“エスト”。
「え……est……!??」
衝撃の情報を聞いた師は、目を見開いて驚いている。
口ぶりからして、highestより上の階級みたいだ……。
……est……。
この子が……。
「そうだ、estだ。早速で悪いが、君たちには“ラーメン没頭室”……対象ラボにて身体検査を受けてもらう」
じゃあ僕たちは今からラーメン没頭しっ…………………………ラーメン没頭室っ!??
ラーメン没頭室で…………身体検査を…………?
脂質とかの話し……??
「ラーメン没頭室……ですか……」
師が困惑の声を上げている。
いや困惑以外どうしろってのよその名前は。
「あぁ、室長が一日三食ラーメンを食べる変人でな。だが、奴の存在が人類を救っていると言っても過言ではない人物だ」
ラーメン没頭室の室長が?
「ではついて来い、奴に話は通してある」
そういうと、葛葉さんは、戦闘訓練ルームの壁に向かって歩いていく。
あ、よく見たら施設の地下に繋がるドアある。
そりゃそうよな、あの扉だけじゃ不便だもんね。
葛葉さんは、僕たちが使ったドアより五倍くらい大きなそのドアを開けると、僕たちを部屋の外へと促す。
その先には、一階とは違った雰囲気だけど、清潔に保たれた通路が広がっていた。
それに、一階の通路より広めだ。
僕たち五人はその通路を、葛葉さんの後についてあるく。
「あの〜すみません、残陽さん。質問いいですか?」
話し出したのは、天存 未来さんだ。
「残陽さんでは長いだろう、“隊長”でいい。特段、私の名前を覚える利点など君たちにはないからな」
え、どうしよう……。
僕も隊長って呼んだ方がいいのかな……。
「残陽隊長! 残陽隊長っていくつなんですか?」
ばっ! バカなっ! そんな手が!?
名前を呼びながらさらに隊長までつける手が!?
僕じゃ絶対に到達できなかった場所に天存さんはいる!!
強すぎる……! 勝てるわけがない……!
「…………二十四だ」
あ、残陽隊長スルーした。名前を呼ばれるのは別に不快ってるわけじゃにににににに二十四!??
あんま変わんないじゃん僕たちと!!
そんな歳でこんな高みに!??
強すぎる……! 勝てるわけがない……!
「え! 残陽隊長二十四歳なんですか!? お姉さんじゃないですか!」
「あ、あぁ……。そうだな……」
残陽隊長押されてる……!
やはりこの天存とかいう陽キャ……強い……。
でも……! 僕にだって勝ってるところはある……!
身長……は負けてたわ……。
……! 配慮……! ……はできてるわけねぇし寝てたし……。
キモさは勝ってる。
ええねんいらんとこで勝たんで。
……ってかそこで勝つって逆に負けやろ。
「……ここだ。」
ふと、残陽隊長が大きな扉の前で足を止める。
「ここがラボだ」
そういうと残陽隊長は、その扉の横についたインターフォンのようなものを優しく押した。
ジジジッ……っと音がして、インターフォンから、明るい女の人の声が聞こえてくる。
「はーい! こちらラボでーす! どなたですかー!」
「残陽だ。梅雨はいるか?」
「わぁ! 残陽ちゃん! 久しぶり〜!」
「一週間前会っただろう」
ぴっ、っという軽い音と共に、ドアが解錠される。
「私が開けますよ! 残陽隊長!」
ドアの取手に手をかけた残陽隊長に向かって、天存さんがそう申し出た。
「そうか、では頼む」
天存さんがドアを開ける。
「ありがとう」
天存さんが開けたドアを通りながら、残陽隊長が感謝の言葉を述べた。
意外だったのか、天存さんは驚いた顔をしている。
そしてすぐに嬉しそうな顔になって
「はい!」
と眩しい笑顔で言った。
やめてよ泣いちゃうじゃんん〜〜……!
でももうしょうがないじゃんかぁっ!
だって綺麗なんだもん〜〜…………っ!!!
「!? 情さん!? 大丈夫ですか!?」
ドアを通る僕の涙を堪える変な顔を見て、天存さんが心配して声をかけてきてくれた。
うぅ……。
ほんとに泣いちゃう……。
「だ……だいじょぶ……です……。ぐす……」
天存さんはどうしていいか分からずに、オロオロと他の三人の顔を
どうしよう! 何かしちゃったのかな!?? ねぇどうしよう! どうすればいい!?
みたいな感じに見回している。
ふと、全身がぎゅと抱きしめられる。
そして
「よーしよしよしよし! ごめんねぇ泣かないでぇ……! よしよしよしよし、いい子いい子……!」
頭を撫でられながら、幼子をあやすように宥められた。
「ごめんねぇ……! よしよし、いい子いい子……」
衝撃で涙が吹っ飛んでいってしまった。
どうしよう……! 恥ずかしいし…………声も出ない……!
天存さんは僕をあやすのに必死で、僕が泣き止んだことに気付いてない……!
見てるよぉ! 師も常穏と柊さんもぉ!
「どうした?」
うわぁ! 残陽隊長まで戻ってきたぁ!
終わりや、もう終わり……。
僕はもうここで赤ちゃんとして死ぬんや。
「すみません……っ! でも、急に情さんが泣き出しちゃって……! 多分、私何かしちゃったんだと思います……!」
違うよぉ! 僕が勝手に泣きべそかいただけだよぉ!
「そうか、では宥めながら来るといい」
え?
「はい……わかりました……」
ええええあえええいええあえ?
「のっこりっびちゃん! ど! う! もー!」
明るいポニーテールの女性が、残陽隊長に飛びついてきた。
「んぐ……山田、梅雨はどこだ?」
「梅雨さん? 今ラーメン食べてるよ? 私が作ったやつ」
「またか」
「でも珍しいですねぇ、残陽ちゃんが梅雨さんのこと名前で呼ぶの」
「今は研修中だからな」
「へー! じゃあこの人たちが!」
山田さん……かな? は、残陽隊長から離れると、僕たちに駆け寄ってくる。
山田さんから解放された残陽隊長は、一人ラボの奥へと進んでいく。
その梅雨という人がどこにいるのか、予測がついているようだ。
「どうも後輩ちゃんたち! 私山田 榊です! ラーメン作ってます!」
そっか……この人ラーメン作って……
????????
ラーメン作ってます?????
それは……なに……?????
どういう事なの?????
まぁラーメン没頭室だからおかしくないのかな……???
「その引っ付いてる二人は……恋人……!? お熱いねぇ!」
え? あっ!!!!
ち、ちちちちちち違くて! ただ天存さんが優しくしてくれてるだけで……っ!!
…………あっ、まだ頭撫でてくれてる…………!
……それと……冷静になってきたから……ほっぺたあたりに…………天存さんがしてる……胸につけるやつの感覚が……。
ゴワッ……って……。
何考えるんだよ僕ぅ! バカ! 変態! えっち!
息もしづらいよぉ……! ドキドキするよぉ……!
だれかぁ〜……たしけてぇ〜……!
「恋人……では、無いですけど……。これから先、背中を預ける、大切な仲間ですから!」
「!」
!? …………。
へ…………?
「! そっか……! ごめんね……! 女の子同士のカップルかと思っちゃった! ごめんね、からかっちゃって……!」
……………………。
僕最低だ……。
天存さんはこんなふうに思ってくれてるのに……。
僕……こんな……。
「それに、手を離すタイミング失っちゃって……」
天存さんは僕を抱きしめたまま、照れくさそうにアハハと笑う。
「天存さん」
……! 師の声だ……。
「? 師さん……どうし……」
「私は合格発表の後あなたに足を踏まれてから……あなたのこと、周りが見えてない人だと思っていました。すみません……」
「え!? きゅ、急にどうしたんですか!??」
「……ですがあの時は初めての状況で……たまたま周りが見えていなかっただけだったんですね……。なのに私は、あなたに強く言いすぎてしまいました」
「い、いえ! 強くなかったですよ! むしろ正当な行動というか……!」
「誰にだって周りが見えない時はある筈なのに……私は、そんな簡単なことも忘れて、あなたを第一印象で決めつけてしまいました。ごめんなさい」
「そんな! 謝らないでくださいよ! 周りを見てなかったのも足を踏んだのも私が悪いんですから!」
謝られたのが予想外だったのか、落ち着くために手頃な僕をギュッと強く抱きしめる。
ぬいぐるみを抱きしめるみたいに。
ゴワッ……が、ふにっ……に変わった。
「…………………………。」
やっぱり、僕みたいなのが受かるべき場所じゃないよ……ここ……。
よくない、よく無い……。
すごく苦しい気分になる……。
ここにいるのは……綺麗な人ばかりだ……。
その綺麗さは、僕には無いもので……。
僕には強すぎるものだ……。
ここにいると、僕は……。
涙が……止まらなくなる……。
今まで……こんな事……。
なかった……のに……。
「あ! ごめんなさい! ギュッてしちゃった! ごめんなさい! 痛くなかったですか!??」
師との会話を終えて、ほっと一息ついた天存さんが、無意識に僕を強く抱きしめていたことに気付いて慌てて僕に謝ってきた。
強く僕を抱きしめていた手が、バッ! っと解かれる。
少し、肌寒い。
僕は、天存さんの胸から離れながら答えた。
「大丈夫です……すみません……」
…………僕は…………。
どんな顔をしていたんだろう。
天存さんは僕の顔を見て、とっても心配そうな顔をしている。
きっと、酷い顔をしているに違いない。
また心配をかけてしまう……。
そういえば今日は、心配されてばっかりだ……。
「せ、情さん……その……本当に大丈夫ですか……? 私、何か……」
「大丈夫です。本当に……。本当に大丈夫ですから」
オロオロしている天存さんを、僕は精一杯の笑顔で安心させようとした。
……うまく、笑えているだろうか。
「知ってますかみなさん! 残陽ちゃんってですね! 梅雨さんと超仲良しだから、いつもはラーメンバカとか頭ラーメンとかラーメン版バイオウドとか呼んでるんですよ〜!? 可愛くないですか〜?!」
「……………………。」
後ろから、山田さんの元気な声が聞こえてきた。
多分、戻りが遅い残陽隊長を待っている間の暇つぶしとしてだろう。
山田さんが、話をしている僕と天存さん以外を集めて、残陽隊長の豆知識を話し始めたようだ。
僕たちを呼ばなかったのは、僕たちに気を遣ってくれたからだろう。
「本人はちょ〜〜ミニマリストなんですけど! 人から貰ったものは無碍に出来ない性格で! 私がプレゼントしたロボットの組み立てフィギュア! ちゃんと作って部屋に置いてくれてるんですよ〜!」
「……………………。」
「それと、あの人ちっちゃいじゃないですかぁ! だから時々抱っこさせてもらうんですけどね……。 嫌そうな顔はするけどちゃんと抱っこさせてくれるんです! チョー優しくないですか!?」
「……………………。」
「あ! ちっちゃい繋がりで一つ……! 私ラーメン作ってるって言ったじゃないですかぁ! それでですね、これまた時々残陽ちゃんに食べてもらうんですけどね!? その時椅子が高くて足がぷらぷらしてるんですよ!! しかもちっちゃい子みたいにぷらぷら揺らしてるんです!! もう最高に可愛くってあ! これないしょなんですけど……! この前お風呂でいたずらした時なんかですね……!」
「…………………………。」
「……………………んふふ……」
すっごく明るく、楽しそうに話す山田さんを見て、僕の考えも、そっちに引っ張られて行く。
なんだか、僕ってバカみたい……。
みんな優しくしてくれてるのに……。
その優しさを受ける価値なんてあるのか、な〜んて考えちゃって……。
ダメだね……僕は。
だからさ……!
価値があろうが無かろうが……! 優しくされたんやったら……! 優しくされたんやろがいっ!
心配してくれたってことはっ! 心配してくれたってことやろがいっ!!
じゃあやることは一つやろがいっ!!!
「天存さん……!」
「は、はい……」
「ご心配おかけしてすみませんでした……! おかげさまで……すっかり良くなりました……!」
「そ、そうですか? それなら、よかったんですが……」
「天存さん……!」
今度は……ちゃんと笑えてるはず。
「ありがとうございました!」
天存さんの顔から、心配の色が……。
消えた。
あぁ、好き。
その顔大好き。
明るい顔。
眩しい顔。
「それとね! 敬語じゃなくていいですからね! 呼び捨てもしてください!」
「えっ! じゃ、じゃあ私にもそうしてください! 私ばっかりじゃ、申し訳ないですし……」
「みらちゃんっ!!」
「おっ!? せっ、 せっ、情!」
「うんむ! うんむ! よろしい!」
僕はみらちゃんの手を握って歩き始める。
「行こ! みんなのとこ!」
「! ……うん……!」
みらちゃんは、驚いていたけど……。
……嬉しそうだった。
「この前なんか『腹の減ったバイオウドですらお前の肉は食わない、ラーメンの味がするだろうからな』な〜んて言ってました!」
「でも! 私思うんですよ! バイオウドってぇ! 普通の人肉も食べるらしいですけど! 大半は食を楽しむために軽く味付けしてるらしいんですよ! 醤油に漬けたりとか! それぐらいなら食べられるらしいんですよ!」
「だーかーらー! もしかしてそれとおんなじで! もし梅雨さんの肉がラーメンの味がするならバイオウドからしてみたらラーメン味のすごいご馳走様になるんじゃないですか!? ね! どう思いますか!?」
「あぁ、もしそうであれば、なる。そしてもし、私の体がラーメン味になるというならばこの上なく素晴らしい事だ」
テンションマックスになった山田さんの問いに、灰色の癖っ毛をした無表情の男性が答えた。
隣には、少しめんどくさそうな顔の残陽隊長が立っている。
「遅くなってすまない、杏仁豆腐を食べていたのでな」
そう言葉を発した無表情の男性は、観察するような見透かすような灰色の瞳をしていて、見られると、こちらの全てを知り尽くされてゆくようでちょっと緊張してしまう。
でも、冷たいってわけじゃない、不思議な視線を放つ目だ。
百八十センチくらいで、ガタイがよく、真っ白な白衣をロングコートのように前を開けて着ている。
中にはウグイス色の毛糸の長袖シャツに、サラッとした生地の黒色ズボンを履いていた。
アイドルとかしていれば、間違いなく人気になるなって感じだ。
声も、落ち着いていてかっこいい。
「こっちだ。ついてくるといい」
そう言うと、その人はくるりと元来た方を振り返って、歩き始めた。
えっと、多分……この人が梅雨さん……?
「自己紹介くらいしろ」
残陽隊長に背中をガッっと掴まれ、その男の人が立ち止まる。
「梅雨だ。室長でいい」
梅雨さんは振り返らずにそう言うと、また歩き始めてしまった。
残陽隊長はその背中を不機嫌そうに見送ると、僕たちに指示を出す。
「すまないな、遅れてしまった。すまないがアレについて行ってくれ。あんなだが仕事はできる」
「「「「「わかりました」」」」」
僕たちは、指示の通り梅雨さ……室長について行った。
「ここがラボだ」
「わぁー!!! すごーーーい!!!!」
そこには、見た事のない景色が広がっていた。
まずはすっごく広い!!
戦闘訓練ルームの冗談抜きで百倍はある!
なんかもう小さな町くらいの大きさだ!
そしてそこに……
ビル群とか道路とかある! 信号も!
建物の中なのに!
「奥のビル群我々が作った資材置き、兼市街での戦闘を想定した訓練ルームだ。ラーメン屋を再現した場所もある」
「圧巻ですね」
師が流石に驚きながら室長に告げる。
「あぁ、店舗から屋台、カップ麺専門店や袋麺専門店まで揃えてある」
いらない情報。
「我々研究職の者たちが普段使用しているのは手前側だ、戦闘の余波を計算して通常の建物より頑丈に作られている。奥側はラーメンを食べる時しか使わん」
いらん情報といる情報を混ぜて寄越してくる。
「それでも広いが、今日は身体検査だったな。こっちだ」
室長が近くにある建物の内一軒。
大きめのビルに入っていく。
そこはまさに研究室! って感じの場所で、よくわからない大きな機械や、よくわからないこの大きな機会、そして、よくわからない大きな機械が、所狭しと並べられていた!
よくわからないぜ!!
「ここは『ヌードル監視室』バイオウドの研究から武器の製造、データの管理、ラーメンの製造を行っている。いつも榊がここでラーメンを作ってくれている」
なんなの?
まずヌードル監視室につっこめばいいの?
困惑する僕のことなど気にも留めず、室長が解説を始める。
「これが『溜め撃ち(チャーシュー)』。衝撃やエネルギーをチャージし敵に向けて放つ、遠近両用武器だ。かつてその弾丸で人間を狩っていたバイオウド。バイオウド“higher”『チャージ&シューター』によって作られた」
「え」
「これが『鳴り疾く(ナルト)』。電撃を自在に操ることが可能となる。どの程度扱えるかは器次第だがな。これはかつて電撃のような速度で人を狩り、ハイエスト職員を二名、ハイヤー職員を五名殺害したバイオウド。バイオウド“highest”『雷疾』によって作られた」
「ちょっ……」
「そしてこれは『戦いの行方(NO limit)』そしてこっちが『半熟者の(ハーフボイルドエッグ)』だ。そして……」
「ま、待ってくださいっ……!」
止めたのは柊さんだった。
静かそうな雰囲気の柊さんが出した大声に、みんな驚きの表情を浮かべている。
ただ一人、室長を除いて。
「なんだね」
「あっ! え……そ、そのっ……! わ、私……っ! ずっと、その、興味あって……! だから……! その……!」
「……………………。」
室長は、黙って柊さんの言葉の続きを待っている。
「あの、ここの……この……武器の……その……」
「……君は、“バイオウドの階級”を知っているか?」
「………………はい……?」
突然、室長が口を開いた。
トーンは、全く変わらない。
「いや何、元々は個体識別や職員の階級共々なかったのだ。だが討伐率が安定しないことに疑問を覚えた者が調査したところ、バイオウドにも個体差がある事がわかった、それも大きな」
「……………………。」
「弱い者は銃を武装した一般人とほぼ同等程度。だが、そこそこ強いものとなると戦車の砲弾を躱せたり、受けられたりする」
「……………………?」
「さらに強い者となると、最早人の手は届かない。ジェット機を堕とし、核を耐え、ビル群をまるで豆腐のように裂く」
「……………………。」
「これに気付いた者たちは、早急に個体識別を進め、判明した全てを考慮し、ランク付けした。職員にも、同様にな。それにより、強くない職員が強いバイオウドと接敵してしまい、殺害されてしまうことを防いだ」
「あ、あの…………」
「なんだ。君は、武器に興味があるのではないのか」
「はい……でもその話しと武器の……何か関係が…………」
「当然だ。武器は討伐されたバイオウドを元に製造されている。バイオウドを知る事は武器を知る事だ」
「…………。」
「その上で聞く。君はバイオウドの階級を知っているか?」
「? はい、知っています……」
「そうか、ならばこの話しはしなくてもよかったようだ。失礼した」
「? え? え?」
「あぁ、いやすまない。まだ聞かされていないのだと思っていてな。こちらの勘違いだった。すまない」
「? 聞かされていない……? 何を……」
「バイオウドの階級をだ。そういえばそうだな、残陽がいるのだから聞かされているか」
「え……? バイオウドの階級なら……テストにも……出ましたが……」
「? テスト……………………? ……………………。」
「……六年前、ハイエスト職員を五名、ハイヤー職員十名、ハイ職員からロウエスト職員九十七名、一般人およそ二百十五名を殺害したバイオウドの階級と個体識別名は?」
「え!? え!?? えっ!!??? えーと……! 六年前……!? えと……えと……! そんな大きな事件あったっけ……! ……いやでも……! こんなに大きいなら報道にも……! それに……そんなにたくさんハイエストの人たちがやられてるなら階級は確実に“highest”で……」
「待て」
「……え?」
「君は今なんと言った」
「階級は確実にハイエストだと……」
「? 何を言っている?」
「え……………………? 何か…………おかしいことでも…………」
「お前たちはなんだ」
「私…………たち…………??」
「お前たちは、“est”隊だろう」
「…………え……………………?」
「…………………………。」
「……………………………………………………。」
「……………………!」
「やはり話していなかったな、残陽」
「…………もしかして…………」
「そうだ」
「…………………………。」
「バイオウドの最高階級も」
「“エスト”だ。」




