第6話「未来の光、わたしたちの選択」
「美紅さん、新ブランドのCM出演、ぜひお願いします」
その日、事務所の会議室で、広告代理店とクライアントの代表者が並ぶ席で、正式なオファーが告げられた。
「今回は“母でありながら輝き続ける女性”がテーマです。
子育て中のリアルな美しさを映したいんです」
瑞稀は隣に座る美紅を一瞥しながら、静かに尋ねた。
「……受ける? 断ってもいいよ。今はまだ子どもたち小さいし」
美紅は一瞬だけ迷ったが、やがてしっかりと前を見据え、頷いた。
「やってみたい。……ママになっても、私らしくいたいから」
◇
その頃、悠真の職場でも――
直属の部長・川嶋翔一のもとに、役員陣が集まりあるプロジェクトの話題で持ち切りだった。
「飲食部門の新ブランド立ち上げにあたって、イメージキャラクターを――」
そう話すのは副社長・八代直人。
「女性向けの商品ラインで、親しみやすさと華やかさを両立できる方が理想だな」と、専務の瀬戸健一。
そして常務・一ノ瀬遼太が言った。
「……実は、篠原美紅さん、どうだろう?」
一瞬、場が静まり、全員の視線が悠真に集まった。
「ご本人と連絡が取れるのは、神谷くん。
もちろん無理にとは言わない。ただ――今、一番この会社の“顔”として相応しい女性だと思う」
◇
その夜。
「ねぇ、悠真。私ね、久しぶりにお仕事復帰して、
CM撮影が決まったの。子どもたちも、もう少し大きくなってきたし」
悠真は驚いた表情を見せながらも、嬉しそうに笑った。
「……それ、奇遇だな。俺の会社でも、美紅さんの名前がCM候補に挙がってる。
飲食業界の新ブランドで、女性向け。社長も副社長も推してる」
美紅は驚きつつ、真剣な顔になる。
「……それって、夫婦で仕事の話、交わしてもいいってこと?」
「もちろん。俺は、君がやりたいなら全力で応援する」
瑞稀がリビングから顔を出してきた。
「ってことで、正式にマネージャーの私から一言――
どっちの会社にも“正式に”OK出します。
ただし、撮影中にイチャつくのは、現場が凍るからやめてね?」
ふたりは苦笑し、うなずいた。
◇
数週間後。
美紅がメインキャラクターを務めた新CMは、温かくもスタイリッシュな演出で話題に。
「子育てをしながらも輝く女性」として、多くの共感と憧れを集めていた。
撮影現場で、美紅は監督にこう言われた。
「君みたいな人が、きっと未来を明るくするんだよ」
そして、モニター越しに子どもたちの写真を眺めていた悠真は、つぶやいた。
「……君の光が、俺たち家族の未来を照らしてくれてる」
その言葉は、誰よりもそばにいた瑞稀の胸にも、温かく響いていた。
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