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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第19話 お人好しのゴーレム

▼26.06.14誤字修正,加筆修正

▼26.06.20教授の名前変更,誤字修正

 アンバーボルト教授にしょっ引れた僕たちは、学長室でしこたま怒られた。といっても怒られたのはレギスだけ。僕は何も言われなかったし聞かれなかったし、そもそも庇うつもりなんてなかったからず~っと黙ってた。すぐ出ていく僕に勘違いなんて関係ないしね。だから我れ関せずで解析装置の具合を確かめて暇潰ししてた。

 レギスは最後の最後まで口を塞がれてて弁解もできず、勘違いされたまま終始ショボくれたまま小さく首を振ってたよ。

 僕にしてきたみたいに偉そうな態度をとっていれば、イラついた向こうが口の拘束を解いてくれて、もう少しどうにかなったんじゃないかと思うけど……どうだろうね。

 

「ようやく使い魔召喚に成功したと聞いて喜んでいたのに……はあ。メリッサには迷惑かけたわね」


 叱り続けていた学長の深い深いため息にレギスは今日一ビクッとした。


「いえ、少々驚きはしましたが今時珍しいことではありませんので……メキザもあまり気を落とさないで」


 あれ? なんかちょっとだけアンバーボルト教授が優しい表情になったぞ。もしかして二人は友達なのかな。


「ありがとう。講義が中断になった学生には私からマナポーションを配っておくわ。それから無料補講の手配も」

「助かります。それでは私はこれで」


 教授は拘束魔法を解くと、軽い礼をしてから退室していった。去り際にチラッと僕の方を見たけど特に何もなかったよ。


「き、聞いてください母上――!」

「結構。下がりなさい」


 拘束の解けたレギスは教授の退室と共に直ぐ弁解しようとしたけど、学長は心底がっかりした様子でそれ遮った。

 予想はしてたけど学長はレギスの母親か。さっき教授がメキザって呼んでたから……フルマトリローナ家第18代目当主かな。レギスの名前のすぐ後にメキザパットってあったし、たぶんそうだね。


「ですが!」

「聞こえなかったのですか? 今すぐ下がりなさい」


 うっひゃ~、すげ怖じゃん。息子にあんな目を向けられるなんて相当厳しいんだろうな。


「は、はい……行くぞ」


 項垂れたレギスが僕の手を取った。とても冷たい手だ。

 でも、う~ん、こういうの怒られてたじゃん? ほら、学長の眉がピクッて動いたよ。まあいいけど。僕はそんなことより僕は気になるとこがあるからね。


「ねぇレギス、あれ欲しいんだけど」


 売れば路銀に変えてもお釣がきそうな杖を指差す。ただの木の枝に見えるけど結構なレア物だ。

 でもレギスは無言で首を振っただけで僕を部屋から連れ出した。既に講義は終わってたらしくて、廊下には紫色のローブを着た学生や白いローブを着た教員が歩いている。

 彼らの間を縫ってレギスは早足で歩いていく。お城を無理やり学校に改造したような内装が続き、今度は教会の失敗作みたいな場所、とにかくあっちこっち歩いて外に出た。


「ねえ、どこ行くの?」


 僕のことも無視だ。外に出たし、もしかしたら出口まで連れてってきれてるのかな。繋いだ手がずっと冷たいままなのも、僕とお別れを決意したからかも。

 それからさらに歩いて五分くらい。庭園を抜けた先の三階建ての塔まで来るとレギスは立ち止まった。

 三階までぽっかり空いた大きな縦穴の入り口が印象的だけど、塔自体はこぢんまりして見える。転移装置か何かかな。


「実技の授業や自由時間以外、使い魔はここにいる決まりなんだ」


 ええ!? てっきり出口まで案内してくれてるんだと思ってたのに酷いよ。


「使い魔にはならないって言ったよね」


 再び沸き上がってきた怒りを乗せ、じと目でレギスを見る。


「頼む! これ以上母上にがっかりされたくないんだ! 使い魔と契約できず逃げられたなんて知れたら私はもう……」


 あ~あ、また泣き始めた。

 困ったなぁ。たぶん僕ってお人好しってやつなんだよ。少しくらいならいいかなって思っちゃうんだもん。

 でもロイたちが心配だし……離れ過ぎたから向こうの様子がわかんないだ。僕の能力値も初期値に戻ってたから、あっちにも不都合が出てるだろうし。


「頼む! 一年、いや半年でいい! 使い魔の振りをしてくれ!」

「……やだ」

「っ!?」

「僕は二度と働かないって決めてるの。使い魔なんて振りでもごめんだよ」

「そんな……」

「だから友達ならなってあげてもいいかな。僕、友達いっぱい作るのが夢なんだ」


 絶望に満ちた顔から輝く笑顔になったレギスが抱き付いてきた。


「ありがとう! ありがとうイコルア!!」

「はいはい。でもすぐにってわけじゃないよ。友達になれるかしっかり見極めさせてもらうからね。もちろん、レギスもちゃんと僕と友達になれるか考えてよね」

「なる! 私の気持ちは召喚したときから決まっている! 友達になろう!」


 まるで愛の告白みたいだ。こういうの止めろって怒られてたのに、実は全然堪えてないんじゃないのかな。ショボくれて見えてたのは演技だったのかも。

 でもま、いいやと思っちゃったんだから仕方ない。ロイたちには何とかして連絡してみよう。


「駄目だよ。僕の親友曰く、僕の友達感はトチ狂ってるらしいからね。後悔しないようにしっかり見極めて」

「わかった! 見極める、約束しよう! では私は講義へ行く! 塔のことは中の使い魔たちに聞いてくれ!」


 豹変っぷりがものすごい。もう元気いっぱい。涙の跡すらないよ。やっぱりこれ術中に嵌められたのかな。早まったかも……ううん、ポジティブに考えなきゃ。これで恩を着せられたって思えばいいんだよ。結果がどうあれ、お別れの時にはどんな無茶なお願いもきいてもらえるんだから。

 そうと決まればまず行動だ。

 使い魔の中には遠距離の連絡手段を持ってるのがいるかもしれない。それに強い魔物がいたら連結してデコイズが使えるようになるかもだし。

 僕はそんな軽い気持ちで使い魔の塔に足を踏み入れた。

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