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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第23話 ラウンジ巡り

▼26.06.17誤字修正

▼26.06.18誤字修正

▼26.06.18樹木の魔力で疲れを癒す描写を追記

 中級ラウンジはちょっと良い宿屋みたいな感じだった。一般ラウンジをぎゅっと小さくしたような共用エリアの他に質素ではあるけど広々としが個室もあって、ほとんどの使い魔はそこにいた。

 中級ラウンジ全体を解析して一気に調べてもよかったけど、それをすると結構魔力を使っちゃうから一部屋一部屋訪ねて回ったんだ。皆、ものすんごく迷惑そうだったよ。ごめんね。手土産の一つでもあればまた違ったのかな。

 そうやって悲しみに耐えながら頑張ったのに、残念ながら中級ラウンジにも遠距連絡スキルを持ってる使い魔はいなかった。友達になりたとか連結したいなって思う使い魔もね。それは共用エリアにいた使い魔も同じく。骨折り損ってやつだ。


「どうしよっかなぁ~」


 僕は共用エリアにあったハンモックに寝転んで、上級ラウンジへ行こうかどうか考えていた。でもレグルスたちと顔を会わせることになるから気が進まない。言い方は違うかもだけどバックレたわけだし、絶対怒ってるよなぁ。あとパールのお世話したくないし。


「お腹も空いてきたなぁ~。でもなぁ~」


 中級ラウンジには食堂がある。但し有料。デコイズが使えない僕は素寒貧(すかんぴん)と同じだから行っても無意味。無料のお菓子もなくはないけど、クズ魔石とかうっすいマナポーションと果汁を混ぜたジュースとかなんだよね。

 それからさっき近くで日向ぼっこしながらお喋りしてたアルラウネとマンドラゴラの話を盗み聞きしてたら、上級ラウンジには有料食堂とは別に無料食堂もあるそうだけど特別美味しいわけじゃないとか。ヒーラたちの言ってた美味しいお菓子もどうやら有料食堂のものらしい。


「……そうだ! 特級ラウンジへ行こう!」


 食べ放題の特別なお菓子、やっぱり気になるもんね。

 確か階級が上のラウンジを使うには、そこを管理してる使い魔に認められる方法もあるって話だった。たぶんあのリーダードラゴンに認められればいいんじゃないかな。


「よ~し、行くぞ――っと」


 ハンモックから飛び降りて円環砂糖楓(トーラスメープル)へ向かう。途中、すれ違った使い魔たちにヒソヒソされたけど気にしない気にしない。

 中級ラウンジから見る円環砂糖楓(トーラスメープル)は色が赤茶けている。

 もしかするとラウンジごとで色分けされてるのかもしれない。


「さて、会員証は……」


 ポケットをまさぐり会員証を取り出す。


「ふふふ、目にもの見せてやる」


 なんて不敵に笑ってみる。

 実は僕、会員証を手の平サイズの火炎放射器にしたんだ。火は出ないけど燃やそうとする気分は味わえるからね。まあ、だからって元ご主人(ぼけアドイード)に何かしらダメージを与えられるわけじゃないけど、気持ちが大事だよね、気持ちが。

 会員証でツンツンして円環砂糖楓(トーラスメープル)が動き出すのを待つ。動いたら幹に飛び乗って上へゴーだ。


「うわぁ!」


 中級から上は一旦、外へ出るみたいだ。湾曲してる円環砂糖楓(トーラスメープル)が塔の屋上から雲の向こうへ続いている。高さはけっこうあって、あとちょっとで大学の敷地が一望できるんじゃないかってくらい見晴らしが良い。

 これ何て言えばいいのかな。巨大な車輪……は違うな。巨大な風車……これも微妙に違う…………あ、水車だ。巨大な水車に乗って運ばれてる感じ。


「この雲が魔核わたあめだったらいいのになぁ」


 雲に突っ込む直前にそう思った。甘くってふわふわで予備魔力(燃料)まで補充できる最高のお菓子。よく拾った魔核を疑似太陽炉(ダミースター)に放り込んで作ってたなぁ。高速回転させるためにぶん殴って炉を壊したこともあったっけ。


「次はいつ食べれるかなぁ」


 足をぷらぷらさせながら雲を抜けるのを待ってると、今度は塔の底に円環砂糖楓(トーラスメープル)がめり込んでいるのが見え始めた。

 でもこれを毎回? 早く寝たいとき時とか面倒臭くないかな……あれ、止まっちゃった。

 許可されてるのが上級ラウンジまでだからか、空の船着き場みたいな場所に到着するとすぐ、円環砂糖楓(トーラスメープル)は動きを止めた。


「……お城じゃん」


 船着き場の正面にはお城が建っていた。やや小さめではあるものの完全に城。中級ラウンジとは次元が違う。レグルスたちが調子に乗るのも頷ける。

 と、門が開いて馬車がこっちへ向かってくるのが見えた。あれはたぶんお迎えだ。でも悪いけどここに用は無いんだよね、今は。

 振り返って円環砂糖楓(トーラスメープル)を見る。きっと特級ラウンジの使用許可がないから直では行けないんだ。

 円環砂糖楓(トーラスメープル)から降りて、もう一回会員証でツンツンする……あらら、幹が下へ動き始めたね。馬車も回れ右して戻っていく。


「行けないのかな……」


 でも行けないと認めてもらえないよね。まさかラウンジ外で突撃して直談判するんだろうか。いや、それは失礼な気がする。

 う~んと悩んでから、もう一回ツンツンしてみると幹の動きが止まった。そしたらまた門が開いてかっぽかぽ……なんだか悔しくて何度も何度もをツンツンしてやる。

 すると幹の一部がぺりっと捲れ始めた。何が起こるのか眺めていたら、いきなり僕の顔目掛けてビュンッっと飛んできた。


「あっぶな!」


 すんでのところで避けられたけど、頬肉抉られそうな勢いだったよ……ん? 幹がどんどん捲れてきたぞ。

 また幹ビンタがきそうで一歩下がって様子を見てたら、思ったっとおりビンタの嵐になった。

 全部避けきるころには、幹にヒト型ゴーレム一体が入れるくらいの樹洞ができてた。

 警戒しながら中を覗き込むと急すぎる階段が上へと続いてて、ちょっと先が明るくなってるのがわかる。


「あそこが特級ラウンジなのかな……」


 思ったより近い。それになんだか甘くて美味しそうな香りがしてくる。ぐぅ…ってお腹がなった。本来、僕には備わっていなかった機能だ。ご飯を食べるようになったら、いつの間にか鳴るようになってたんだよね。

 甘い香りに誘われるように階段を登っていくと、そこは特級ラウンジじゃなくて外だった。


「わぁ、わぁ、すご~い……あん?」


 円環砂糖楓(トーラスメープル)のあちこちに穴が空いてて美味しそうな樹液が溜まってた。それを馬鹿デカイ蝶々やカブトムシのような甲虫が美味しそうに飲んでいる。解析してびっくり。魔物に見えるけど全部ただの昆虫だった。樹液のせいで大型化しちゃったみたい。もうここ以外では生きていけない体になってるね。


「……円環砂糖楓(トーラスメープル)はこんな方法でも獲物を狩ったりするのか」


 僕が知らないだけなのかこの個体だけの特性なのか、とにかく樹液は飲まない方がよさそうだ。そもそも材料が、ね。

 階段は幹に沿ってぐるぐる巻き付くように続いてる。そこを進んでいくと、さっきと似たような樹液溜まりやドーナツみたいな木の実が成ってる場所がいくつもあったけど、どこも大きな虫がいてとても食べる気にはなれなかった。

 階段は想像以上に長くて疲れそうになる。その度に僕は円環砂糖楓(トーラスメープル)と二重螺旋になっている方の樹木からちょっとだけ魔力を吸収して疲れを癒した。

 そのうち階段は幹の外側部分だけになって、その先にでっっっかいツリーハウスが見えてきた。ちょうど円環砂糖楓(トーラスメープル)の最上点になる部分だ。うっすら光ってて物凄い密度の魔力を感じる。

 どれくらい階段を登ったかな。一時間か二時間か……もうお腹ぺこぺこだよ。

 もう我慢できなくてツリーハウスまで走っていくと、三体のドラゴンたちが待ち構えていた。

 

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