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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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21/49

第21話 ラウンジの使い魔たち

▼26.06.16誤字修正,加筆修正   ▼26.06.18加筆訂正

▼26.06.19後書き追加,後書き修正 ▼26.06.20誤字修正 ▼26.06.21加筆訂正        ▼26.06.25誤字修正

▼26.07.09誤字修正

 魔法陣に吐き出されると、そこはだだっ広い野外パーティー会場みたいな場所だった。

 青空が広がっててそよ風が吹いてるし、疎らに生えた木々の下には木漏れ日が差している。ヒトが使うようなお洒落な円形のテーブルや長方形のテーブルがいくつも並べられてて、他にも小洒落た魔物の住処みたいな所もあった。おまけに空中にも止まり木や掴み石なんかが浮かんでる。

 ここは塔の中のはずなのに、外で見た大きさよりも明らかに広い。絶対量は少ないけど空間の隅々にまでに魔力まで行き渡ってるのを感じるから、たぶんここはダンジョンを模してるものなんだろうね。

 数え切れないほどの魔物が思い思いの場所で寛いでいるけど、これが本当にダンジョンだったら酷い罠にはまった気分になるんじゃないかな。


「う~ん、遠距離連絡手段を持ってる魔物はいないか……」


 ざっと解析してみたけど、ここにいるほとんどがGランクかFランクの魔物だった。

 この様子だと下級ラウンジにはE~Dランクが多くて、中級ラウンジはC~Bランク、上級ラウンジはそれ以上、みたいな感じなんだろうか。

 じゃあ下級ラウンジは飛ばして中級ラウンジに行ってみようかな。今思い出したけど、大陸を跨ぐような遠距離連絡って割りとランクの高い魔物が持ってた印象があるからね。

 でもどうやって行くんだろう……あ、ちょうどカーバンクルツノウサギが近付いてくるから聞いてみよう。と思ったらあっちから声をかけてきた。


「ねぇねぇ、あなた新入りさん? よかったら私たちとお話ししない?」


 ウサギ特有のもひもひした口と、音に反応してくるっくるって向きを変える長い耳が可愛らしい。小さな角とそのすぐ下にある桃色の額石もチャームポイントだね。


「ごめん、お話しはまた今度でいいかな? ちょっと用事があるんだ。でも声をかけてくれ嬉しかったよ。ありがとね」

「そっか。残念。あなたウサギの私でも格好いいって思うんだもの。名前だけ聞いてもいい? 私はシャノンよ」


 パチンっとウィンクしてくるシャノンは自分の可愛さをバッチリ自覚してるね。スキルに短時間誘惑ってのもあるし、なかなかの自信家さんだ。なのに変な媚びとか嫌味をまったく感じないから凄い。

もし僕がウサギだったら、誰にも渡さないぞってくらい魅力的だと思うかもね。


「よろしくねシャノン。僕はイコルアだよ。それで、ちょっと教えて欲しいんだけど、中級ラウンジにはどうやって行けばいいのかな?」

「ちゅ、中級!? そ、そうとは知らず気安く話しかけてしまい申し訳ありません!」


 どうしたんだろう。シャノンが急に畏まったかと思うと、一歩下がって頭を垂れてきた。他の使い魔たちもぎょっとしてこっちを見た後、ペコペコ頭を下げてくる。


「え? え? なにこれ?」


 僕が困惑しても誰も何も教えてくれない。さっきまであんなにフレンドリーだったシャノンなんて、冷や汗をかいてぷるぷる震えてるよ。


「君、ボクたちの通り道を邪魔しないでくれたまえ」

「さっさと端に寄りなさい、この木偶のぼ――っ!!?」


 どうしようって思ってたら、なんかすごく(かん)に触る声が聞こえてきた。振り向くとやたらキラキラした雰囲気の男と女が立ってて、見るからにやな感じだった。

 だって男の方はエレガント風な態度を装ってるけど、僕らを汚物かなにかだと思ってそうな目をしてるし、女の方は手で口と鼻を覆ってるから、臭いとか思ってるんだよきっと 。

 一応、解析してみたらどっちも人工ゴーレムだった。男の方がレグルスで女の方がパール。安価な素材でヒト種が作ったにしてはなかなかの出来。

 へぇ、二体は兄妹ってプログラム(設定)されてるのか。顔はそうでもないけど、嫌味な態度は確かに似てるね。

 僕、ゴーレムと友達になりたいって思ってたけど、この二体はちょっと遠慮しとこうかな。関わると面倒臭そうな気配がするもん。とりあえず、言われた通り避けておこうっと。


「ふむ、皆少しはましになったんじゃないかい? 四年間一度も上級落ちしたことのないボクらが来るのを察して、恭しく頭を下げて待つなんて。なあパール」

「え? ええ、そうねお兄様……ああ、でもまだまだよ。そこのウサギ、さっさと道をお開けなさい」


 びくりとしたシャノンが飛び退けた。シャノンの後ろに位置していた他の使い魔たちもささっと移動して、まるで花道みたいな感じになる。


「そこのあなた。名前は?」


 突然パールが名前を聞いてきた。

 う~ん、ここでもそうなの? ロイのときも思ったけど、名前が知りたいなら知りたい側から名乗るものじゃないのかな。それとも僕の読んだ本の著者がネダラケンガ大陸のヒトだったせい? あと古そうな本だったから時代が違ったのかなぁ。いや、でも時代は関係なく普遍的なマナーだって書いてあったはず。

 ロイは単にマナー悪いだけだったけど、この二体は偉ぶるんだからマナーくらい学んでそうだけど……。

 まあでもここで無視したら余計面倒臭いことになりそうだ。名前くらいならいっか。


「イコルアだよ」

「そう。ではイコルア、エスコートなさい」


 パールが僕に手を取るように言う。関わりたくないって思ってるのにグイグイくるじゃん。でもこういうのって最初が肝心だよね。きっぱり断らなきゃ。


「やだ」


 一瞬、使い魔たちがザワッとした。なんでだろう。皆、怒られる直前のレギスみたいな顔になってる。でもそれ以上にパールがもすごい衝撃を受けたような表情になってて、ちょっと笑いそうになる。


「な、なんですって!? この私をエスコートできる栄誉をあげると言ってるのよ!?」

「栄誉? エスコートするのが? なんで?」


 さっぱり意味がわからない。だから「なんで?」って聞いたのに、パールは真っ赤になって怒りだした。おお~。ちゃんとヒト種が怒ってるみたいに見える。パールの製作者は優秀だね。


「まあまあパール。そんなに怒らなくてもいいじゃないか。よく見たらこの木偶の坊は新顔だ。まだ何も知らないんだよ。上位者たるボクらが優しく導いてあげなくちゃ」


 レグルスがパールの肩を叩いて宥めている。パールもそれで少しは落ち着いたみたい。


「そ、そうでしたの。なら仕方ないですわね。次までにしっかり勉強なさい。次回は私を見かけ次第、あなたからエスコートをしにくるのよ」


 なんでそうなるんだろう。ここはもっとハッキリきっぱり言わなきゃだね。僕はアルコルトルア(ダンジョン)学んだんだ。言わなくてもいつかわかってくれる、なんてことはあり得ないんだって。


「嫌だよ。僕、君たちのことあんまり好きじゃないもん。できるだけ関わりたくないって思ってる」


 シャノンたち一般ラウンジ使い魔が、地獄にでも落とされたのかってくらい真っ青になった。

 そしてパール。大激怒しちゃったよ。レグルスももう止めてくれない。これ無視して中級ラウンジに行った方がいいかなぁ。でも今シュノンに話しかけると迷惑かけちゃいそうだし……。


「何事だ?」

「また級なし苛めか~? そういうのよくねぇぞ、レグルス」

「本当に。あまりいい趣味とは言えませんわね」


 なんだなんだ?

 また使い魔が入ってきたぞ。今度はぞろぞろと十体も。ヒトに変身してる貫禄のあるドラゴンとチャラいドラゴン、あと無表情のドラゴン。今レグルスに声をかけた使い魔たちだ。

 それから種族の違う人魚が二体と宝箱……あ、ミミックか。あとは二角獣(バイコーン)銀狼(シルバーウルフ)とポイズンスライム……うわっ、スフィアゴーレムだ! しかも飛行タイプ! めっずらし~! 仲良くなりたいな、性格良いといいな。

 どれも魔力をたくさんもってる魔物っぽいけど、二角獣(バイコーン)とツルんでるなら、エグい寄生虫とかヤバい病気持ちだよねきっと。連結は無理だな。スフィアゴーレムは違うだろうけどさ。


「と、特級の皆様……い、いえ、そういうわけでは……少し指導していただけです」

「そ、そうですわ! こちらのイコルアが新顔なもので、少々ラウンジのルールを説明していましたの!」


 レグルスとパールが思いっきり慌ててるや。ていうかルールなんていっこも教えてもらってないけど。


「まあいい。行くぞ」


 リーダーっぽいドラゴンがスッと歩きだして、特級とやらの使い魔が通りすぎていった。急に大人しくなったレグルスとパールもそれに続いていく。

 彼らについて行けば中級ラウンジに行けそうだ。僕は一番後ろから付いていくことにした。

レグルスたちの解析結果

---------

【種族名】人工ゴーレム

【名 前】レグルス

【形 状】ニンゲン型

【食 用】可

【危険度】B

【進化率】無し

【変異率】無し

【能力値】

〖体〗B〖攻〗B〖守〗B〖速〗C〖精〗D〖魔〗C

【属 性】土

【魔 法】無し

【改造歴】軽微なものを含めて233回

【装 備】

 魔導砲,人工知能,魔力変換炉,未完成飛翔装置

 魔布縫製機,トラップ製造機,マナブレード

【スキル】

 〖固有〗無し

 〖習得〗傲慢,簡易メンテナンス,カーストオーラ

     他子守り関連多数

【コア情報】

 〖素材形状〗ニオ彫刻術による中粒土魔石ニンゲン型

 〖使用言語〗ミドフィルケ魔法言語

【異常情報等】関節ギア磨耗34%,循環オイル汚濁16%

【魔力結晶体】無し

【使い魔契約】

 〖種類〗通常契約

 〖契約者〗ヘパイス・プラハ

【棲息地情報】

 アルフトラズマ大陸北西部ギルゼサセッタ王国フルマトリローナ魔法大学

【世界使い魔支援保護機構データ抜粋】

 契約者ヘパイス・プラハの養父イネクタ・プラハに製造された人工ゴーレム6号。元々は子守り用だったがヘパイスの魔法少学校進学と共に改造が施され戦闘機能が追加された。厳密は魔物とは異なるが、魔物として扱うのが一般的。節約のため血液代わりの循環オイルに安価なものを混ぜた結果やや口臭が強めになった。妹のパールと連携した戦において、二機だけでBランク魔物を仕留めたことも少なくない。

---------

【種族名】人工ゴーレム

【名 前】パール

【形 状】ニンゲン型

【食 用】可

【危険度】B

【進化率】無し

【変異率】無し

【能力値】

〖体〗C〖攻〗D〖守〗D〖速〗A〖精〗BB〖魔〗BB

【属 性】火,風

【魔 法】無し

【改造歴】軽微なものを含めて756回

【装 備】

 魔導砲,人工知能,魔力変換炉,野外対応調理装置

 マナローブ,マナロッド

【スキル】

 〖固有〗無し

 〖種族〗簡易飛行,低品質フェアリアルパウダー

 〖習得〗簡易メンテナンス,ファイアライズ,ウィンドボム

     他子守り関連多数

【コア情報】

 〖素材形状〗ニオ彫刻術による中粒火風混合魔石ニンゲン型

 〖使用言語〗ミドフィルケ魔法言語

【異常情報等】関節ギア磨耗5%,循環オイル汚濁1.3%

【魔力結晶体】第八胸椎の反応あり

【使い魔契約】

 〖種類〗通常契約

 〖契約者〗ヘパイス・プラハ

【棲息地情報】

 アルフトラズマ大陸北西部ギルゼサセッタ王国フルマトリローナ魔法大学

【世界使い魔支援保護機構データ抜粋】

 契約者ヘパイス・プラハの養父イネクタ・プラハに製造された人工ゴーレム3号。元々は子守り用だったがヘパイスの魔法少学校進学と共に改造が施され戦闘機能が追加された。厳密は魔物とは異なるが、魔物として扱うのが一般的。兄レグルスよりも先に製造されたものの、起動に際し不具合が起こりレグルスの起動後数年経ってから起動許可が下りた。単機でのBランク魔物討伐実績あり。

---------

【種族名】カーバンクルツノウサギ

【名 前】シャノン

【形 状】ツノウサギ型

【食 用】可

【危険度】FF

【進化率】☆

【変異率】☆☆☆☆☆☆

【能力値】

〖体〗F〖攻〗F〖守〗G〖速〗E〖精〗G〖魔〗F

【属 性】風,愛

【魔 法】〖下級〗-〖下級〗-

【スキル】

 〖固有〗-

 〖種族〗オパールピンク

 〖習得〗短時間誘惑,ホーンランス,ブリーズダッシュ

【異常情報等】数匹のウサギノミに寄生されている

【魔力結晶体】額石に反応あり

【使い魔契約】

 〖種類〗通常契約

 〖契約者〗リリカ・バービージェニー

【棲息地情報】

 アルフトラズマ大陸北西部ギルゼサセッタ王国フルマトリローナ魔法大学

【世界使い魔支援保護機構データ抜粋】

 主にクィエル草原に数多く棲息するカーバンクルによく似た魔物。非常に変異しやすい魔物として知られ、愛好家も多い。ニンゲンに狩られる瞬間に契約者リリカ・バービージェニーに召喚され一命を取り留めた。普段はその愛らしい見た目のイメージを壊さぬよう愛想を振り撒いているが、偽カーバンクルやカーバンクルモドキと言われると激昂する。Fランク魔物だがEランク寄りの魔物。

 

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