第25話 新たなる友達
▼26.06.19誤字修正
▼26.06.20教授の名前変更
帰りも昇降樹もとい円環砂糖楓は各ラウンジでいちいち止まった。やっぱり不便だよなぁ……なんて思いながら、もらった魔石を齧りつつ一般ラウンジまで戻ってきた。
「はぁぁぁ~、魔石美味しかったなぁ~」
魔石は風の魔力が濃厚なむっちりしたグミみたいで、特級ラウンジはこれが食べ放題だなんて最高だね。上級ラウンジまでしか行けない僕は、勿体なくて半分だけ残しておいた。
欲を言えば魔核の方がもっとも~っと美味しいけど、外では入手困難なものらしいから贅沢は言わないでおくよ。
「えっとシャノンはどこかな……」
お話ししようって誘ってくれたあのカーバンクルツノウサギを探しながら歩いてたら、やたら使い魔の数が減ってることに気が付いた。
レグルスたちがあんな態度だったから僕も同じだと思われてて、皆どこかに隠れてるのかな。シャノンも全然見当たらない。
一人で時間を潰してもいいけど、どうせならお喋りしたいし、この魔法大学のことも教えてもらいたい。どこかに暇そうな使い魔は……あ、いた。あの子にしよう。ぼっちで石ころを突っついてる尻尾四角錐。あれは絶対暇だよね。僕がここに来たときにはいなかった使い魔だし、僕が思うアンデッド系可愛い魔物ランキングのトップだもん。すごくラッキーだ。
「ねぇ、君」
「ふぁら!?」
ふふっ、驚いて固まっちゃった。おっきな単眼が限界まで開いてるとことか、カッチカチに見える四角錐の外殻が緩んでどろどろした中身がちょっぴり漏れちゃうとこも、もふもふの尻尾がぼわわって膨らんでるとこもきゅんきゅんする。
「一体で石ころツンツンしてて楽しい? 僕と一緒にしない?」
「ふぁ……ふぁらぁ? ふぁららっ」
え、いいの? みたいみ体を傾けた尻尾四角錐がそのままこてんと転がっちゃった。
ふわふわ浮かんで元の体勢に戻れるなら転ける前に浮けばいいのに、何故かそれをしないのが尻尾四角錐。かっわいいなぁ。
「僕はイコルアだよ。よろしくね」
「ふぁら~。ふぁらら~」
名前はメネスっていうのか。はわわわ~。三角錐の天辺をパカッと開けてどろどろの中身で親指を作ってくれた。これに人差し指をくっ付けると仲良し認定してくれるんだよ。もちろんそうする。うつ伏せになってピトッてね。
「ふぁら~」
中身を仕舞ってから僕の顔にすりすりするメネスは、角っこが当たらないように気を付けてくれてる。なんて良い子なんだ。よし、き~めた!
「ねぇ、メネス。僕と友達になってくれない?」
「ふぁらら~?」
ふふっ「もう友達なじゃないの?」だって。嬉しいなぁもう。じゃあ早速、連結しちゃおうっと。
「ごめんだけど、ちょっとくらくらしちゃうよ。あとで僕の精神力吸い取っていいからね」
「ふぁらぁ?」
今度は反対側に倒れそうになったメネスを支えて、強制連結を発動する。
「ふぁ~」
目を回して卒倒したメネスには、あとで同じことしてもらわな――っ!!?
「痛たたたたたたた!!!」
連結した瞬間、全身に凄まじい痛みが走った。鎖骨が二本と肋骨が三本音を立てて折れて、まるでリンチされたみたいな気分になる。
即自己修復したけど何が起きたのか……あ、解析してないや。またうっかりだ。う~、元ご主人の劣化版スキル、早いとこ何とかしなくちゃだ。命に関わる。
ただ、今はどうすることもできない。とりあえずメネスを解析して怪我の原因を探ろう。
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【名 前】メネス
【種族名】テールピラミッド
【形 状】尻尾付き単眼ピラミッド型
【食 用】可
【危険度】G
【進化率】☆☆☆☆☆☆
【変異率】☆
【能力値】
〖体〗G〖攻〗G〖守〗F〖速〗G〖精〗D〖魔〗GG
【属 性】命
【魔 法】
〖下級〗-〖中級〗-〖上級〗-〖特級〗-
【スキル】
〖固有〗無し
〖種族〗浮遊,テールキュア,アイシールド
〖習得〗隠匿,超我慢,透明化,超苦痛耐性
【異常情報等】骨折及び打撲多数
【魔力結晶体】身体の中心部に反応あり
【使い魔契約】
〖種類〗服従契約〖契約者〗ハガル・オーラメイダー
【棲息地情報】
アドロススル大陸南西部オズペネイ王国マザル砂漠全域
【魔物図鑑抜粋】
不定形の中身を柔い四角錐の外殻で守っているとても弱いアンデッド系の魔物。外殻には大きな単眼と長い尻尾がある。体長は仔猫程度で尻尾はその倍。個体差はない。世界で唯一マザル砂漠にのみ棲息しているがその数は膨大。砂漠に棲息する他の魔物に食い散らかされている。また、現地のヒト種にも貝と同一視されており、安価な食材して庶民の食卓によく並ぶ。非常に進化しやすい魔物だがそれまでに食われてしまうため、その進化形を見たものは極少数。
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「メネス、君、もしかして……」
僕が使い魔を解析する場合、先ず年四回ハッキングしている【世界使い魔支援保護機構データ】から必要そうな個体情報を自動で抜粋してくれる。なのにメネスは【魔物図鑑】の情報が抜粋された。
これはメネスが、信じられないくらいプライベートな情報まで勝手に記載される【世界使い魔支援保護機構データ】を誰にも知られたくないと思ってるってことだ。それも相当強く。
きっとメネスは契約者から日常的に暴力を振るわれてるんだ。瞬時に僕の全身に浮かび上がった痣がそれを物語ってるもん。
もちろんそうじゃない可能性も無くはない。例えば戦闘訓練とかね。けどそういう場合って通常は訓練後に、治癒魔法や魔法薬で怪我を治すものだ。もしくは一般薬の服用や薬草の直貼りで治癒力を向上させるか……契約者が何も買えないド貧乏なのかな。いやでも服従契約だし、なにより習得スキルが……。
最悪、放っておいてもそのうち超過激派巨大団体たる世界使い魔支援保護機構が秘密裏に解決しそうだけど、友達が酷い目にあってるんだもん。僕はそんなの待てない。
「メネスの契約者を解析しなくちゃ。ハガル・オーラメイダー、覚えたよ」
僕がメネスを助けようと決心している最中、その雰囲気をぶち壊す怒声が聞こえてきた。
『ジェダ=フルマトリローマの使い魔、イコルア! 大至急、アンバーボルト教授の研究室まで出頭せよ! 繰り返す! 大至急、アンバーボルト教授の研究室まで出頭せよ!!』
ってね。それもラウンジ中に響き渡るように。いったいぜんたい何事だろう。それに出頭って……え、僕、知らないうちに何か罪を犯した? それともヒーラたちとの裏取引がバレたのかな。
どう考えても絶対に行かなきゃいけないよねこれ。でもメネスを放っては行けない。
「本当は動かさない方がいいんだけど……」
僕はメネスを両手で持ち上げ優しく精神力を注ぎながら、ゆっくりと使い魔の塔を後にした。




