est。
「初めまして! 自分、天存 未来って言います! よろしくお願いします! 情さん!」
バター石川支部、受付、エントランスに備え付けられた小さな休憩スペース。
褐色の短髪黒髪女の子、天存 未来さんが、まだちょっと目の周りが赤い僕に向かって明るく話しかけてくれる。
元気だぁ。
でも耳にキンキンしない声だ、おっきい声なのに。
こういうのってどうやって身につくんだろう、不思議ダァ。
しょーじき、羨ましい。
「あ……さっきは、どうも……。柊 手掴です……。どうも……。……すみません……」
僕がさっき、本部でいっぱいぶつかってしまった女の子だ。
ずっとオドオドしてるしペコペコしてる。
……あぇ? なんで!? 自己紹介してるだけなのに謝ってる……!!
何にも悪くないのにぃ〜……!
………………え僕ってもしかして……僕が思ってるよりも……結構怖いのかな……?
圧の無さなら随一だと思ってるんだけどなぁ〜……!
「……………………。」
ツンツン。
見守ってくれていた守人さ……じゃないや師が、僕の肩をちょいちょいっとつついた。
そっそうだっ! 僕も自己紹介しないとっ!
「ど、どうも……! 泉埜 情です! よろしくお願い致します……っ!!」
だからもうすっごいダメやねん。
なんで自己紹介一つまともにでけへんねんワシ。
テンパリすぎやろ!
これでぇ成人済みですのぉ!?
あり得ませんわ〜〜〜!!
それにな? 仰々しいねんな、これから一緒に働くのにこんな深刻な挨拶したらお互い気を張らなきゃいけなくなるやん!
もっと軽く……! 軽く……!
…………もう遅いけどね!
「よろしく! 情さん!」
「よ、よろしくお願いします……。すみません……」
「はっっっはいっっ!!! どうもよろしくお願いします!」
混ざったっ!
どうもとどうぞがっ!
ま、まぁ? このくらいの失態なら? 多分? 見過ごしてくれると信じてたいよ?
初対面ですでに幻滅はされてないと信じてられると思いたいかもだよ?
「お待たせしました、みなさん揃っていますね。では、行きましょう」
建物の奥の通路から一人で歩いてきた白石さんが、わざわざ僕たちの近くまで来て話しかけてくれる。
見た目通りのとっても優しい人みたい。
「それではみなさま、私の後ろについてきてください」
僕たち五人はまた、一列になって白石さんの後ろを歩き始める。
すっごい天井の高いエントランスには、いくつかの通路の入り口があって、僕たちはその中の、人が三人ほど横になって歩けるくらいの通路に入っていった。
「今から行くのは、戦闘訓練ルームです。名前の通り、戦闘訓練を行う場所です」
戦闘訓練ルーム……。
多分この中の全員がこれから嫌というほど使うことになるんだろう。
どんな感じの場所なんだろ。
どんな訓練するんだろ。
しばらく歩いていると、その全容が見えてくる。
向かって左側に見えた大きな透明な壁から先に、広い空間が広がっている。
地下の天井をくり抜いて、一階と繋げたみたいな空間だ。
めちゃめちゃ大きな部屋を半分だけ地面に埋めたみたい。
天井が高ーいのはそのせいなのかな?
「ここから入ってください」
白石さんが透明な壁の中に何箇所かついたドアの内、一番初めに辿り着いたドアをゆっくり開ける。
今度はちゃんと全開で開くみたいだ。
ドアの先には、二人が横に並んで歩けるくらいの通路が、壁に沿って作られている。
なんか、戦いを観戦する時のやつみたい。
もしかしたら、なんかの試験とかで、試験管がここで戦闘訓練ルームで試験を受ける人を見たりするのかな。
「こちらへ。足元、お気をつけてくださいね」
通路の端っこには、戦闘訓練ルームへ降りるための階段がついていた。
僕たちは、そこから戦闘訓練ルームへと降りる。
「こちらでお待ちください。座っていただいても構いません」
そう言い残すと白石さんは、階段を登り通路の外の通路へと出ていった。
んえ? 戦闘訓練ルームに降りるための階段がついた通路の外にある通路に出るためについたドアから出たら戦闘訓練ルームに降りるための通路の外に出られる?
は?
何ここ、な、何?
何なの?
むつかしいんだけど!
ドアを出てった白石さんは、通路と通路を仕切る透明の壁の外に一人で歩いていった。
でも、すぐに戻ってきた。
後ろに誰か、女の子を引き連れて。
遠くからでもよくわかる真っ赤な長い髪を、後ろで束ねているポニーテールの子だ。
その子が、白石さんと一緒に、透明の壁についたドアから中に入り、戦闘訓練ルームへと続く通路へと出た。
そして、通路の端っこにある階段から、僕たちのいる戦闘訓練ルームへと降りてくる。
近づいてくるにつれて、その女の子の全容が見えてくるた。
よく見ると、柊 手掴さんよりも身長が小さい。
百四十センチあるか無いかくらいだ。
髪と同じ真っ赤な瞳で、遠くからはわからなかったけど鋭い目つきをしている。
でも、それよりも気になるのは、その子の格好。
ハイ……レグ……???
黄色いラインの入った、真紅の……その……………………かなり……際どいやつ……。
その上に、一本のベルトみたいなのを巻いて、その両脇になだらかに盛り上がった円盤みたいなのが備え付けられている。
僕……見てもいいのかな……?
いやっ! 見ちゃいけないってことはないんだろうけど……!
なんか……なんか……!
ちょっと……………………。
えっちだ…………………………。
…………………………。
……………………………………………………。
僕キモ。
ちょっと周りの女の子の方見れないや……。
ぴぇぇぇぇぇ……。
「それでは皆さま、こんな遠くまで来ていただきありがとうございます。これより、皆様が知りたいでしょうことを説明させていただきます」
僕たちのそばまで歩いてきて止まった白石さんが話を始める。
「皆さまにはこれから、est隊と呼ばれる新設立される部隊へと入隊していただきます」
? えすと隊?
聞いたことない、ハイエスト隊なら知ってるけど。
「est隊? 私たちはハイエスト隊に入隊するのではないのですか?」
質問したのは師だった。
みんなもそれを聞きたかったようで、その質問の答えに耳を澄ましている。
僕も聞きたかった。
だって、est隊なんて聞いたことないもん。
バターには、食人生物バイオウドと戦うため、編成される部隊がある。
それは大きく二種に分類されており、それはハイエスト隊もハイヤー隊。
文字通り、部隊の隊長をハイエストの隊員、ハイヤーの隊員が努める部隊だ。
一つの舞台は、隊長一名、副隊長一名、隊員数名といった感じで編成される。
だから僕たちは、たぶん白石さんの率いるハイエスト隊、『白石隊』に入隊するのだろうと思っていた。
でも、est隊……? それって一体……。
「それは……」
「ここからは私が話そう」
可愛い声、だけど淡々とした声が。白石さんの言葉を制止する。
その声は、白石さんの右側、そして白石さんよりかなり低いところから聞こえてくる。
「白石の前述の通り、est隊は今回新しく設立される部隊だ。知らないのも、無理はない」
冷静な話し方だ。
それに、白石さんを白石って呼んでる。
でも本当に声が可愛い。
「君たちはバターの階級を全て覚えているか?」
もろちん! たくさんおべんきょしたもんに!
「はい、lowest、lower、low、High、higher、highestです」
師が、その質問に答える。
「そうだ、その通りだ。だが、それで終わりでは無い」
「!」
辺りに……困惑と、理解による緊張が走ったのがわかった。
「私が君たちを受け持つこととなった、『est隊』“隊長”……葛葉 残陽……」
「“est”だ。」




