第7話「祝福の海、4000人の喝采と夫婦の絆」
休日の朝、まだ子どもたちが眠る中で――
悠真は、美紅の肩に手を置いて言った。
「なぁ、美紅さん。今日、ちょっと来て欲しいところがあるんだ」
「……どこ?」
「会社で、俺たちの“結婚祝い飲み会”をやってくれることになって。午前と午後で2000人ずつ……合計4000人の社員が、抽選で選ばれてるんだ」
美紅は目を丸くした。
「……え? 4000人? わたし、芸能活動じゃなくて、ただの“奥さん”なのに……」
悠真は笑って答えた。
「違うよ。『神谷悠真の奥さん』じゃなくて、“篠原美紅さん”として、社員みんなが祝いたがってるんだよ。CMの影響も大きくてさ……社内でも“理想の夫婦”って声がすごいんだ」
美紅は照れながらも、うなずいた。
「……うん。じゃあ、ちょっとだけおめかしして行こうかな」
──
大会議室は、午前の部開始30分前から社員の列で埋め尽くされていた。
広い会場にはステージが組まれ、ドリンクや軽食が並ぶ。社内報道チームのカメラも設置されており、場内の巨大スクリーンには「神谷悠真さん & 篠原美紅さん ご結婚おめでとう会」の文字。
午前の部、2000人が一斉に拍手で迎えたその瞬間――
悠真と美紅が会場に姿を現した。
「うわ、本当に美紅さんだ……」
「テレビより綺麗……!」
「神谷くん、ずるいって!」
「おめでとうございます!!」
割れんばかりの祝福の声。
そして――会場内に設けられた特設テーブルへと進む二人の前に、役員陣が次々と現れる。
⸻
登場する役員たち
•社長:三條 恒彦
「今日はご多忙の中、本当にありがとう。君たちのCMは、我が社の顔だ。ぜひ末永く幸せに」
•副社長:八代 直人
「この場で“羨ましい”って言っちゃダメかな? ……美紅さん、悠真くん、ありがとうね」
•直属の部長:川嶋 翔一
「……一社員としてでなく、一人の男として君を尊敬するよ、神谷。君たちは誇りだ」
•専務:瀬戸 健一
「ウチの新ブランドのイメージとして、これほど心強い二人はいない。家族の絆を、表現してくれ」
•常務:一ノ瀬 遼太
「美紅さん、改めて……悠真をよろしくお願いします。うちの“期待の星”なんで」
•開発部長:原口 拓海
「CM撮影の現場でも話題でした。神谷、君の真面目さと柔らかさ、美紅さんと合ってるよ」
•企画部長:秋山 悠生
「夫婦の企画、まだまだ展開する予定です。今後も二人に力を貸してほしい」
⸻
美紅は一人ひとりに丁寧に挨拶し、にこやかに答える。瑞稀は控えでサポートに回りながら、場を見守っていた。
社員たちは次々とふたりのもとへ来て、
「奥さんと、初めて会えて嬉しいです!」
「美紅さん、CM見ました!私の子どもも大好きです」
「悠真さん、育児どうですか?」
「パパなのにこの爽やかさ……見習います!」
握手、会話、感謝、笑顔――
そのすべてが、この日、この空間を「祝福」という言葉で満たしていた。
午後の部が始まる頃、瑞稀が静かに2人に伝える。
「……これからが、きっと本番だよ。結婚も、育児も、仕事も。……でもさ、見てると、あんたたちなら乗り越えられる気がする」
悠真も、美紅も、同時に笑ってうなずいた。
「ありがとう、瑞稀姉さん。……俺たち、頑張るよ」
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