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第5話(最終話)「ステージの向こうへ――それぞれの夢の始まり」


「いよいよ明日ですね」


イベント前日。


M’s Create Entertainment本社・大会議室。


秘書兼副マネージャーの高瀬奈々子が最終確認の資料を手に、私――篠原瑞稀へ声を掛けた。


「そうだね」


私は資料から顔を上げる。


明日。


ついに。


『M’s Create Entertainment 新人お披露目イベント』


が開催される。


会場は都内最大級のホール。


参加予定者は約二千名。


そのほとんどが、美紅のファンクラブ会員、そして事務所所属女優たちのファンだった。


「新人ちゃんたち、緊張してるみたいですよ」


奈々子が苦笑する。


「そりゃそうだよ」


私は笑った。


「初めてファンの前に立つんだから」


◇◇◇


その頃。


レッスンスタジオ。


新人十人は最後の合同練習を行っていた。


「もう一回、自己紹介から!」


指導するのは美紅だった。


「はい!」


十人は元気よく返事をする。


「私は天ヶ瀬綺星、十七歳です! 明るさだけは誰にも負けません!」


「神代瑠璃寧、十六歳です! 歌と演技でたくさんの人を笑顔にしたいです!」


「東雲月詠音、十七歳です。皆さんの心に残る女優を目指します」


一人ひとりがマイクを持つ。


最初に比べれば、表情は格段に良くなっていた。


しかし。


「緊張する……」


天羽咲琉愛が呟く。


「私も」


神楽坂心暖も頷いた。


すると。


「大丈夫だよ」


美紅が優しく言う。


「皆ならできる」


「でも……」


「失敗してもいい」


新人たちが顔を上げる。


「最初から完璧な人なんていない」


「大切なのは、皆が楽しむこと」


「そして、応援してくれる人へ感謝を伝えること」


その言葉に、十人は大きく頷いた。


◇◇◇


翌日。


午前九時。


都内大型ホール。


開場前にも関わらず、多くのファンが列を作っていた。


「今年の新人、楽しみだな」


「美紅さんも登壇するらしいよ」


「絶対可愛い子ばかりだよね」


会場の熱気は高まる一方だった。


楽屋。


新人たちは円陣を組んでいた。


「ここまで来たんだから、楽しもう!」


綺星が言う。


「うん!」


「頑張ろう!」


十人全員が手を重ねる。


「せーの!」


「頑張るぞー!」


その様子を、私は少し離れた場所から見ていた。


「社長」


隣に立った美紅が笑う。


「いい顔するようになったね」


「うん」


私は静かに頷く。


「本当に成長した」


◇◇◇


午後一時。


イベント開演。


司会は事務所所属の人気女優、如月紬希と白雪莉央が担当した。


「皆さん、本日はお越しいただきありがとうございます!」


大きな拍手。


そして。


ステージに、事務所所属女優五十名が順番に登場する。


皇燈璃。


神樂羽瑠。


月城詩音。


久遠琉唯。


雨宮星蘭。


桜庭乃愛。


藤宮結月。


そして最後に――。


篠原美紅。


「皆さん、こんにちは」


会場は大歓声に包まれた。


「美紅さーん!」


「おかえりー!」


「大好きー!」


美紅は笑顔で手を振る。


そして。


「今日は、私たちの大切な後輩たちを紹介します」


会場の照明が落ちる。


スポットライト。


静寂。


「M’s Create Entertainment新人女優、入場!」


音楽が流れる。


緊張した表情の十人がステージへ歩き出した。


天ヶ瀬綺星。


神代瑠璃寧。


東雲月詠音。


九重結羽乃。


天羽咲琉愛。


白銀柚羽璃。


桜宮詩珠希。


天星院澪珠。


神楽坂心暖。


久遠月乃愛。


大勢の観客。


眩しい照明。


数え切れないほどの視線。


しかし。


誰一人、下を向かなかった。


「初めまして!」


綺星がマイクを握る。


「天ヶ瀬綺星です!」


大きな拍手。


「応援よろしくお願いします!」


次々に自己紹介が続く。


途中、咲琉愛が少し言葉に詰まる場面もあった。


しかし。


会場から温かい拍手が送られる。


「頑張れー!」


「大丈夫だよ!」


その声を聞いた咲琉愛は、涙を浮かべながら最後まで話し切った。


イベント終了後。


楽屋。


「終わった……」


「緊張したぁ……」


新人たちは一斉に椅子へ座り込んだ。


だが、その表情は明るい。


「楽しかった!」


「うん!」


「またステージ立ちたい!」


皆、同じ気持ちだった。


その時。


コンコン。


ドアが開く。


入ってきたのは、事務所所属女優たちだった。


「お疲れ様」


「デビューおめでとう」


「これからよろしくね」


五十人の先輩女優たちが、新人たちを迎える。


新人たちは驚きながらも、一人ひとりへ頭を下げた。


その光景を見ながら、私は静かに思う。


夢を持つこと。


夢を追い続けること。


その道は決して平坦ではない。


苦しいことも。


辛いことも。


涙を流す日もあるだろう。


それでも。


この子たちなら、きっと大丈夫。


仲間がいる。


先輩がいる。


そして、支えてくれる人たちがいる。


「皆」


私は新人たちへ声を掛ける。


十人が顔を上げる。


「ようこそ、M’s Create Entertainmentへ」


「ここからが本当のスタートだよ」


「はい!」


元気な返事が響いた。


ステージの向こう側。


そこには、まだ見ぬ未来が待っている。


そして、新たな物語は、ここから始まるのだった――。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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