表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/49

第26話 アンバーボルト教授の雷

▼26.06.21誤字修正 ▼26.07.07誤字修正

 使い魔の塔(ラウンジ)から出ると外は真っ暗だった。


「えっ?」


 さっき円環砂糖楓(トーラスメープル)に乗ってるときは昼間だったのになんで?

 メネスに聞こうと思ったけどまだ意識がない。だから使い魔の塔(ラウンジ)見上げてしっかり解析すると、中の時間は日によって朝、昼、夕方、夜が固定されているとわかった。

 なんでそんな分かりにくい設定にしてるのかと思ったら、どうやら制御魔法に技術的な欠陥があるっぽい。

 本物のダンジョンみたいに「ああしたいな」「こうしようか」って地面や壁と相談して、意見が平行線になったら言うことき(僕の攻撃とあっち)くまでどつく(の防御のガチンコ勝負)とかじゃダメみたいだ。疑似ダンジョンってなんだか面倒臭いね。


「ていうかレギスは何してんだろ……」


 使い魔は実技の授業と自由時間以外使い魔の塔(ラウンジ)にいる決まりって言ってたけど、僕の実技の授業はいつなの? それに自由時間も……。

 中級ラウンジのハンモックで寝転がってたときに、使い魔を迎えにくる主をたくさん見たんだ。だからレギスが迎えにくるんだろうなぁと思ってたけど、こなかったよね。この暗さからして、レギスと別れてから七時間は経ってると思うんだけどなぁ。


「ふ、ふぁらぁ……」

「あ、メネス! ごめんね、大丈夫?」


 目を覚ましたメネスが不思議そうにキョロキョロしてる。


「ふぁら?」

「そうだよ。外に出たんだ。なんかね、アンバーボルト教授の研究室に出頭しろって大きな声が使い魔の塔(ラウンジ)中に響いてきてさ」

「ふぁら!? ふぁらら、ふぁらふぁら!!」

「え、そうなの!?」


 どうやら出頭とは、授業をサボったり目に余る問題行動等をした学生やその使い魔を呼び出す際に使われる言葉らしい。しかも確実に罰が下るという。

 サボりはしてないから……やっぱヒーラたちとの裏取引の件かな。心当たりはバッチリある。だからこの罰はまあ仕方ないか。


「メネスはアンバーボルト教授の研究室がどこか知ってる?」

「ふぁら~ぁ」


 よく知ってるよって言ってメネスが浮かび上がる。どことなく元気がなさそうなのは、まだ強制連結で失神した影響が抜けてないのかな。


「精神力足りてる? もっと吸い取っていいよ。もうステータスは連結済みだから」

「ふぁらら~?」

 

 メネスはよく理解してないみたいだから、歩きながら強制連結のことを説明した。


「ふぁら! ふぁふぁらら!!」


 友達と連結できるって最高だね、だって。

 ふふっ、メネスも僕と同じ気持ちでよかった。あ、記憶は連結しなかったよ。ロイたちにしこたま説教されたからね。ちゃんと覚えてるよ。

 でもあのことは謝らなくちゃ。メネスが主から暴力を振るわれてること知っちゃったからね。


「ふぁ……ふぁら、あぉ………」


 謝られたメネスはギクッとした。だけどすぐにいいよって言ってくれた。どうせすぐにわかることだからって。

 その諦めたような表情がすごく悲しかった。


「ふぁ! ら~!」


 それからしばらくしてメネスが到着を教えてくれた。沈んだ雰囲気を吹き飛ばすように元気な声を出してくれてる。やっぱりメネスはとっても良いやつだ。


「ここ? 本当に?」


 目の前にあるのは周囲を糞尿頬張り薔薇(スカトローズ)の生垣で目隠しされた純白の便座。どう見たって庭園の外れに設置されたお花摘み場なんだけど……。


「ふぁら!」

「便座に座るの?」

「ふぁ~あ」


 言われたとおり便座に座る。メネスは僕の肩に乗ってきた。

 あ、憧れの肩乗りだ! メネスのやつどれだけ僕を喜ばせれば、なんて感動していたら、ぐにゃあ~って空間が歪んで次の瞬間には異常なまでに整理整頓された部屋の椅子に座っていた。


「イコルア~!!!」

「ぶっ!?」


 いきなりレギスが抱き付いてきた。それもすごい勢いで。危うく椅子から落ちそうになる。


「どこに行ってたんだ!」


 レギスは僕を絞め殺したいのかな。ぎゅううって腕に力を入れてきて苦しい。しかも頬擦りまでしてくる。

 友達でもないヒトにそんなことされて僕が喜ぶとでも? レギスとの友情は一歩後退だね。ていうか始まってもないからマイナスだ。

 今すぐ止めて欲しい。ほら、メネスがだってどん引きして――ない! 逆に羨ましそうだ。あ、そうか。そうだよね。

 どうしよう。レギスを突き飛ばすのも離れてって言うのも贅沢だって思われそうだ。でもこのままってのもなぁ……。


「ごほん!」


 お、アンバーボルト教授がイラついてる。こりゃ怒られるね。本当、学ばないなレギスは。

 これだけ学ばないとなると実は馬鹿なのかな。滅多にいないっていう本物の。

 だとしたら見た目が良すぎるだけに、これまで相当な数の被害者を出してそうだ。ヒト種の女の子ってそういうギャップを目の当たりにするとカエルになるって本に書いてあったもん。カエル化現象だっけ。お金持ちの馬鹿は愛せても顔の良い馬鹿は愛せないんだって。怖いよね。元に戻らないってんだから。恋愛は命懸けだって言葉は伊達じゃないんだぁって思ったもんだよ。


「そういうことは、二人きりでやりなさいフルマトリローナ」

「あ、はい。すみません……」


 思ったとおり、凍えるような視線をぶつけられたレギスはシュンッとなって離れていった。


「ふぁら~」


 何故かメネスが謝った。悪いことなんてなにもしてないのにどうして……。


「ん? あなたはオーラメイダーの筆頭使い魔ではありませんか。安心なさい、今日のオーラメイダーは珍しく大人しくしていましたよ」

「ふぁっ!? らっ!?」


 目を真ん丸にしてメネスが僕を見てきた。あ、ああ~、そういうことか。メネスは自分が出頭を命じられたと思ってたのか。


「ご、ごめん。言葉が足りなかったね。出頭しろって言われたのは僕なんだ」

「ふぁ~? ふぁらら~」


 心底ホッとした様子のメネスは殴られる以外にも苦労してそうだ。


「わかっているではありませんかフルマトリローナの使い魔。イコルアでしたね。今回はあなたが問題なのです。まったく、召喚初日から脱走騒動だなんて何を考えているのですか」


 え? 脱走??

 何のことかわからなくてレギスの方を向くと、責めるような目でこっちを見てた。


「僕、ずっと使い魔の塔(ラウンジ)にいたよ?」

「嘘をつくな。私が迎えに行ったらいなかったではないか。初めて実技の授業で使い魔と連携訓練ができると思ったのに……」


 どうやらレギスは座学終わりに、実技の授業で使い魔のお披露目をすると学友に言って回っていたらしい。あれだけ無視されて泣いていたのに、すごいメンタルだな。


「嘘じゃないよ」

「私はすべての授業をサボって、あの広い一般ラウンジを隅々まで探し回ったのだぞ。どこにもいなかっではないか」


 そりゃあ……見つからないね。だって僕ほとんどの時間、中級ラウンジにいたもん。

 それを告げるとレギスもメネスも、あと何言ってんだこいつって顔でレギスを見ていたアンバーボルト教授さえも驚愕した。


「あ、えっとね――」


 例の口裏を合わせの特別試験のことを話すと、アンバーボルト教授にもっと驚かれた。

 そもそも特別試験はよっぽど見込みのある学生が編入してきて、何らかの事情で使い魔を持っていなかった場合にのみ適用されるものだとアンバーボルト教授が言う。加えてレギスは編入生でもないし、見込みのある学生でもないとも……あ、レギスがしょげてる。


「事情はわかりました。つまりジェダが何一つ説明していなかったことが原因なのですね」

「そうなるね」

「え、いや、ですが……」

「言い訳は結構」


 アンバーボルト教授はレギスの言い訳を聞こうともせず、バッサリ切り捨てた。こういうとこ学長に似てるね。だから気が合うのかな。


「何故、自分で説明せず他人の使い魔に丸投げしたのです。あなたの使い魔なのですよジェダ。あなたが責任を持たなくてどうするのですか」

「そ、それは……授業に遅刻しそうでしたので…………」


 お、おおおおお。僕、アンバーボルト教授好きかも。そうだよ。自分の責任を誰かに肩代わりさせるなんて最低だよ。誰かさんたちみたくね。


「あなたもですよイコルア。何を他人事ように頷いてるのですか。人語を扱えるようですから、学長室での話しもすべて理解していたのでしょう。なのにどうしてジェダと話しをしなかったのです」


 ……学長、室? 


「なんか大切なこと言ってたっけ?」


 あの時は僕、解析装置の確認を優先してたから話しなんてほとんど聞いてなかった。だからレギスに確認してみたのに、不思議そうに首を傾げてる。


「はぁ。ただの問題児より真面目な馬鹿の方がよほど厄介とはよく言ったものですね、まったく……」


 アンバーボルト教授が眉間を押さえてため息をついた。やっぱりレギスは馬鹿なんだね。


「いいですか? どの学校でも使い魔召喚に成功した場合、その日の主の授業は免除となります。それは魔物にヒトとの共同生活生活、主に許可なくヒト種へ攻撃してはならないことを教え込むためです」

「ふぁら~?」


 なるほど。メネスも初耳だって。その決まり、全然周知されてないんじゃない?


「通常、召喚科以外は小学生の初年度で行うことですから、忘れているのではと学長が改めて説明なさっていたでしょう。召喚魔法担当のアンドロミカ教授からも説明があったはずですよ」


 少しの間があってレギスは「あっ」って顔になった。


「話しを聞いてなかった僕も悪いけどさ、二回も言われたのに忘れちゃうレギスの方が罪は重いね」

「お、おい狡いぞイコルア!」

「アンバーボルト教授もそう思うよね? だから罰は8:2くらい、レギス重めでよろしく」


 レギスにガックンガックン揺さぶられるけど、本当のことじゃないか。何が狡いんだよ。


「よろしくね、ではありません! 主と使い魔は対等、いかなる責任も折半です!!」

「ふぁら~!?」


 結局アンバーボルト教授の大雷が落ちて、僕とレギスは罰として大学内の全トイレとアンバーボルト教授の私的な部屋を清掃をする羽目になった。しかもその後で話し合い……。

 ちなみに、メネスはアンバーボルト教授の対等発言にずいぶんと衝撃を受けてたみたいだったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ