第31話 魔法の実技授業~帽子を被った可愛い仔犬~
▼26.06.22誤字修正 ▼26.06.23誤字修正
▼26.06.27誤字修正,オーラメイダーの髪色追記
▼26.07.03ギガゾディア教授の身長追記
使い魔の塔を出たところでジェダに出会した。何故かキッと僕の方を睨んでくる。
「どこへ行こうとしていた」
「ジェダのところだよ」
「……本当か? また授業をサボるつもりだったのではないか?」
ひ、酷い。せっかく僕がやる気になったってのになんて言い草だ。そうだ。ここはジェダの真似をしてやろう。
「信じてくれないの? 酷いよ……」
目から血液代わりの魔力オイルを流してジェダを見つめる。つーっと垂れたオイルは口の端からこっそり回収するよ。
「嘘臭い涙だ」
ええ~!? 全然信じてくれないじゃん! 心根が優しいって、あれやっぱり間違ってるよ!
「ふぁら! ふぁららら~!」
メネスが本当だって言ってくれるけど、ジェダは尻尾四角錐語を話せないから、はてな顔になってる。
「もういいよメネス。ジェダなんか放っといてさっさと魔法実践場へ行こう」
「え、あ、おい……」
ジェダが後ろから付いてきながら何か言ってるけど無視無視。
魔法実践場につくと空色のローブの着た学生が十五人とジェダと同じ紫色のローブを着た学生が十四人いて、各々の使い魔と準備をしていた。げっ、レグルスとパールがいるじゃん。
「なんで?」
くるっと振り返って聞くとジェダが涙目になっていた。
「やっとこっちを向いてくれた。無視は、無視はもう嫌だ……」
ぬおぉぉぉ! 恐ろしいまでに罪悪感が沸き上がってくる!
これぞ正しくジェダの泣き落とし。今後のためにもよく観察してモノにしなくては、なんて考えてても自然と「ごめんね」と口にしてしまう。凄まじい威力だな。
「ふぁら……ふぁふぁら」
あ、メネスがあっちへ行っちゃった。すごく悲しそうに「後でね」って言って……ん、メネスが近付いたあの髪の毛が銀灰色の男がオーラメイダーか。召喚されたときのジェダより傲慢そうだ。見るからに我儘放題育ったって感じがする。
「あれがオーラメイダーであってる?」
「む? そうだ」
ジェダは涙を拭きながらメネスの他に使い魔を五体従えていると教えてくれる。仔グリフォンとドラゴンモドキ、それから四翼大蛇と三つ目絨毯と命ある秘剣だ。
全部Cランクの魔物だ。う~ん、オーラメイダーは空に憧れでもあるのかな。騎乗して空を飛べるのばっかりだ。乗れないけどメネスも浮かべるし……。
「おや、今日は使い魔を連れてきたんだな」
オーラメイダーの使い魔たちを解析してたら、ムッキムキで立端が二メートル半はあるデカイおばさんに声をかけられた。足元には、とことこ走ってきた魔帽子小型犬妖精がいる。
やたら可愛いで有名なこの二足歩行する犬だけど、僕は絶対に可愛いとは思わない。だって野生だとその可愛さ重視でデフォルメされた見た目を生かして、エグいヒト狩りとかもするんだもん。解体のお祭りとか捕食シーンは衝撃的だよ。
「は、はい! 教授! これが私の使い魔のイコルアです!」
シャキッと姿勢を正したジェダが僕を紹介する。
「イコルア、こちらは使い魔連携の授業を担当されているギガゾディア教授だ」
ギガゾディア!? なんて厳つい名前だ……うん、そのぼこぼこに隆起した筋肉に相応しい名前だよ。
「えと、イコルアだよ。超が何個もつく優秀なゴーレムのイコルア。よろしくね」
「あっはははは! そうかい、そんなに優秀ならアタイの授業をサボっても仕方がないな!」
あれ? なんか怒ってる?
このままだと厳しい授業になりそうだから言い訳しておこう。
「昨日授業に来れなかったのは、ジェダが寝かせてくれなくて動けなかったからだよ。今日だって僕、酷い睡眠不足で……本当は今すぐにでも寝たいんだ」
本当は熱暴走の影響が出るかもって心配だっただけで全然動けたけど、ちょっと大袈裟に言った方が効果的だよね。
それに今日は本当にいつ熱暴走するかわからない。あんまり行動せずに授業が終わったらすぐに寝なくちゃなんだ。
「そ、それは――」
焦るジェダを見た学生たちが色めきだった。今のどこに格好いい要素があったんだろう。ヒト種って理解できないや。
「ハハ……お盛んなこった。だがそんなことは関係ない。ジェダは皆から十数年も遅れをとっている。幸い今日は四回生と合同授業だ。ビシバシいくよ、覚悟しときな!」
がーん。なんか厳しい授業が確定しちゃった。これも全部ジェダのせいだ。子どもの頃にできもしない精霊召喚なんかするからだよ。
「ジェダの馬鹿」
「何故そうなる!?」
「はあ……で、何すればいいの?」
何もわかってないジェダは放っておいて、ギガゾディア教授に聞く。
「やる気じゃないか。いいね。それじゃあ先ずは――」
「きょ、教授……あのぅ、ぼくの使い魔が手本を見せてやりたいそうですぅ……」
「あん? プラハが自己主張とは珍しいね。いいだろう。ではプラハ、使い魔と協力してアタイの使い魔の防御魔法を破壊してみな」
プラハ……?
ああ! レグルスとパールの主のヘパイス・プラハか。ずいぶんおどおどしてるヒョロガリ男だね……あれこそ真の引っ込み思案じゃないかな。ジェダと見比べてみる。
「どうした?」
「ジェダって自分の性格をどう表現する?」
「ぬ? それは授業に関係あるのか?」
「あるよ」
僕が僕の解析を信じられるかどうかっていう意味でね。
「そうだな……私は自分のことを誠意ある男だと思っている」
「はい、ダウト。ジェダは数時間前の約束を平気で破るから誠意ない男だよ」
「なっ――!?」
偏見かもだけど、引っ込み思案なら自分を下げるようなことを言うと思うんだよね。ジェダはまるっきし逆だ。ていうかよく自分で自分を誠意あるとか言えたな。自信家の間違いじゃないの?
「おはよう、木偶の坊」
「ふんっ!」
解析装置のシステムチェックをしてたら、近くに来たレグルスが嫌味な笑顔を向けてきた。ニコッて笑顔で答えると面白くなさそうな顔をして闘技場のステージっぽい場所へ向かって行く。
ちなみにパールは機嫌が悪いみたいで、僕の顔を見るなりプイってして立ち止まることはなかったよ。
「ご、ごめんね。でも本当は二人ともいい子なんだよ」
「別に気にしてないよ。ところでヘパイスは自分の性格をなんて表現する?」
「えっ!? せ、性格……? ね、根暗、、かな。あはは」
これだよこれ! こそこそ引っ込み思案の模範解答だ! 自虐的に笑うところまで完璧!
やっぱりあの解析結果は間違いだ。原因がわかるまであまり解析結果に頼り過ぎないようにしよう。
「ちんたらするなヘパイス。始めるぞ」
「ま、待ってよぅ……」
わぁ、ステージ上から声をかけるレグルスの方が、ずっと主に見えるね。ゴーレムとしてあれはどうなんだろう。
そりゃ僕だって元ご主人が聞くかもしれない録音魔道具の再生ボタンに爆弾を仕込んだり、元ご主人が寝転がるかもしれないベッドに六万匹の芋虫を仕込んだりしたよ。
でも皆の前ではちゃんとご主人様扱いしてた。感情に関わるすべてを無にしてね。だけどそれがゴーレムってものだ。
あ、パールのバグとかを伝えるついでにこれも言っておこう。
「プラハ先輩のゴーレムは凄いぞ。イコルアもゴーレムならよく見ておいた方がいい」
「なっ!!?」
カチンときた。
今のジェダの言い方、それじゃまるで僕がレグルスやパールより性能が悪いみたいじゃないか。
「そいじゃあ始めるぞ! ガルルー、二割でやんな!」
「イエス! マム!」
ん?
可愛いの押し売り甚だしい魔帽子小型犬妖精が、どこぞの軍人みたいな返事をしたぞ――ぶわっ!?
ガルルーの魔力圧でひっくり返りそうになった。
展開された魔法を見てまたびっくり。なんだこれ。まっとうなイージス系の盾みたいな圧だよ。二割でこれなの? 普通にすごくない? 解析しなくっちゃ。
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【種族名】マナハットコボルト
【名 前】ガルルー
【形 状】二足歩行獣型
【性 別】オス
【食 用】可
【危険度】S
【進化率】☆
【変異率】☆☆☆☆
【能力値】
〖体〗A〖攻〗C〖守〗F〖速〗A〖精〗AAA〖魔〗S
【属性一覧】
土
【魔法一覧】
〖下級〗土〖中級〗土〖上級〗土〖特級〗土
【スキル一覧】
〖固有〗ブラッディヘイロー
〖種族〗魅了,ハットハウリング,カーニバルダンス
〖習得〗規律行動,命令順守,狙撃,ドローンハット
【異常情報等】軽度の皮膚炎,中程度の歯周病
【魔力結晶体】海馬付近に反応あり
【使い魔契約】
〖種 類〗通常契約
〖契約者〗アマリリス・ギガゾディア
【棲息地情報】
アルフトラズマ大陸北西部ギルゼサセッタ王国フルマトリローナ魔法大学
【世界使い魔支援保護機構データ抜粋】
ティザロミシア大陸南部ジョヌム公国にあるパキシラ樹海出身の魔物。幼獣時より契約者アマリリス・ギガゾディアと共にジョヌム魔法軍に所属していた生粋の軍犬。好物は人骨と臓物。配偶者とは死別。三体の子持ち。マーキング行為はしない。
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魔力Sキターーーー!!!
でも残念。軽度の皮膚炎はともかく、中程度の歯周病は受け入れられない。もったいないなぁ。
僕は後ろ髪引かれる思いで連結を諦めた。




