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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第20話 使い魔の塔の受付係

▼26.06.15誤字修正

▼26.06.19後書きに【使い魔契約】追記

▼26.06.19後書き修正

 使い魔の塔の中は薄暗くて広い空間になっていた。

 奥に誰もいない受付がポツンとあるだけで他には何もない。おまけに引き返す以外どこかに行けるわけでもなさそう。

 謎解きかなこれ。新入りの実力を試す的な。とりあえず受付を解析してみようか、なんて思っていたら声が聞こえてきた。


「あなた見ない顔ね。新入り?」


 これ答えてもいいのかな。既に何かが始まってたりしない?


「……え? ジェダの使い魔? 外でプロポーズ? なにそれ詳しく!!」


 あれ? 声の主は僕以外と話してる?

 わけがわからなくて受付を解析してみると、三体のレイスが楽しそうにお喋りしてるのが見えた。

 左からヒーラ、ミーリ、コーレ。皆女の子でピト=フーラ・アンドロミカってヒトの使い魔らしい。三体とも死んだのは千年以上前なのにまだレイスで踏みとどまってるなんて凄いな。きっと良い主なんだろうね。


「ねぇ、僕どうすればいい?」


 僕のことなんかすっかり忘れてたようで三体が「きゃっ」って驚いちゃった。


「あなた視えるの?」


 三体とも僕を凝視してるけど、代表してヒーラが聞いてきた。


「うん、一応……」


 正直言うと今の僕が解析装置を使いっぱなのはちょっとキツい。だから見える状態になってくれると助かる。

 願いが通じたのか三体ともそうなってくれた。


「へぇ、ジェダが召喚したにしてはやるじゃない」

「禁断の恋! 禁断の恋よ!」

「さっきラウンジの前でイチャついてたのよ! キャーーーー!」


 褒めてくれた全体的に青っぽいのがヒーラ、鼻息が荒くて赤っぽいのがミーリで、そしてやたら興奮してる白っぽい子がコーレだ。


「えっと、まず誤解を解いとこうかな。僕はレギスとそんな関係じゃないよ。友達になろうって話してただけ」

「レギス……? ああジェダのことね。そうなの?」


 レギスじゃわかりにくのかな。でもジェダって悪口っぽかったから呼びたくないんだよね。


「な~んだ。つまんないの」

「きっと嘘よ。使い魔と主の恋愛なんてまだまだ忌避されてるんだもの」


 ミーリはあからさまににがっかりしている。で、不思議とコーレは信じてくれない。なんでだろ? そんでまたお喋りが始まっちゃった。


「僕、ここで待ってろって言われたんだけど……」

「あ、そうよね。じゃあ会員手続きを――あら? あなた使い魔契約してないじゃない!」


 ヒーラがくわっと目を開いた。

 え~、そんなすぐバレるもん!? 誤魔化さなきゃ。あ、でもこの子たちは――


「言っとくけど、嘘言ってもすぐわかるのよ。そういうスキル持ちなの、私たち」


 そう、ヒーラの言うとおり、さっき解析したときに全員嘘感知ってスキルがあったんだよね。だからコーレが信じてくれなかったのが不思議だったんだ。


「僕とレギスは友達お試し期間なんだ」

「……ふ~ん。じゃあそれが終わったら使い魔になるのね?」

「ならないよ。僕、絶対働かないって決めてるからね」

「ヒモじゃない!」

「ほら、ジェダを骨抜きにしてるのよ! 悪い子ねぇ~!」

「ちょっとミーリとコーレは黙ってて。今日の受付当番は私なんだから。何かあって怒られる私なのよ?」


 ヒーラに睨まれた他の二体は、やれやれって感じで黙った。


「このラウンジは使い魔以外会員になれない決まりなの。悪いけど立ち入り禁止よ」


 困ったな。でも他に行く当てもないし……あ、そうだ。あれがあるんだった。


「これあげるから何とかならない?」


 召喚されたときに握ってた例のカニをポケットから出して見せる。カニよりレギスの出してくれたご飯の方がお腹いっぱいになりそうだったから、こっちは無理に食べなかったんだ。


「嘘、やだ、ロイヤルズーワイじゃない! しかも滅多に出回らないアルビノ!! それにまだ生きてる!!」


 カニを受け取ったヒーラの目がキラキラになった。


「ずる~い! 私も、私も欲しい!」

「私もよ! ねぇ、会員登録してあげるから私たちの分もくれない!?」


 ミーリとコーレが受付から飛び出してきた。


「ちょっと、勝手に決めないで!」


 止めようとするヒーラを無視して僕に纏わりついてくる。

 ほ~らね。魔物なら皆これ大好きなんだよ。ロイたちに見せてやりたいなぁ、この光景。


「いいよ。ちょうどあと二匹持ってるから。でも会員登録が先だよ」

「きゃーーー! あなた最高ね!」

「ほらほら、早く手続きしちゃってヒーラ!」

「で、でも……」


 ミーリとコーレに急かさるヒーラが困ってる。だけど視線はちょくちょくカニに向けられてるから、もう一押しでイケる気がする。


「手続きしてくれないなら返してね。でもいいのかな~。僕、そのカニをたくさん手に入れられるツテがあるんだけどな~」


 これは嘘じゃないよ。すぐには無理ってだけで本当だもんね。


「「「これをたくさん!?」」」


 ヒーラはじきに落ちる。間違いない。他の二体に「こんなチャンス滅多にない」って肩を揺さぶられてゴクンって唾のんでるもん。


「……わ、わかったわ。でもこのことは絶対に秘密よ。誰にもバレないようにして。ジェダにもよ」

「きゃーーー! やったーーー!」

「さすがヒーラ! 信じてたわよ!」


 カニを大事そうに箱に入れたあと、ヒーラが引出しから環っか一つと五つの鍵を取り出した。


「あなた名前は?」

「イコルアだよ」


 ヒーラは頷くと何やらぼそぼそ呪文を呟き始めた。すると鍵が一つまた一つと環っかに吸い込まれていく。それからミーリとコーレにも呪文を唱えさせて最後にふうっと環っかに息を吹きかけた。


「はい。これがラウンジの会員証よ。今は腕輪だけど形は自由に変えられるから」

「特別に上級ラウンジまで入れるようにしといたよ」

「だからロイヤルズーワイが手に入ったら絶対、私たちにもわけるのよ」

「もちろんだよ」


 お互いにっこり微笑み合ったあと、僕はちょっと気になったことを聞いてみた。ラウンジとは何か。そして階級があるのかってことをね。


「ジェダったら何にも説明してないのね」

「ラウンジはこの塔のことだよ」

「誰でも使える一般ラウンジから順に、使い魔の優秀さに応じて下級~特級まで使えるラウンジが決まってるの」


 本来この受付では一般ラウンジの使用許可しか出さないそうで、階級が上のラウンジを使いたければ、そこを管理する使い魔に認められるか、試験で優秀な成績をとらなきゃいけないらしい。

 面倒臭そうな手間が省けてよかったよ。やっぱりあのカニは便利だね。

 ちなみに特級ラウンジは学年ごとに、年間を通して特に優秀だと表彰された使い魔だけが使えるんだって。特別なお菓子が食べ放題らしいから気にはなるけど、半年しかいない僕には関係なさそうだね。

 上級ラウンジでも十分美味しいおやつがあるらしいから、そっちをいっぱい食べようっと。


「ありがとね」

「ふふ、こちらこそよ。あ、次からは勝手に一般ラウンジへ繋がるから、ここへ来るときは裏口を使って」


 ヒーラはそう言って握手をしてきた。そして今さらの自己紹介。ミーリとコーレもそれに続く。解析でわかってたけど、うんうんって言っておいた。


「それじゃあ……ん? ラウンジへ行くには一回外に出ればいいのかな?」


 だって扉や通路はどこにもない。


「いいえ。ここから入れるわ」


 ヒーラが受付の後ろにある壁を指差した。会員証を翳せばいいらしい。

 言われたとおりにすると、壁からシュバッと出てきた魔法陣に吸い込まれた。



ヒーラたちの解析結果

---------

【種族名】シスターレイス

【名 前】ヒーラ

【形 状】ヒト種霊魂型

【食 用】不可

【危険度】A

【進化率】☆

【変異率】☆

【能力値】

〖体〗無し〖攻〗B〖守〗B〖速〗A〖精〗A〖魔〗A

【属 性】霊,氷

【魔 法】〖下級〗氷〖中級〗氷〖上級〗氷

【スキル】

 〖固有〗-

 〖種族〗浮遊,物理無効,魔法反射,セパレートソウル

 〖習得〗嘘感知,上級家事,上級事務,祈祷,ソウルタッチ

     他数個

【異常情報等】

 極度の冷え症,軽度の邪霊症

【魔力結晶体】

 胸部に反応あり

【使い魔契約】

 〖種類〗通常契約〖契約者〗ピト=ヒーラ・アンドロミカ

【棲息地情報】

 アルフトラズマ大陸北西部ギルゼサセッタ王国フルマトリローナ魔法大学

【世界使い魔支援保護機構データ抜粋】

 レイス姉妹の長女。次女ミーリ、三女コーレとは三つ子。生前は村巫女として生活していたが、飢饉の際に責任を押し付けられ村人たちによって惨殺された。紆余曲折あってピト=フーラ・アンドロミカの使い魔となる。既に怨みは晴らしている。

---------

【種族名】シスターレイス

【名 前】ミーリ

【形 状】ヒト種霊魂型

【食 用】不可

【危険度】A

【進化率】☆

【変異率】☆

【能力値】

〖体〗無し〖攻〗AA〖守〗C〖速〗B〖精〗C〖魔〗A

【属 性】霊,火

【魔 法】〖下級〗火〖中級〗火〖上級〗火

【スキル】

 〖固有〗-

 〖種族〗浮遊,物理無効,魔法反射,セパレートソウル

 〖習得〗嘘感知,上級家事,上級事務,祈祷,ソウルタッチ

     他数個

【異常情報等】

 極度の暑がり,軽度の邪霊症

【魔力結晶体】

 胸部に反応あり

【使い魔契約】

 〖種類〗通常契約〖契約者〗ピト=ヒーラ・アンドロミカ

【棲息地情報】

 アルフトラズマ大陸北西部ギルゼサセッタ王国フルマトリローナ魔法大学

【世界使い魔支援保護機構抜粋】

 レイス姉妹の次女。長女ヒーラ、三女コーレとは三つ子。生前は村巫女として生活していたが、飢饉の際に責任を押し付けられ村人たちによって惨殺された。紆余曲折あってピト=フーラ・アンドロミカの使い魔となる。既に怨みは晴らしている。

--------

【種族名】シスターレイス

【名 前】コーレ

【形 状】ヒト種霊魂型

【食 用】不可

【危険度】A

【進化率】☆

【変異率】☆

【能力値】

〖体〗無し〖攻〗C〖守〗C〖速〗A〖精〗AA〖魔〗B

【属 性】霊,光

【魔 法】〖下級〗光〖中級〗光〖上級〗-

【スキル】

 〖固有〗-

 〖種族〗浮遊,物理無効,魔法反射,セパレートソウル

 〖習得〗嘘感知,上級家事,上級事務,祈祷,ソウルタッチ

     他数個

【異常情報等】

 極度の寂しがり,軽度の邪霊症

【魔力結晶体】

 胸部中心に反応あり

【使い魔契約】

 〖種類〗通常契約〖契約者〗ピト=ヒーラ・アンドロミカ

【棲息地情報】

 アルフトラズマ大陸北西部ギルゼサセッタ王国フルマトリローナ魔法大学

【世界使い魔支援保護機構データ抜粋】

 レイス姉妹の三女。長女ヒーラ、次女ミーリとは三つ子。生前は村巫女として生活していたが、飢饉の際に責任を押し付けられ村人たちによって惨殺された。紆余曲折あってピト=フーラ・アンドロミカの使い魔となる。既に怨みは晴らしている。

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