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第8話「涙の最終審査――夢を掴む者、届かなかった者」


「天ヶ瀬綺星さん、オーディション会場へお願いします」


スタッフの声が響く。


「は、はい!」


綺星は深呼吸を一つして立ち上がった。


「頑張って」


「綺星ちゃんらしくね」


瑠璃寧や月詠音たちが声を掛ける。


「うん!」


綺星は笑顔を作ると、オーディション会場へ向かった。


◇◇◇


広いスタジオ。


正面には監督、プロデューサー、脚本家、キャスティング担当者が並んでいる。


さらに――。


審査員席の一角には、主演女優である東雲巳波の姿もあった。


「よろしくお願いします!」


綺星は元気よく頭を下げる。


「では、課題シーンをお願いします」


テーマは、


『大切な親友と卒業の日に別れるシーン』


綺星は静かに台本を置いた。


そして。


「絶対また会おうね!」


「約束だから!」


涙を浮かべながらも、最後まで笑顔を見せる少女。


綺星らしい演技だった。


演技終了。


監督たちは静かに頷く。


「ありがとうございました」


綺星は緊張しながらも笑顔で退室した。


◇◇◇


次に呼ばれたのは神代瑠璃寧。


「よろしくお願いします」


瑠璃寧の演技は繊細だった。


表情。


声。


涙。


感情表現は新人とは思えないほどだった。


しかし。


演技後。


巳波は優しく質問した。


「神代さん」


「はい」


「あなたがこの役を演じるなら、一番大切にしたい感情は何ですか?」


瑠璃寧は少し考えた。


「……相手を大切に想う気持ちです」


巳波は微笑んだ。


「素敵な答えですね」


◇◇◇


東雲月詠音。


九重結羽乃。


白銀柚羽璃。


桜宮詩珠希。


天星院澪珠。


神楽坂心暖。


久遠月乃愛。


天羽咲琉愛。


新人たちは、それぞれ全力を出し切った。


特に月詠音の演技には会場全体が静まり返った。


演技終了後。


監督が思わず呟く。


「逸材だな……」


その言葉を聞いた綺星たちは、月詠音を心から祝福した。


しかし同時に。


ライバルとしての悔しさも感じていた。


◇◇◇


オーディション終了後。


M’s Create Entertainment本社。


新人たちは結果発表を待っていた。


誰も言葉を発しない。


緊張。


不安。


期待。


様々な感情が入り混じっていた。


その時。


会議室へ瑞稀と美紅が入ってくる。


瑞稀は静かに口を開いた。


「結果が出ました」


新人たちの表情が強張る。


「今回、映画出演が決まったのは三名です」


会議室に緊張が走る。


「東雲月詠音さん」


「はい……!」


「九重結羽乃さん」


「はい!」


「そして――」


瑞稀は一呼吸置いた。


「神代瑠璃寧さん」


「……はい!」


三人は驚きながら立ち上がった。


「おめでとう」


美紅が笑顔で拍手する。


綺星たちも拍手を送る。


だが。


綺星。


詩珠希。


柚羽璃。


心暖。


咲琉愛。


澪珠。


月乃愛。


七人は悔しそうだった。


綺星は俯いたまま動かなかった。


その時だった。


月詠音が綺星の前へ立つ。


「綺星ちゃん」


「……」


「私、綺星ちゃんの演技好きだよ」


綺星は顔を上げる。


「え?」


「だから、また一緒に頑張ろう」


綺星の目から涙が溢れた。


「……うん!」


瑠璃寧も隣へ座る。


「次は一緒に受かろう」


「うん……!」


新人たちは皆、涙を流していた。


悔し涙。


嬉し涙。


様々な涙だった。


その様子を見ながら、美紅は静かに言った。


「芸能界では、努力しても届かないことがある」


新人たちは顔を上げる。


「でも」


「努力した時間は絶対に無駄にならない」


「今日悔しかった人ほど、きっと強くなれる」


誰もが真剣に聞いていた。


そして。


瑞稀も続ける。


「今回選ばれなかった皆にも、新しい仕事の話が来ています」


「え?」


「来月から始まるドラマや雑誌の仕事」


「皆にチャンスはある」


その言葉に、七人の表情も少し明るくなった。


夢を掴む者。


届かなかった者。


しかし。


物語は終わらない。


少女たちは再び前を向く。


その先にある未来を信じて――。


そして数週間後。


M’s Create Entertainmentへ、一通の海外オファーが届く。


少女たちの世界は、さらに大きく広がろうとしていた――。



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