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第5話「恋愛禁止!?――社長・瑞希の答え」


「社長!」


ある日の午後。


M’s Create Entertainment本社・レッスンスタジオ。


レッスン終了後、片付けをしていた新人たちの中から、神楽坂心暖が恐る恐る手を挙げた。


「ん?」


私――篠原瑞希が振り返る。


「質問があるんですけど……」


「どうしたの?」


心暖は少しだけ頬を赤くした。


「事務所って……恋愛禁止なんですか?」


その瞬間だった。


「えっ!?」


「私も気になってた!」


「確かに!」


「聞いてみたい!」


新人たちが一斉にざわつき始める。


スタジオの隅で資料を確認していた美紅も思わず苦笑した。


「ついに来たわね、この質問」


私は小さくため息をついた。


「全員、座って」


新人たちは慌てて床に座る。


美紅も私の隣に腰を下ろした。


「まず結論から言うね」


私は十人を見渡す。


「M’s Create Entertainmentに、恋愛禁止というルールはありません」


「えっ?」


「本当ですか?」


予想外だったのか、全員が驚いた表情を浮かべる。


「ただし」


私は続けた。


「恋愛をするなら、自分の夢と相手を大切にすること」


「そして、仕事を疎かにしないこと」


「これは絶対条件」


新人たちは真剣な表情で頷いた。


すると、綺星が恐る恐る聞く。


「社長は、高校生の恋愛ってどう思いますか?」


私は少し考えた。


「恋愛自体は悪いことじゃない」


「でも、皆はまだ十代」


「今しかできない経験もたくさんある」


「学校生活、友達、仕事、家族との時間」


「まずは、その全部を大切にしてほしいかな」


その時だった。


私は隣に座る美紅をちらりと見る。


美紅は何かを察したのか、苦笑していた。


「あと――」


私は咳払いを一つした。


「うちの弟みたいにはならないように」


「え?」


新人たちが首を傾げる。


「交際0日婚とか、今の皆には早すぎるから」


一瞬。


スタジオが静まり返る。


次の瞬間。


「交際0日婚!?」


「本当にあるんですか!?」


「ドラマみたい!」


「えええっ!?」


新人たちは大騒ぎになった。


私は呆れながら隣を見る。


「ね?」


美紅は苦笑しながら頷いた。


「そうね」


「悠真くんと私は、かなり特殊な例だから」


「皆は真似しなくていいわ」


「いや、本当に」


私は真顔で言った。


「普通はちゃんと付き合って、お互いを知って、それから将来を考えなさい」


「社長、説得力ありますね……」


瑠璃寧が小さく呟く。


「そりゃそうでしょ」


私は肩を竦める。


「弟がいきなり『結婚します』って言って、相手が美紅だった時の私の気持ちを考えてみなさい」


「……」


「……」


新人たちは何も言えなくなった。


その隣で美紅だけが笑っていた。


「でも」


美紅が優しく口を開く。


「誰かを好きになること自体は、素敵なことだと思う」


新人たちは美紅を見る。


「恋愛も、人を好きになる気持ちも、演技の糧になることがあるから」


「ただし」


美紅も少し真剣な顔になる。


「仕事や夢を諦める恋愛はしないこと」


「そして、自分を大切にしてくれる人を選ぶこと」


十人全員が静かに頷いた。


「はい」


その時。


最年少の天羽咲琉愛が小さく手を挙げた。


「あの……」


「ん?」


「私は、今は女優さんになることを頑張ります!」


その言葉に、スタジオは笑いに包まれた。


「それが一番だね」


「うん」


「まずは夢!」


新人たちは顔を見合わせ、笑い合った。


夢。


友情。


そして、いつか訪れるかもしれない恋。


少女たちの青春は、まだ始まったばかりだった――。


そして数日後。


少女たちの中に、少しずつ新たな感情が芽生え始める。


それは――。


淡く、優しい、初恋の予感だった。  



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