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バイオウド!  作者: 咲作桜裂柵炸狂羅(さくさくさくさくさくさくら)


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12/16

混濁。

 ※エロ描写があります。

ご注意ください

 空の星が映る綺麗な湯船の中、僕は右足の指と左足の指を絡まらせて遊んでいた。


 僕流、手遊びの足バージョンだ。


 親指で親指をにぎにぎしたり、足を組んで、足の甲を合わせながら指を逸らせて絡めたりする。


 長座体前屈の後の休む時の姿勢になって、僕は足遊びをした。


 リラックスした体が、ちょっとずつ後ろに寄りかかりながら沈んでいく。


 顎がちょっとだけ湯船に浸かった。


「…………。」


 そのまま口まで沈めてぶくぶくぶくってしようとしたけど、流石に…………。


 …………まぁいっか、誰もいないし…………。


 僕は口を水の中に沈めて、ゆっくりと息を吐いた。


 たくさんの泡ぶくが、僕の口から水面に出ては次々割れて消えていく。


 息を吐き終わって、僕はゆらーっと上半身を起こしながら顔を湯船の中から出した。


「はぁ…………」


 謎の達成感と満足感が、僕の中に湧き出た。


 鼻が勝手にふふんっ! と鳴った。


 誰にも見られてないし、誰にも聞かれてない。


「んふふ…………」


 僕は世紀の悪い子、悪いことの天才。


 みんながみんな恐れ慄き、世界は我が物となるのだぁ〜!


 ふっふっふっ! はぁ〜はっはっはっ!


「ふひひ…………!」


 折り曲げた膝の上に顎を乗せて目を瞑り、僕はそんなことを妄想した。


「あ、やばっ! 髪っ!」


 思わず折り曲げた膝を両手で抱きしめてしまって、長い後ろ髪から手を離してしまった。


 なんか暗くなったなって思ったら髪が……。


 あんまりに自然すぎて、手話したの気づかなかった……。


 多分、あまりにリラックスしすぎて、体が髪を掴んでいることを忘れたんだろう。


「うわぁ〜どうしよう……! 髪、湯船に浸かっちゃってないかなぁ〜……」


 僕はまた、後ろ髪をまとめて左手で束ねて結ぶ。


「ゴムさえあったらなぁ〜……」


 僕は座ったまま、下を向いて湯船を見た。


 汚れては、なさそう……?


 浸かっちゃったかなぁ〜……?


 う〜〜〜ん……。


 ホントにお風呂汚れてない〜……?


「ん〜〜っ! ゴム〜〜〜っ!!」


 ほんっと! ちゃんとゴム持って来ときなさいよ僕!


 そんなんじゃお風呂に入る資格はないよ!


 なんて考えていると、後ろから引き戸の開く音がした。


 あ、やべ! 誰か入ってきちゃった……!


 さっきの声聞かれちゃったかな……。


 だとしたら恥ずかしい……。


 僕は、どんな人が入ってきたかどうか、その人が僕の声を聞いてそうか気になって、後ろを振り向……………………。


 …………かなかった。


 振り向かなかった。


 振り向いてないし、何も見てない。


 だってそんなわけないもん、そんなわけない。


 その人の足音が、シャワーがたくさん並んだところへ歩いていくのが聞こえる。


 蛇口が捻られて、水が出だ音がした。


 頭や体を泡立てて洗う後が…………今、何より鮮明に聞こえる。


 僕の体は、カチコチになっちゃって、座って前を向いたままちょっとも動けない。


 ゴクリ……と生唾を飲んだ。


 その人が、体を洗うのを終えて湯船に…………こっちに近づいて来る。


 鼓動がとんでもない速さで鳴った。


 体中が熱いのか寒いのかわからない。


 心臓が、きゅっとなって冷たくなってるはずなのに、バクバクと爆発しそうなほどの大きな音を響かせながら、アツアツの血液を猛スピードで全身に送っている。


 自分の体が、自分の体じゃないみたい。


 全身が、意思とは関係なく小刻みに震えた。


 その人は、僕のすぐ後ろまで歩いてくると、ゆっくりと湯船に浸かり始める。


 そして、僕のすぐ左隣に腰を下ろした。


 頭の中に、


「なんで?」


 と言う疑問だけが浮かんで、それ以外考えられなくなる。


 僕は短い息を荒く吐きながら、目の前の湯船だけを凝視した。


 その人の一糸纏わぬ姿を、視界に映さないために。


 僕はまた、ゴクリと生唾を飲んだ。


せい。」


 耳元で突然話しかけられる。


 ビクゥッ!! と体が跳ねた。


 その衝撃で、水面に波が立つ。


 呼吸の感覚が、どんどん短くなっていく。


 僕は縮こまりなが、目だけを動かして、その人の方を見た。


 できる限り上の方、その人の顔から下が目に入らないようにして。


 そこには、おでこを出したヘアスタイルをした黒髪の女の人がいた。


「い、いい、いくさ…………!?? な、ななな、なんで…………」


 僕は耐えきれなくなって大きく目を逸らした。


せいがお風呂に向かったと聞いて背中を流しにきたんです。もしかしたら体を洗うのが大変かと思って……。ですが、その様子だと必要なかったみたいですね」


 当たり前みたいに普通のトーンで話してる……。


 裸同士なのに…………???


 それに…………僕…………。


 僕は足と手を総動員して、いくさから体を隠しながら逸らした。


 違うくて、僕の意思じゃなくて…………血がすごく早く送られてるから…………。


「…………フフフッ…………。大丈夫ですか? せい


 いくさの声のトーンが、何かちょっと変わった。


 そう考える前に、柔らかくて艶めかしい指が、なぞるようにして僕の太ももの根本あたりに触れた。


「うっ…………!」


 体がまた、ビクリと跳ねた。


 短く浅い息遣いが、荒く激しいものになっていく。


「大丈夫ですか? せい。お風呂から上がりますか? 立てますか?」


 いくさ……の声…………。


 なんだか……ちょっと、イジワルっぽくなってる…………。


 いくさの手が、太ももからお腹へとなぞるようにして移動した。


「ひっ…………!!」


 持たない、持たない。


 無理、無理。


 僕は、すがるようにいくさの顔を見た。


 真っ赤に紅潮している。


 でも、自分でもなんでそんなことになっているかわからないのか、困惑と緊張の色も浮かんでいた。


 いくさの方も、息が荒い。


 高揚と困惑と緊張が混ざって顔が、僕のことを見ていた。


 僕はいくさの手から逃げようと、背中を壁につけたまま、ゆっくりと後退りした。


 そしてそのまま、湯船から出た。


 壁が地面に変わっても、僕は腰を地面につけたまま、ゆっくりと後退りを続けた。


 それでも、いくさの手は離れない。


 それがお腹から鼠蹊部へ移動して、僕はまた小さく鳴き声を上げた。


 上半身だけお越した仰向けのまま後退りする僕の体を、いくさが膝立ちになって跨いだ。


 僕の体に馬乗りになったいくさの、高揚した顔が目の前にくる。


 その先に、一糸纏わぬいくさの身体があった。


 ゴクン……、といくさが生唾を飲んだのが見えた。


 いくさの手が、鼠蹊部をなぞっていく。


 僕がふるふると小さく頭を振る。


 それでも、手は止まらない。


 起こしたまま上半身を支えるためについた肘が、ガクガクと震え始める。


 息がどんどん荒くなっていく。


 呼吸をするため口を動かすたびに、ヌチャヌチャと口中から音がした。


 舌に力が入らなくなってきて、どんどん口の外へ出ていく。


 涙が、どんどんと溢れ出てきた。、


 もう…………熱いのか、苦しいのか、気持ちいいのかわからない。


 もしかしたら、熱くて、苦しくて、気持ちいいのかもしれない。


 頭がおかしくなってしまう。


いくさ…………。ダメ…………! やめて…………! お願い……………………!」


 気付けば勝手に口から弱々しい懇願の声が、出ていた。


 怖かったのだ、あまりの感情の濁流が。


 怖かったのだ、初めてのことで。


 僕のそんな声聞いたいくさは、聞く前よりもっと本能的な顔になった。


 そして、手先での撫でをさらに背徳的で艶かしいものにしていく。


 手が鼠蹊部を通過して、それに到達する。


 そして、それに触れた。


「やッ! あッ!!!!!!!」


 熱い、熱い。


 苦しい、苦しい。


 ダメダメダメダメ。


 無理無理無理無理無理無理無理無理。


 僕が小さく息を呑みかけた、


 その時。


 僕の右手が、僕の意思とは関係なく、不意に動いた。


 その右手は、いくさの左胸を優しく包むと、するりと一撫でした。


 ビクッ! と大きくいくさの体が跳ねて、いくさは仰け反りながら大きく息を吸った。


 カクカクと空中で腰が上下して、口をカパっと大きく開けながら下を向いた。


 首に力が入らないのか、だらりと頭を垂れ下がらせている。


 力なく大きく開かれた口から、だらりと涎が流れた。


 いくさは軽く体を震わせると、重たそうにゆっくりと首をもたげた。


 そして、虚ろな目をした顔を僕の顔に、カタツムリより遅い速度で近づけてくる。


 差し出すように近づけてくる唇が、かすかにふるふると揺れていた。


 震えるそれに視線と意識が、僕の全てが向けられる。


 普段なら、自分のネチャネチャした唾液のことを考えるはずなのに。


 自身が汚く思えて、身を引こうとするはずなのに。


 いくさの顔に、僕の荒い呼吸が届いているとわかるはずなのに。


 わかる距離なのに。


 なぜか僕の体は、逃げようとしない。


 遮ろうとしない。


 体が金縛りにでもあったみたいに、動かない。


 …………もしかしたら、僕はそれを求めているのかもしれない。


 もう少し…………もう少しで触れる…………。


 触れられる…………。


 …………でも、そうはならなかった。


 ガラガラと扉が開く音がして、誰かが浴場に入ってきたからだ。


 入ってきたのは、髪もまつ毛も眉毛も純白の、ショートカットの身長の高い女の人。


 粉雪のような繊細な肌をしたその顔には、見覚えがあった。


 その人は、少し驚いたような顔したあと、ほんの少し目を伏せて一瞬体を隠そうとした。


 が、すぐに堂々とした無表情の顔に戻って、結局隠すことなく浴場へと入ってきた。


「あっ…………」


 その人の姿を見て冷静さを取り戻したのか、いくさが酷い自己嫌悪と後悔の混ざった声を出した。


 僕は、何も言わないまますぐに脱衣所へ戻ると、服を着て、早足でその場を後にした。


 その時の僕は、何も考えられなかった。


 あぁ、常穏とこやすって女の人だったんだ、ってことさえも。


 僕は早足で部屋の鍵を開けると、清潔に整えられた備え付けの二段ベッドの一段目に潜り込んで、備え付けの毛布を強く抱きしめた。


 欲望の火は、まだ僕の中でぐつぐつと音を立てて煮えたぎっていた。


 僕はその火が消えるまで、毛布を抱きしめて耐えた。


 お腹あたりに、艶やかな手の感覚が残ってる。


 右手にはあの、柔らかい感覚。


 そして触った後の、意思に反したいくさの痙攣の感覚。


 僕は目を瞑って毛布に顔を埋めた。


 大丈夫、きっと耐えられる。


 僕は、最後に聞いたいくさの声を思い出していた。


 酷く自らを責めるような、自らを穢らわしいと思うような後悔の声。


 僕は、頭と体を襲うあの感覚から耐え続けた。


 それは、いくさにこれ以上悲しい思いをしてほしくない。


 それだけの理由だった。






 ……………………どれだけたっただろうか。


 欲望の火は、もう随分と落ち着いた…………と思う。


 残陽のこりび隊長…………すみません…………夕飯作って待ってるって言ってくれたのに…………。


 ごめんねいくさ……僕……弱くって…………。


 ……帰ってきた正常な思考で……二人への謝罪を紡ぐ…………。


 …………眠い……………………。


 ……頭が重くて、脳みそがうまく働かない……。


 ……それに……まぶたもおもい…………。


 あぁ……もう限界……眠…………。


 散々欲望の火と戦った脳はついに限界を迎え、深い眠りに落ちていく。


 とりあえずのことは…………起きてから考えようと思う…………。


 そうじゃないと…………今は…………。


 まともな……考えが……………………。


 出ない……だろうから……………………。


 瞼が閉じて、ずっしりと体から完全に力が抜けていく。


 もう目覚めないのではないかと思うほどに。


 僕は、暗い夢の中へと落ちていった。

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