゃうよ。
ていうか地面に落ちた魔杖……うん、何トン? いや何十トンあるんだろねこれ。爪先とかの上に落ちなくて本当によかった。
「あ~あ、失神くらいはさせられたって思ったんだけどなぁ……」
「したさ。アタイとガルルー以外の全員がね」
言われて周りを見てみたら、未だ収まらない土煙の向こうで学生とその使い魔たちが皆ひっくり返ってた。
「僕はギガゾディア教授を失神させたかったんだよ」
「そりゃ、残念だったね。だがそうしたかったんなら、舐めプなんかせず初っぱなの攻撃で仕留めにくるべきだったね」
げっ、バレてる。レグルスにわからせてやろうとか思わず、普通にすればよかったかも……いやでも、ギガゾディア教授は言いながらニヤリってしたから、そのとおりにしてたって結局わからなかったと思う。
「ま、でも実際のとこかなり惜しかったよアンタたち。ちいとジェダに負担をかけすぎだが、優秀だ優秀だってうるさいだけあるよ。良いコンビだ。これからが楽しみだね」
「マム! 感心してる、場合、違う! 腕!」
ガルルーが僕に向かって精一杯の基礎土魔法を放ってきた。なんだか避けるのも面倒で、魔法自体に強制連結してガルルーの顔にお返しする。
「ほ? ふっ、あっははは!」
どうしたんだろ。ギガゾディア教授壊れちゃった?
「イコルア、あんた最初からそれやってりゃ、アタイたちなんかイチコロだったよ! あはははは!」
ついさっきと同じようなことを言ってるけど、今のはちょっと本気っぽい。
でも魔法に連結するのって多用したくないんだよね。初見殺しにはいいけど、毒魔法とかで状態異常付きの魔法にされるとか色々対策できちゃうしさ。
「はあ、笑った笑った。しっかし、これじゃあ今日はもう授業にならないね。あと始末は任せたよ――って、こらっ! ガルルー、いい加減にしな!」
ギガゾディア教は暴れるガルルーを片腕で絞め落とすと、校舎へ向かおうとする。
「あ、ねぇ! 腕は魔力をたっぷりかけたら治るから安心してね」
「そうかい、そりゃありがたい」
「あと武器忘れてるよ」
「それはあんたにやるよ。隠し装備にでもしな」
ギガゾディア教授はそう言って歩きだした。
「え、いらない」
「もらっときな。色々よく見てみるといいさね」
左腕が霧になってなかったら、もしくはガルルーを抱えてなかったら、ギガゾディア教授は格好よく手をひらひらさせて立ち去ってたかもしれない。そんな言い方だった。
でもさ……
「よく見たけどいらない」
「可愛くないねぇ」
僕が二回も断ったってのに、ギガゾディア教授はそのまま行っちゃった。
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