第1話「会議室の指名と、マネージャーへの相談」
今から… 【育児中心・芸能活動再開編】です。
春の終わり、会社の昼休み。
悠真は突然、総務部の同僚からこう声をかけられた。
「神谷くん、今すぐ“会議室A”に来てくれって。社長が直々に呼んでる」
驚きながらも指示に従い、会議室のドアを開けると――
そこには社長、副社長、専務、常務、そして取締役の5人。
さらに直属の課長や部長ら、合計10人の幹部がずらりと並んでいた。
「えっ……俺、何かミスしましたか……?」
「いや、そうじゃない。むしろ逆だよ」
社長が微笑みながら言った。
「神谷くん、君の奥さんって、あの“篠原美紅”さんだよね?」
「……はい、一応……」
「我が社の新しい飲食ブランドのCMキャラクターに、ぜひ彼女を起用したい。
もちろん、家庭のこともあるだろうし、まずは奥さんのマネージャーさんに相談してくれて構わない。どうだろう?」
悠真は少し戸惑いながらも答える。
「……分かりました。
彼女のマネージャーでもある“姉”に、まずは確認してみます」
◇
その夜――
神谷家のリビング。
双子の赤ちゃん、大翔と遥香がスヤスヤと眠っている中、悠真は瑞稀に事情を説明していた。
「……なるほど。つまり、あんたの会社のCMに美紅を出したいってことね」
「うん。でも……育児中だし、まだ復帰のタイミングも話してなかったから」
瑞稀は少し考えてから答える。
「美紅自身も、そろそろ何か“現場に戻りたい”って言ってたし、
まずは家庭の都合と美紅の体調次第だけど、CM1本くらいなら復帰の足掛かりにいいかもね」
「ほんとに……いいの?」
「もちろん、マネージャーとしての判断もあるけど、
……一番大事なのは、奥さん自身の気持ち。ちゃんと、本人と話して」
「うん、ありがとう姉貴」
悠真はそう言って、美紅が子どもたちの寝顔を見つめている寝室へと向かった。
「ねぇ、美紅さん……少し話してもいい?」
美紅は優しい表情のまま、振り返った。
「なに?」
「……CM出演の話が、俺の会社から来たんだ」
「……え?」
驚いた美紅は、そっと立ち上がった。
「それって……私にってこと?」
「うん。詳細はこれからだけど……瑞稀姉さんは“前向きに考えてもいい”って。
でも、俺としては無理してほしくない」
美紅は少し黙ってから、微笑んだ。
「……久しぶりに、ステージじゃないけど、“表舞台”に戻れるのかなって、少しワクワクしてる。
でも、まずは子どもたちと、悠真くんと……家族とちゃんと相談しながら、少しずつやってみたい」
悠真は彼女の手を握り、ゆっくりと頷いた。
「うん。なら、俺が……いちばん近くで支えるよ」
その夜、再始動に向けての小さな“第一歩”が、静かに動き出した――。
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