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クリームメロンソーダコード  作者: 式崎 花菜恵
第1章 マチルダと本
3/7

第3話 初めての馬車

 とりあえず、ただ雷鳴のした方角へ歩く。

 夕陽が眩しくなってくると、雷鳴のした方角から馬車がこちらに向かって走ってきた。馬車はマチルダの前で停まった。馬の手綱を握っていた男が下りて、マチルダと向き合うように立つ。その男が言う。

「王子様がお待ちです。さぁ、乗って。楽しい旅の始まりです」

 マチルダは聞く。

「ここはどこなの?」

 男は答える。

「クリームメロンソーダ王国です」

 クリームメロンソーダ王国……。

 マチルダは口の中で復唱しながら馬車に乗った。

 馬車は砂丘から出発し、市街地に入った。暗くなってきた街は灯で明るさを保っている。

 間もなく馬車の中の天井にも明かりがついた。

 マチルダは車窓からレストランの中を覗く。大人も子供も関係なく、皆クリームメロンソーダを飲んでいる。


 マチルダは馬車の中から男に自分から声をかけてみた。

「ねぇ、そこの貴男? 私、このままで良いの?」

 男はちらりとこちらに振り向いてから言った。

「えぇ、そのままで結構だそうですよ。王子様は異国のファッションに興味がおありのようですから」

 なぜか、男にはマチルダの声は聴こえるらしい。

 本当に不思議な世界へ来てしまったんだなと、マチルダは思うのだった。

「でも、足の裏に砂が残っているのは気になるでしょう? 近くのシャワールームへご案内しますよ」

 男は本当にシャワールームへ連れて行ってくれた。

「バスタオルとフェイスタオルは貸し出しているようですね」

「ちょっとシャワー浴びてくるわ。森で汗かいたし」

「いってらっしゃい。私はここで待っています」

 マチルダは頭と体を洗った後、急いで足裏に付いた砂を洗い流した。完全に砂が足に残っていないことを確認すると、バスタオルで全身を拭いた。

 それが終わるとフェイスタオルで顔と髪を拭いて。スキンケアとメイクをして、花柄のワンピースに着替えると、靴も履いた。

「お待たせ」

 マチルダは再び馬車に乗る。


 今度は馬の手綱を引く男のほうから声をかけてきた。

「私の名はスタグス。王家に仕える馬車使いだ。宜しく」

「私はマチルダよ。こちらこそ、宜しく」

 馬車は街灯に照らされながら走る。

 マチルダはうっとりした。この国の夜景のキレイさに、言葉がでないほどに。

「左側に見えるのは、ツインクロックタワーだ。右側にこれから見えてくるのは。アナザーの城砦だ」

「城砦ってことは、かつてこの国は他の国と戦争をしていたの?」

「それについては王子様のほうがお詳しいんじゃないでしょうかね。毎朝家庭教師が王子様に授業をしに来ているみたいなので」

 馬の歩く速度が、次第にゆっくりになった、

「間もなく宮殿に着きます。旅の終わりです。お忘れ物なさいませんように」

「ありがとう。楽しかったわ」

 マチルダを乗せた馬車は、ほどなく宮殿に着いた。

 マチルダは再び例の本を取り出した。

 クリームメロンソーダコードの文字列も、バーコードも、記号や番号も、もう光っていなかった。




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