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第9話「守るべきもの、支える愛」



夜の静けさの中、ベビーベッドから小さな泣き声が聞こえてきた。


「……まただ」


時計は午前2時を回っていた。

悠真はベッドからすぐに立ち上がり、娘・遥香を抱き上げる。

隣では、美紅が息子・大翔のミルクを準備していた。


育児は甘くない。

特に、双子の育児は24時間体制のフルマラソンだった。


「……ごめんね、起こしちゃって」

「大丈夫。私、こういう時のために休んでるから」


そう微笑む美紅の目は、少しだけ赤く、眠気の色が滲んでいた。


それでも、彼女は弱音を吐かない。

モデルとしても、母としても――いや、何より「悠真の妻」としての覚悟があった。


──


朝。

悠真は仕事へ、美紅は撮影現場へ。


今日はそれぞれが別の場所で、別の仕事に向き合う日だった。


悠真の会社では、新ブランドの試作会議が行われていた。

直属の上司・川嶋翔一部長からは、企画書に対して的確なフィードバックを受ける。


「神谷、家庭と両立しながらこれだけやれるのはすごい。……けど、無理はするなよ?」


「はい。ありがとうございます」


だが、心のどこかで不安があった。


(……最近、ちゃんと“美紅”に寄り添えてるだろうか?)


──


一方、美紅は都内のハウススタジオでCMの追加撮影。


カメラの前では完璧な笑顔を見せるが、モニター裏に戻ると、

時折、目元を押さえたり、深く息をついている姿があった。


そこに、瑞稀が差し入れを持って現れた。


「……昨日、2時間睡眠だったんでしょ?メイクはごまかせても、体は正直だから」


「瑞稀お姉ちゃん……うん、ありがと。……でも、大丈夫。

悠真も頑張ってるから、私もちゃんとやらなきゃって」


その言葉に、瑞稀は一瞬だけ言葉を失い、

それからそっと彼女の頭を撫でた。


「……あんた、ほんとに強くなったよ。

私が最初に見た“あの美紅”とは、まるで別人みたい」


──


夜。

ようやく帰宅した悠真は、眠った双子を見つめながら、美紅の手を握った。


「なぁ、美紅。……無理しないでほしいんだ。

俺、家事とか育児、もっとちゃんと出来るようにするから」


「ありがとう。……でもね、私、無理してるつもりはないの。

ただ、“一緒にやっていきたい”って気持ちだけで、頑張れるんだよ」


2人は微笑み合い、そのままソファに座って、双子の寝息を聞いた。

窓の外では春の夜風が優しくカーテンを揺らしていた。


そして、美紅がそっと呟いた。


「これが“家族”なんだね。

守るべきものがあるって、すごく幸せなことだと思う」




最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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