第6話「初恋の予感――揺れ始めた少女たちの心」
十一月下旬。
秋の終わりを感じさせる冷たい風が吹く頃。
M’s Create Entertainmentの新人女優たちは、レッスン、学校、仕事に追われる忙しい毎日を送っていた。
そんな中。
少女たちの心には、少しずつ新しい感情が芽生え始めていた。
それは――。
恋。
◇◇◇
私立桜ヶ丘学園高等学校。
昼休み。
「綺星!」
教室へ入ってきた男子生徒が、天ヶ瀬綺星へ声を掛ける。
「蒼太くん」
相手は同じクラスの橘蒼太。
サッカー部所属。
明るく、誰とでも分け隔てなく接する人気者だった。
「これ、文化祭の写真」
「ありがとう!」
「綺星、すごく楽しそうだったから」
綺星は写真を見る。
そこには笑顔の自分が写っていた。
「わぁ……」
「いる?」
「もちろん!」
その様子を見ていたクラスメイトたちが意味深な笑みを浮かべる。
「仲良いよね」
「付き合ってるの?」
「ち、違うって!」
慌てる綺星。
だが。
少しだけ胸が高鳴ったのも事実だった。
(私、どうしたんだろう……)
◇◇◇
一方。
白桜女子高等学校。
神代瑠璃寧は図書室にいた。
「神代さん」
声を掛けたのは、図書委員を一緒に務める二年生の**朝比奈悠斗**だった。
「この前貸してくれた本、面白かったよ」
「本当?」
「うん」
悠斗は穏やかに笑う。
「またおすすめ教えて」
「分かった」
二人は自然と会話を続ける。
本。
映画。
音楽。
共通の趣味が多い二人は、いつの間にか放課後を一緒に過ごすことが増えていた。
(朝比奈先輩と話すの、楽しいな)
瑠璃寧はそんな自分に気付き始めていた。
◇◇◇
都立青葉高校。
放課後。
「東雲さん」
佐野翔太が呼び止める。
「何?」
「駅前の新しいカフェ、知ってる?」
「知らない」
「今度、一緒に行かない?」
「……え?」
月詠音は固まった。
「嫌ならいいんだけど」
「……」
「友達として」
佐野は少し照れながら笑う。
月詠音はしばらく考えた。
「友達としてなら」
「本当?」
「うん」
佐野は嬉しそうだった。
その姿を見ながら、月詠音は自分の胸が少しだけ高鳴るのを感じていた。
◇◇◇
その日の夕方。
M’s Create Entertainment本社。
レッスン終了後。
いつものように高校生組が談笑していた。
「そういえば綺星ちゃん、最近よく笑ってるよね」
桜宮詩珠希が言う。
「そう?」
「うん」
「何かあった?」
綺星は慌てる。
「な、何もないよ!」
「怪しい」
瑠璃寧が珍しく微笑む。
「瑠璃寧ちゃんだって、図書室の先輩と仲良いじゃん」
「えっ!?」
今度は瑠璃寧が赤くなる。
「図書室の先輩?」
「へぇ~」
「どんな人?」
質問攻めにされる瑠璃寧。
その隣では、月詠音が静かにお茶を飲んでいた。
「月詠音ちゃんは?」
「……何が?」
「好きな人いるの?」
「いない」
即答だった。
しかし。
「即答する人ほど怪しいんだよね」
綺星が笑う。
「いない」
「本当に?」
「……」
月詠音は少しだけ視線を逸らした。
「いるんだ!」
「違う」
スタジオは笑いに包まれた。
◇◇◇
その様子を社長室から見ていた私と美紅。
「青春だね」
美紅が微笑む。
「そうだね」
私はコーヒーを飲む。
「でも、皆まだ十代だし」
「うん」
「恋愛も経験の一つだと思う」
美紅は静かに頷いた。
「誰かを好きになる気持ちは、演技にも繋がるから」
私は少し笑う。
「ただ、悠真みたいなことだけはしないでほしい」
「またそれ?」
「だって、本当にびっくりしたんだから」
美紅は楽しそうに笑った。
「大丈夫よ」
「皆、ちゃんとした子たちだから」
「それならいいけど」
◇◇◇
数週間後。
少女たちは、それぞれの学校生活を送りながらも、夢へ向かって走り続けていた。
恋。
友情。
夢。
どれも大切。
だからこそ悩み、迷う。
それが青春だった。
そして――。
そんな少女たちに、人生を変えるかもしれない大きな知らせが届く。
「大型映画オーディション開催」
全国から数千人が集まる、日本最大級の映画オーディション。
新人たちは、新たな夢へ向かって歩き始めるのだった。
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