第9話「世界への招待状――海外進出プロジェクト始動」
十二月中旬。
M’s Create Entertainment本社。
社長室では、朝から緊張感のある空気が流れていた。
「韓国、台湾、アメリカの三社共同制作ですか……」
副マネージャーの高瀬奈々子が資料を見ながら驚きの声を上げる。
「そうみたい」
私――篠原瑞稀も資料を読み返す。
机の上に置かれているのは、海外大手映像制作会社から届いた正式オファーだった。
タイトルは――
『Starlight Promise』
韓国、台湾、日本、アメリカの若者たちが共同生活を送りながら夢を追う、青春群像劇。
世界同時配信予定。
しかも。
「M’s Create Entertainmentから三名出演を希望、か……」
「凄いですね」
奈々子が感心する。
「美紅さんの海外ドラマ出演実績と、最近の新人育成が評価されたみたいです」
「ありがたい話だね」
私は頷いた。
その時。
コンコン。
「失礼します」
美紅が社長室へ入ってきた。
「呼ばれた?」
「うん」
私はオファー資料を手渡した。
美紅は数ページ読んだ後、目を丸くする。
「凄い……」
「世界配信なんだ」
「そう」
「新人たちにとっては大きなチャンスになる」
美紅は静かに頷いた。
「でも、かなり大変そう」
「語学も必要になるしね」
◇◇◇
午後。
レッスンスタジオ。
新人たち十人が集められていた。
「今日は皆に大事なお知らせがあります」
私の言葉に、全員が姿勢を正す。
「海外共同制作ドラマへの出演オファーが来ました」
「えっ!?」
「海外!?」
「すごい!」
スタジオは一気に騒がしくなる。
私は笑いながら続けた。
「ただし、出演できるのは三人」
一瞬で静かになる。
「選考基準は演技力、語学力、そして適応力」
「来週、社内オーディションを行います」
新人たちは緊張した表情になった。
◇◇◇
その日のレッスン終了後。
新人たちは自主的に残っていた。
「英語……全然できない……」
綺星が頭を抱える。
「私も」
咲琉愛も苦笑する。
その横では、月詠音が英語教材を開いていた。
「月詠音ちゃん、英語得意なの?」
瑠璃寧が尋ねる。
「普通」
「普通じゃないよ!」
綺星が突っ込む。
「だってこの前の模試、全国上位だったじゃん!」
月詠音は少し困ったように笑う。
「でも韓国語はできない」
「私も!」
「一緒!」
新人たちは笑い合った。
◇◇◇
数日後。
社内オーディション当日。
審査員は、
社長・篠原瑞稀。
篠原美紅。
副マネージャー・高瀬奈々子。
そして特別審査員として、韓国制作会社プロデューサーのキム・ソンジュがオンラインで参加していた。
「では始めます」
最初は自己PR。
続いて英語による簡単な自己紹介。
そして演技審査。
皆、全力を尽くした。
しかし。
やはり頭一つ抜けていたのは東雲月詠音だった。
演技。
語学。
表現力。
どれも高水準だった。
さらに、神代瑠璃寧も持ち前の感情表現を見せる。
そして意外だったのは天ヶ瀬綺星だった。
語学は得意ではない。
だが。
誰とでも打ち解ける明るさとコミュニケーション能力が高く評価された。
◇◇◇
オーディション終了後。
会議室。
新人たちは結果を待っていた。
「発表します」
私が名前を読み上げる。
「東雲月詠音さん」
「はい」
「神代瑠璃寧さん」
「はい!」
「そして――」
「天ヶ瀬綺星さん」
「……え?」
綺星は目を丸くした。
「わ、私ですか?」
「おめでとう」
美紅が笑顔で拍手する。
「綺星ちゃんの明るさは、海外でもきっと武器になる」
綺星は涙ぐんでいた。
「ありがとうございます!」
他の新人たちも拍手を送る。
悔しい気持ちはある。
でも。
仲間の成功が嬉しかった。
それが今の彼女たちだった。
◇◇◇
数日後。
三人は初めて海外スタッフとのオンライン顔合わせを行った。
画面の向こうには、韓国、台湾、アメリカの若手俳優たちが映っている。
「Hello!」
「Nice to meet you!」
「안녕하세요!」
最初は緊張していた三人だったが、少しずつ笑顔が増えていく。
その様子を見ながら、美紅は微笑んだ。
「皆、本当に大きくなったね」
隣にいた私は頷く。
「うん」
「新人だった頃が、もう懐かしい」
少女たちの世界は、少しずつ広がっていく。
日本だけではない。
世界へ。
夢の舞台は、さらに大きくなろうとしていた。
そして――。
M’s Create Entertainment設立五周年を迎える日が、少しずつ近づいていた。
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