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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第28話 ジェダの苦悩と優秀なイコルア

▼26.06.21誤字修正

 なんとカエル化現象とは女の子がカエルになることじゃなかった。男女関係なく単に相手のガッカリする一面を見て永遠に好きじゃなくなることらしい、一瞬で。

 え、それってカエルになるより怖くない? リカバリー不可なの?


「イコルアは私のことをそんな風に思っていたのか。正直、ショックだ。私は誰にも嫌われていない……たぶん」


 たぶん? 自信がないのは嫌われる心当たりがあるからじゃないのかな。


「じゃあ何で無視されてるの? この数にシカトこかれるって異常だよ?」

「んぐっ……」


 あ、涙ぐんじゃった。


「ふぁら~。ふぁ~らら~」

「え、影精霊のせい?」


 何故かメネスが教えてくれた。

 ジェダは影精霊の怒りを買って、ヒトの目に見えなくなっちゃったんだって。


「ふぁら」


 あ、有名なんだ。この大学で知らないヒトも使い魔もいないらしい。


「ジェダって影属性持ちだったよね? なのに影精霊を怒らせたの? やっぱり性格に問題があるんじゃ……」

「そんなことはない! 子どもの頃に影精霊と仲良くなりたくて、毎日朝から晩まで精霊召喚の真似事をしていたらぶちギレされたんだ……」


 そりゃ怒るよね。

 真似事でしょ? 四六時中、訳のわからない失礼な呼びかけが続いたら精霊じゃなくたってキレるよ。


「よく属性を剥奪されなかったね。ていうか、生きててよかったね。にしても毎回同じ精霊に繋がってたんだ。それはそれで凄いや」

「母上もそこは褒めてくださった。だが、それからどんな召喚魔法も失敗するようになって、ヒトに認識されなくなるし、名前を呼ばれると決して小さくない不幸に見舞れるし……」


 それで名前を……僕、昨日は何度も呼んだけど大丈夫だったかな。あ、それであの脱走騒動が起きたんじゃない? だってジェダ、掃除の罰以外に属性融合と召喚魔法のレポートの提出を課されてたもん。出さなきゃ即留年っていう厳しいレポートを。六冊、全部別テーマで。来月までに。


「あ~あ、やっちゃったね」


 ジェダは召喚を封印(ロック)されたんだ。それも精霊の力で。ご愁傷さまだよ。解除するにはその精霊が消滅するか許してもらう以外方法はないもん。

 精霊なんて寿命があってないようなもんだから、現実的には許してもらうしか……でも精霊って粘着質なの多いんだよね。無理な気がする。


「あれ? じゃあなんで僕は召喚できたんだろ……」


 あのときはパニクってたからわかんなかったけど、思い出してみるとあんなクズ魔石と魔道具なんかじゃ見合わないすんごい魔力量だった――はっ!!

 僕は急いでジェダの周囲を解析した。すっごく集中してね。くそぅ、もういないか。でも魔力の残滓は見付けられた。いや、残滓っていうには濃すぎるんだけども……。


「僕、全部わかっちゃった」


 この濃密な影の魔力のせいでジェダは召喚に失敗するし、認識されなくなってるんだ。


「なんだと!?」

「そこ掴むの止めて」

「す、すまない……」


 襟元を掴まれるのってどうにも気分が悪い。まあでも今のは仕方がないかな。


「ジェダは影精霊に取り憑かれてるんだよ。常にじゃなくて、たまに来てわざと魔力を残していくスタイルで。それで遠くから色々邪魔してるみたいだね。一種の呪いかな」

「の、呪いだと!?」

「よかったじゃん。呪いなら、呪い返しで一発解決だよ。僕はできないけど」


 言うと絶望するだろうから黙ってるけど、精霊に呪い返しできるようなヒトも知らない。たぶんいないと思う。だってきっとジェダを呪ってるのは特級精霊だもん。こんなちょっとの量なのに激烈に濃い魔力をばっちり隠蔽できてるし、なにより僕を召喚できたのがその証拠だ。


「昨日、僕を召喚するときに来てたんだよ。だからジェダでも召喚が成功したんだ。僕みたいな優秀なゴーレムをヒト種が単独で召喚できるわけないもんね」


 あ~よかった。お散歩草(ウォーキンググラス)に負けたと思ってプライドがズタズタだったからね。


「ねぇ、もしかしていつもより皆が反応してるんじゃない?」


 ぶつぶつ一人言を言ってるジェダに聞いたら、いつもはチラ見なんかされないのに、昨日からそうするヒトが多いんだって言った。

 ふふふ、僕というゴーレムの召喚にだいぶ魔力を削がれたみたいだね。


「あのさ、ジェダに纏わりついてる魔力もらってもいい?」

「そうすればすべて解決するのか?」

「次に精霊が来るまでは、ね」

「頼む!」

「頼まれた!!」


 じゃあ、こねこね機、起動! 両手を使ってジェダの周りの魔力をこねこねしていく。


「ふぁ、ふぁら~!!」


 メネスが目をキラキラさせてる。そうだよね。この装備は魔物なら夢みたいな装備だもん。

 ジェダはジェダで、空中をこねこねする僕に祈りを捧げてる。なんか他にも視線を感じるけど、今はこねこねに集中だ。


「こねこね、こねこね……できた!」

「ふぁら~!!」

「ま、魔石!?」


 そう、僕の手には中粒の影魔石がある。これがこねこね機、正式には廃棄物等こねこね機の力。今回は本体から捨てられた(・・・・・)魔力を捏ねて魔石にしてみたんだ。もっと魔力があれば他にも色々できるし、ロスも減るんだけど、今はこれが精一杯だったよ。

 ちなみに排泄物とかでも似たようなことができるけど、触りたくないよね、排泄物。


「あ、そうだ」

「ふぁら!?」

「何をして!? 勿体ない!」


 僕は魔石を地面に叩きつけて砕いた。そしてもう一回こねこね……完成!


「これメネスにあげるよ。テールバングル。絶対メネスに似合うと思うんだ!」

「ふぁ!? ふぁら~!」


 そんな高価なもの貰えないってわたわたするメネスの尻尾にサッと装着する。ちょっと崩した古代神聖文字で刻んだメネスって文字が格好良い。


「いうほど高価じゃないから安心して。だって元手タダだもん。それに言っちゃあれだけど珍しいのに下位属性だからね、影って」

「ふぁ、ふぁら~。ふぁら~ぉ~!」


 尻尾側の外殻に目を移して(・・・)確認したメネスは、恥ずかしいそうにしながらも大喜びだ。僕も嬉しい。


「わ、私も欲しい……」

「は? 一度、他魔物(たにん)にあげたものを返せって言うの? この短時間で? そうれはどうなの? だいたいさ――」

「わ、わかった! 今のは私がはしたなかった、申し訳ない!」


 まあ欲しいなら今度、材料があれば作ってあげなくもないけど……。


「ところで、もう呪いは消えたのだな!」

「たぶんね」

「ああ、皆に見てもらえる! 話ができる! みんな~! 私だ! ジェダだ~!!」


 ジェダは泣きながら学友の所までスッ飛んでいった。学友たちはとっても驚いてる。ジェダの顔を見て頬を明らめるヒトも多い。ていうかほとんど。


元ご主人(くそアルファド)みたいでムカつくなぁ」

「ふぁ~ら?」

「ん、ああ、僕、ダンジョン生まれのゴーレムなんだ。今は縁を切ったから関係ないけどね」

「ふぁらら!」


 ああ、メネスってばそんなに驚いて……外殻から目がはみ出そうだよ。可愛すぎるよ。


「次に精霊が来たらお揃いのもの作ろうね」


 絶対取っ捕まえてやる。精霊ならフォグミトヘイズで霧にして、こねこね機を使えば魔石がいっぱい、ううん、特級なら魔核もいけちゃうんじゃないかな。

 あ、それか半分は食べて魔力の底上げするのもいいね。精霊なんて大精霊以外いない方が世界の平和が保たれるんだから。楽しみ楽しみ……ん?

 よく考えたら原因がはっきりしてるのに大人は何もしなかったのかな。フルマトリローナの直系子孫ならこれくらいわかりそうなもんだけど……ま、いっか。家庭の事情に首突っ込んだって良いことないもん。忘れよ~っと。

~裏話~

 ちなみにこの日、ジェダとその学友は皆授業に遅刻したんだって。もはや欠席と言っていいくらいの大遅刻を。改めて初めましてっていう自己紹介とか、好きなタイプはっていうお喋りが止まらなかったらしい。

 しかも運悪くアンバーボルト教授の担当教科だったらしくて、全員レポート提出を課されたってジェダが言ってた。

 ちょっと気の毒かな。

 だってあの時間を報せる雷、音が聞こえなかったもん。欠陥魔法じゃないかな。

 あ、僕とメネスは雷を見てたから、朝ご飯を食べに使い魔の塔(ラウンジ)へ行ったよ。ジェダたちを邪魔しちゃ悪いって思ったからね。

 それにしても友達と朝食って最高だね。一般ラウンジのご飯は草だったけど、不思議と美味しく感じたよ。


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