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第2話「再会の季節と、友の報告」


春の風が街を優しく吹き抜ける四月のある土曜日。


神谷家の朝は、いつものように賑やかだった。


「パパー! 今日のお出かけ、まだー?」


リビングを元気よく走り回る遥香に、悠真は苦笑する。


「まだ九時だぞ。集合は十一時だから、もう少し待ちなさい」


「えー!」


「はるちゃん、落ち着いて」


兄の大翔が妹をなだめる。


そんなふたりの様子を見ながら、美紅は笑みを浮かべていた。


「ふふっ。今日はみんなに会えるから楽しみなのね」


「だって、パパのお友達に会うの初めてだもん!」


今日は、悠真たち大学時代の仲間たちとの久しぶりの大規模な同窓会だった。


卒業してから数年。


仕事や結婚、転勤などでなかなか全員が揃うことはなかったが、今回は航が中心となって企画し、多くの仲間が集まることになったのである。


「そういえば、航から『大事な報告がある』って連絡来てたな」


悠真がスーツのジャケットを羽織りながら呟く。


「結婚じゃない?」


瑞稀がコーヒーを飲みながら言った。


「あり得るな」


「航さんもそろそろ三十前だしね」


美紅も頷く。


「パパのお友達って、みんな優しい人?」


大翔が尋ねる。


「優しいぞ。パパが大学で困ってた時、何度も助けてくれた大切な友達だからな」


「じゃあ、僕たちも仲良くする!」


その言葉に悠真は嬉しそうに笑った。


「よーし、そろそろ出発するか」


「はーい!」


こうして神谷家四人と瑞稀は、会場へ向かった。


◇◇◇


会場となったのは、大学近くの大型レストラン。


貸切となったホールには、すでに多くの懐かしい顔が集まっていた。


「悠真ー!」


最初に駆け寄ってきたのは、親友の航だった。


「久しぶりだな」


「お前、全然変わらねーな!」


「航こそ」


二人は笑いながら固く握手を交わす。


「うわ、本当に美紅さんだ……」


「相変わらず綺麗すぎる……」


「テレビのまんまだ……」


周囲の仲間たちがざわめく。


「皆さん、お久しぶりです」


美紅が笑顔で頭を下げると、会場の空気が一気に華やかになった。


「うわぁ……女神だ」


「悠真、お前本当にすげぇよ」


圭吾と憲剛が肩を叩く。


「久しぶり、悠真」


「一樹」


かつて美紅に想いを寄せていた一樹も、今では穏やかな表情を浮かべていた。


その隣には、三つ子の妹たちである千帆と叶恵もいた。


「大翔くんと遥香ちゃんだよね?」


「かわいい!」


「ママそっくり!」


千帆と叶恵はすぐに双子と打ち解け始めた。


さらに会場には、


朝倉茜、西園寺灯里、藤堂詩織、白河栞。


二宮圭介、秋月景、真田優、神崎勝。


石田健二、佐藤健太、高岡康二。


山本大輔、松本大佑、中村和也、黒崎蓮、如月冬夜。


小林祐太、森川悠馬、佐伯悠輔、藤原祐希。


桜井稚華、橘千佳、橘千歌。


長谷川菜穂、早見奈緒、一ノ瀬奈琴、一ノ瀬奈美。


宮本智乃、宮本智保。


藤崎夏帆、望月芙美。


久遠苑香、水原深青。


小川優香、小川優佳。


大学時代の仲間たちが次々と集まり、会場はあっという間に当時の雰囲気へと戻っていった。


「遥香ちゃん、こっちおいでー」


「大翔くん、ジュース飲む?」


茜や灯里、詩織、栞たちはすっかり双子に夢中になっていた。


「本当に悠真の子どもか?」


「美紅さんの遺伝子が強すぎるだろ」


和也と蓮が笑う。


「いや、目元は悠真だろ」


冬夜が冷静に分析すると、周囲から笑いが起こった。


「乾杯!」


航の音頭で同窓会が始まる。


懐かしい学生時代の話、就職してからの苦労話、恋愛話。


話題は尽きなかった。


「そういえば、大学時代、悠真っていつも美紅さんの雑誌見てたよな」


憲剛が笑う。


「懐かしいな」


「教室で『今月号買った?』って毎回聞いてたもんな」


圭吾も笑い出す。


「やめろよ……」


悠真が苦笑すると、美紅は隣で楽しそうに笑った。


「そんな頃から応援してくれてたんだね」


「まあ……そうだな」


「ふふっ、嬉しい」


しばらく談笑が続いた後、航がマイクを握った。


「今日はみんなに報告がある」


会場が静まり返る。


「俺、来月から大阪支社へ転勤することになった」


「えっ!」


「マジか!」


「しかも……」


航は少し照れながら隣にいた女性を紹介した。


「結婚します」


会場が大歓声に包まれた。


「おめでとう!」


「ついにか!」


「やったじゃん!」


悠真も立ち上がり、親友を強く抱きしめた。


「おめでとう」


「ありがとな」


続いて圭吾も立ち上がる。


「俺も報告」


「海外赴任が決まりました。シンガポールです」


「すげぇ!」


「エリートじゃん!」


さらに憲剛も。


「俺、教育関係の会社に転職した」


「お前ら、みんなすげぇな」


悠真はしみじみと呟いた。


学生時代。


同じ教室で笑い合っていた仲間たち。


それぞれが別々の道を歩みながらも、こうして再び集まれる。


その事実だけで胸が熱くなった。


「悠真」


航がグラスを持って近づいてくる。


「お前はどうだ?」


「俺?」


「仕事も家庭も順調そうだけど」


悠真は少し考えてから答えた。


「忙しいよ。でも、家族がいるから頑張れる」


「変わらないな、お前」


「そうか?」


「学生の頃からずっとそうだった。大事な人を全力で守るところ」


航は笑った。


その時だった。


「パパ!」


遥香が駆け寄ってくる。


「どうした?」


「おなかすいた!」


会場中が笑いに包まれる。


「お前、本当にパパなんだな」


圭吾が笑う。


「まあな」


悠真は遥香を抱き上げた。


「パパ、あれ食べたい!」


「じゃあ、一緒に取りに行くか」


「うん!」


その姿を見た優や勝、健二たちは口を揃えた。


「完全に良い父親だな」


「大学時代には想像できなかったわ」


その様子を見ていた美紅が優しく微笑む。


「悠真くん」


「ん?」


「みんな、それぞれ頑張ってるんだね」


「ああ」


「でも、変わらないものもある」


「そうだな」


友情。


家族。


支えてくれる人たち。


それらがあるからこそ、人は前を向いて歩いていける。


夜も更け、宴も終わりに近づく。


帰り際、航が言った。


「また集まろう」


「もちろん」


「今度は家族ぐるみで」


「約束だ」


仲間たちは笑顔で頷いた。


春の夜風が優しく吹く。


それぞれが選んだ進路。


それぞれが歩む人生。


けれど。


あの日、同じ教室で笑い合った仲間たちとの絆は、これからも変わることはない。


悠真は隣を歩く美紅の手をそっと握った。


「帰ろうか」


「うん」


その先には、かけがえのない家族が待っていた。 



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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