第2話「再始動のカメラ前、母としての決意」
篠原美紅、復帰。
その言葉が事務所の社内LINEに静かに流れたとき――スタッフたちは驚きと同時に、少し誇らしげに頷いた。
「……ついに、美紅さんが戻ってくるんだ」
CM撮影の準備は静かに、しかし着実に進められていた。
◇
ある春の朝。
瑞稀はキャリーバッグに衣装を詰め、美紅の横で軽くストレッチをしていた。
「今日はあんたが“主役”なんだからね。
産後初めての現場。だけど、あんたならできるよ」
「……ありがとう、瑞稀お姉さん。
久しぶりだから、少し緊張してるけど……子どもたちのためにも、頑張りたいの」
寝室では、双子の大翔と遥香がベビーベッドで微睡んでいる。
その寝顔を何度も見返してから、美紅はようやく自宅を後にした。
◇
撮影スタジオでは、悠真が先に到着していた。
今日は、会社の一社員としてではなく――「夫」として、美紅の背中を支えるために。
「神谷さん、今日は旦那さんなんですね」とスタッフの一人が笑いかける。
「……ええ。少しだけお邪魔してます」
その声に、現場は温かく和やかな空気が流れた。
やがて、美紅が到着。
ライトに照らされるその姿は、モデルでも女優でもない。
母となったひとりの女性の、まっすぐで凛とした美しさだった。
「よろしくお願いします」と深く頭を下げると、スタッフたちから自然と拍手が起きた。
◇
CMのテーマは「家庭で楽しむ外食体験」。
キッチンで料理を運び、笑顔で食卓に並ぶ――
たった30秒の映像のために、何度もカメラの前に立つ。
途中、ふとセリフを噛んでしまった美紅は、自分の腕を見て小さく呟いた。
「……ママになったって、私、まだまだ頑張れる」
そのひと言を聞いていた悠真は、モニターの横で深く頷いた。
「……美紅さん、やっぱりあなたはすごいよ」
撮影が終わったあと、瑞稀がタオルとドリンクを差し出した。
「お疲れ、美紅。久しぶりにしては、十分すぎるくらいの出来よ。
ただ、また明日も現場あるからね?体力配分はしっかり考えて」
「うん、分かってる。……でも、楽しかった。
何より、子どもたちに“かっこいいママ”の姿、見せたいから」
◇
その夜――
自宅のリビングで、美紅は大翔と遥香を左右に抱えながら、悠真の肩に頭を預けた。
「今日は……ちゃんとできてた?」
「うん、完璧だった。スタッフさんみんな、褒めてたよ。
“母親になっても、まぶしいくらいの輝き”だって」
美紅は小さく笑った。
「……じゃあ、明日も頑張らなきゃね。
この子たちにとって、世界一のママになるために」
その声に、瑞稀がキッチンから「世界一の嫁でもあってね〜!」と茶々を入れて、
家の中はいつものように、あたたかな笑いで包まれた。
それは、“母”として、“妻”として、そして“芸能人”として――
美紅の新しい人生が、静かに、でも確かに動き始めた瞬間だった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




