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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第14話 お空を飛んで……

▼26.06.11誤字修正

▼26.06.14誤字修正

▼26.06.21誤字修正

 水虫の感染に衝撃を受けたのは僕だけじゃなかった。ユックもだ。感染源のロイは肩身が狭そうで、視線が彷徨ってばかり。

 そんな中でまず詰問すべきはユックだ。なんせ完治したって断言したのはコイツなんだから。

 ユックの言い分はこう。とんでもない重症だったせいで完璧に治せていなかった、らしい。ちなみにユックは話してる間ずっと腫れ上がった頬をさすりながら僕を睨んでいた。

 うんうん、わかってる。ちゃんと僕も一発殴ってもらうよ。だからきちんと水虫を治してね。


「……うん、全員健康だね」


 念のためにオルも解析してみたけど問題なし。スッキリしたところで再出発だ、と思ったらすぐ出口についた。目の前に広がるのは藪。

 今はそこを進み獣道のような茂みをつっきった先のジーナス河って所までやって来た。


「うわぁ、大きな河だねぇ。海みたいだ」


 藪の切れ目から河までは十歩くらい。そこが小さな砂浜になっている。砂浜を走り抜けて河を覗き込むと、底がはっきり見えるくらい水が透き通っていた。騙されそうになるけど、ここは浅瀬のない深~い河だとロイが言う。

 なんでも、ロイとオルは魚が食べたくなるとここまで釣りをしに来てたようで、砂浜も二人がわざわざ岩山で砂を集め何往復もして作ったものらしい。河に浸食されないように砂浜と河の境目には岩がびっちり並べてある……たぶん寄生虫の感染源はここの魚だな。

 どの魚にどんな寄生虫がいるのか気になって河に顔を突っ込んでみた。


「何してんだ!?」


 流れは緩やかに見えたけど実際はそんなことなくて、なかなかの圧が首にかかった。もしロイが引っ張り上げてくれてなきゃ首がもげてたかもしれない。


「喉乾いてたんなら言えよ馬鹿」

「生水飲む馬鹿がどこにいんだよ。煮沸しろ煮沸」


 ロイもユックもことあるごとに僕に馬鹿って言う。僕、馬鹿じゃないもん。


「……そういえば今さらなんだけど、ユックはあの町に派遣されてきたんだよね? 離れてよかったの?」


 なんとなくお説教が始まりそうな気がして話題を反らす。すると軽い溜め息の後でユックが答えてくれた。元々お金を貯めたら町ごと教会を燃やして行方をくらますつもりだったから問題ないってね。

 さすがフラテリス教の運営する聖職者学院、それもスファメリス校出身なだけある。発想が狂信者のそれと同じだよ。


「僕、もっと平和な生活を望んでたんだけどなぁ……逃亡犯かぁ」

「あの火災だ。誰も俺たちが生きてるとは思わねぇよ。それにスラム以外に燃え広がらないよう調節してある。むしろ町が綺麗になったって喜んでるだろ」

「……僕、いつかスラムの住人たちに謝らなきゃだね――あ、その瓶はだめ! 大切なもの入れてるから!」


 オルが割ろうとしてた瓶を取り上げて、別の空き瓶を渡す。

 どうやらオルは釣り針の代わりに瓶の破片を使うつもりだったらしく「なんも入ってなかったじゃねぇかよ」なんて文句を言って、渡した空き瓶を割っていた。


「今日はここで野宿だ。明日の朝、河を下る舟が通るはずだから、それに乗せてもらうぞ」


 どこからとってきたのか釣竿っぽい木の枝と糸をオルに渡したロイはそう言うと、薮の方へ行ってせっせと草を刈り始めた。寝床を作るつもりなんだろう。

 言われて気付いたけど日が傾きかけてたんだね。夜かぁ……夜ねぇ………僕は一刻も速く別の所へ行きたいんだよね。


「ねぇ、野宿は止めて日が暮れるまでの休憩にしない?」

「却下だ」

「俺は寝てぇ」

「夜の河は危険なんだぞ!」


 うわっ、三人そろって反対だ。

 う~ん、オルはともかくロイとユックは記憶を共有したのに覚えてないのかな……記憶の量が多過ぎて覚えきれなかったのかも。


「僕、コルキスフレームがコルキス王子にそっくりだって言ったよね? つまりコルキス王子と似たよなこともできるってことなんだ」


 得意気になっちゃうのは許してね。ちょっと自慢なんだもん。


「へぇ」

「そりゃ良かったな」

「王子なんて知らねぇよ」


 ぬぬぬ、クソどうでもいいって雰囲気だよ。


「も~、見ててよ! はい、さっきもなってたけどこれがコルキスフレームね!」


 見せた方が速い。コルキスフレームになって、コルキス王子がよくしていたっていうカッコいいポーズをとる。


「あんだぁ?」

「ふぁ~あ、んで? そのポーズが役に立つのか?」


 ロイは訝しげ、ユックはあくび混じりで小馬鹿にしてくる。唯一、オルだけがカッコいいポーズの価値に気付いて「や、やるじゃねぇか」と呟いていた。

 でもポーズ自体には意味がなくて、背中にバサッと生えた蝙蝠羽が重要なんだ。


「ほら、見てよ。僕飛べるんだよ。あと吸血だってできるんだからね!」


 ふわっと浮かんで羽をパタパタしながらニカッと笑って牙を見せる。

 コルキス王子はヴァンパイアハーフだったからね。夜はパワーアップするんだよ。つまりそれを模してる僕もだ。三人を遠くまで運んだって疲れ知らずだもん。


「「へぇ……」」


 驚くと思ったのにロイとユックの反応は芳しくない。


「もうっ! なんでそんな無関心なの!?」

「いや、俺も飛べるし」


 ユックがふわっと浮かんでみせた。


「俺も連結スキルにユックの簡易飛行を選んだからたぶん……ん、こうか? お、できた」


 ロイもふわり。

 なんとも気まずい沈黙が始まってしまった。そんな中でオルだけが浮かんだロイを見て目をキラッキラにさせていた。

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