第五十章: 悲劇的なる見世物
アクラマサォン劇場での素晴らしい夜の後、第一王子フェルミン・デ・ディニスは、避けることのできない運命の刻を迎える。それは、高伯剌西爾王国の運命を永遠に変えてしまう出来事であった。
アウヴィドール通りのアクラマサォン劇場は、高伯剌西爾王国で最も美しい劇場である。
夜になると、そのネオクラシック様式の建築が、王家の旗の色である黄色、緑、青をよりいっそう際立たせる。
劇場は900人以上を収容でき、豪華なボックス席が何層にも重なり、天井に向かって円を描くように配置されている。
天井には、女神ミューズや芸術家たちを描いた、この上なく美しいフレスコ画が施されていた。
馬蹄形の舞台の上には、壮大なクリスタル・シャンデリアがきらめいていた。
しかし、第一王子フェルミン・デ・ディニスにとって、その劇場の中で、愛する人の演技ほど輝いているものはなかった。
「おぉ、なんと魅惑的な演技なのだろう」
最終幕の後、演出家と役者たちは熱狂する観客に向かって礼をした。
フェルミン・デ・ディニスは、手のひらが赤くなるまで拍手を送った。しかし、最も赤くなったのは、お気に入りの彼を見つめるその頬だった。
二人は、握手やサインを求めるファンたちの目を盗んで逃げ出した。そして、劇場の出口で二頭立ての辻馬車に乗り込んだ。
耳の少し遠い御者が、恋人たちをいつもの隠れ家へと運んでいく。フェルミンは愛する人の顔を両手で包み込み、言った。
「あんなに輝いている君は、見たことがない」
「星は、同じように輝くものの前でこそ、最も強く光るのです」
「よしてくれ! 私にとって、太陽のような存在は君のほうだ……」
石畳を削る馬のひづめの音が、馬車の中で若者たちが交わす愛撫の声をかき消した。
そこには純真さがあったが、同時に悪戯な色気もあった。王家の目から離れた場所で、フェルミンは自由だった。
彼はその自由を大いに満喫していた。
時折、船に乗り込み、退屈な儀式や鬱陶しい伝統で自分をこれほどまでに悩ませるあの島から逃げ出したいという衝動に駆られることがあった。
引力に引かれる天体のごとく、二人は古びた酒場へと降り立った。鍵はあり、欲望もあり、彼らに欠けているものは何もなかった。
中に入ると、前置きに時間を費やすことなく、すぐさま上階へと上がった。そして、扉に鍵をかけた。
ついに四方の壁に囲まれた空間に入り、そこでは天井だけが、耳元で囁かれる秘密を知っていた。
「おぉ、フェルミン!」
二つの身体がベッドの上に倒れ込んだ。一台のランプが明かりを投げかけている。それは小さな、しかし心地よい光だった。
「私と逃げてくれ!」
「何だって?」
その命令は、貴族の口から拒絶を許さぬ調子で放たれた。恋人は凝固した。そんなことは計画になかった。
フェルミンの絹のような手が、彼の胸元をなぞった。役者はその状況から抜け出さねばならなかった。彼は口づけで王子を黙らせた。
「これが見ものだな、高伯剌西爾王国、王家の未来の姿とは!」
皮肉な拍手とともに、その言葉が響いた。部屋の暗闇から、誰かが姿を現した。
プライバシーを侵されたことに恐怖した恋人たちは、身を守るように抱き合った。
その者は、コメディア・デラルテの仮面を被っていた。その衣装は貴族の気品を漂わせつつも、どこか大げさで芝居がかっていた。
何よりも二人を震え上がらせたのは、その者が腰の鞘に収めていた刀剣だった。
「誰だ……お前は誰だ? ここで何をしている?」
正気を取り戻した役者は立ち上がり、扉に向かって走ろうとした。
シャキーン! 瞬く間に剣が抜かれ、不審者はその刃を役者の喉元に突きつけた。
冷たい鋼鉄が彼の喉仏に触れる。傷口から一筋の血が流れ落ちた。
傷は浅かったが、恋人はまるで首を切り落とされたかのように大騒ぎした。
「頼む、殺さないでくれ! 誘ったのは彼なんだ!」
男は鼻水を垂らしながら、剣士の足元に崩れ落ちた。
フェルミン・デ・ディニスは、追い詰められた状態で、震える手でシーツを引っ張り上げた。
この恥ずべき状況に対する屈辱と、愛した者のあまりの卑怯さへの嫌悪感が入り混じっていた。
フェルミンは仮面の人物を睨みつけた。衣服、声、武器、どれ一つとして見覚えのあるものはなかった。
王子は最後の勇気を振り絞り、侵入者に問いかけた。
「義母上が差し向けたのか? あの悪女め、遅かれ早かれ自分の息子を優遇するつもりだったのだろう……」
「ルクレシア王妃の命令で来たのではありません、殿下」
「ならば何が望みだ? 金なら、奴らが払った額の倍をくれてやる」
「金には興味がない」
「では、何が目的だ?」
男は刃を翻し、再び鞘に収めた。そして絹のシャツの中に手を入れ、一振りの短剣を取り出した。
短剣は役者の方へと投げられ、彼は足を広げたまま床に尻餅をついた。
「命が惜しいようだな。取引をしないか?」
役者は涙を流し続けていた。そのあまりの弱々しさが、剣士を何よりも苛立たせた。
「王子を殺せば、生かしてやってもいい」
「おぉ、滅相もない! 王殺しの逆賊になってしまう!」
フェルミン・デ・ディニスは瞬きをした。拳でベッドを叩いた。
ベッドで悦楽の秘密を分かち合った男が、これほど無残に自分を裏切るなど信じられなかった。
「何をするつもりだ? そいつは人殺しだ、私たちは二人とも殺されるんだぞ、馬鹿者が!」
男は手の中の短剣を見つめた。恐怖で全身の骨が震えていた。
仮面の男を見た。その不気味な存在感は、いかに強力な魔法を使おうとも決して勝てないことを物語っていた。
彼は短剣を強く握りしめた。全身を痙攣させながら床から立ち上がった。
「そうだ、そいつを殺せ!」
しかし、役者は仮面の男には襲いかからなかった。第一王子の方へと向き直った。
王子の身体は牡蠣のように縮こまった。彼は叫び、命乞いをしたが、役者は愛する人の慈悲を求める声に耳を貸さなかった。
短剣は容赦なく肉体へと突き刺さった。貴族の命のすべてが、その傷口から流れ出していく。
少しずつ、枕も、シーツも、壁も、赤く染まっていった。
事を終えると、役者は獣のように咆哮し、床に倒れ込んだ。両腕から血を拭い去ろうとしながら、狂ったように高笑いした。
「見たか、お前の望み通りにしたぞ! 約束は守ってくれるんだろうな?」
「『あるいは』とは、不確かな副詞だ」
役者は逃げようとしたが、まるでブラックホールに呑み込まれる天体のように、仮面の男に捕らえられた。
⸎
王宮の召使いたちは恐怖に怯えていた。廊下で彫像のように立ち尽くしていた。
国王ドン・ペドロ3世がその報せを知った時、秩序は崩壊した。
王は狂乱し、衣服を引き裂き、剣を手に取って調度品を叩き壊し、使用人たちを切り刻もうとした。
誰もその怒りを鎮めることはできなかった。王を宥めるためには、ルクレシア王妃が王室のブドウ園への旅を取りやめて戻る必要があった。
彼女が、王が書簡を送る執務室の扉を開けると、そこには深い悲しみに錯乱した男の姿があった。
王妃の感情は複雑だった。彼女は、王に対して慎重に用いる合言葉を口にした。
「ヌノ・マノエル・アルフォンソ・デ・ディニス!」
一筋の理性が王の脳裏をよぎった。彼はきびすを返し、怒りに満ちた目で妻を凝視した。
手にはまだ剣が握られていた。侍女や家令たちは、ただの観客のように佇んでいた。
(あなた、見るに堪えない姿ですよ)
「何用だ、この毒蛇め。私の肉片をまた一切れ毟り取りに来たのか?」
「使用人たちの前で滅相なことをおっしゃるな、陛下」
人差し指を突き立て、ルクレシアはこの凄惨な光景の前でも平穏を保とうとした。
「あの子はまだあんなに若かった! 私の可愛い息子、哀れな我が子よ……」
王は剣を落とし、床に崩れ落ちて体を丸めた。王妃は扉を閉めた。
夫の頭を持ち上げ、自分の膝の上にのせた。若き日のノスタルジーを感じたが、そこには何の輝きもなかった。
彼女は老い、夫は長男の死によって魂を打ち砕かれていた。
「私の息子だ! 息子を返してくれ!」
ルクレシアは心の底から冷徹さをかき集めた。王の顔を両手で包み込み、言った。
「あなたにはまだ二人の息子がいます、我が王よ」
王は白目を剥き、むせび泣き、そして気を失った。その後に起こったことはすべて、運命の打撃のように素早かった。
⸎
王立魔法アカデミーのグラッコ学長とエリザンドラ副学長が、緊急の要請で王宮へと連れてこられた。
グラッコは古風な魔法使いで、緑色のカマニョの外套をまとい、ねじれた角の形に彫られた木製のパイプを咥えていた。
腰の低い広帽子のフェルト帽を被っていた。痩せており、肌は乾燥していた。
まるで数世紀の重みが関節にこびりついているかのように、魔法の杖に身を支えられて歩いていた。
大きく弛んだ耳を持つ頭は常にうなだれており、実際は違うものの、せむし男のような印象を与えていた。
すぼまった口元は、羊の毛のように密に生えた短い髭に覆い隠されていた。
「貴族どもが我ら魔法使いを急に呼び立てる時は、いつも忌々しい」
「仕方がありませんよ、昨夜あのようなことがあったのですから……」
エリザンドラは唇を噛んだ。グラッコの弟子であり後継者である彼女は、彼とは正反対だった。背の高い若き女性だった。
大きくて生き生きとした瞳は、常に警戒を怠らない印象を与えていた。
黒いロングスカートにVネックのブレザーという、アカデミーの制服を着用していた。
豊かな黒髪が肩に流れ落ちていた。どこを歩いても周囲の視線を集めるような容姿の持ち主だった。
「愛する我が君と長いお話をされるのが、嬉しくなさそうですね」
「そうではない、坐骨神経痛だ」
「坐骨神経痛?」
「そうだ。そこが痛む時はいつも、悪いことが起こる前兆なのだ……いや、さらに悪いことがな」
「おやおや! グラッコ様が予言者だったとは、今まで教えてくれませんでしたね」
「誇れるようなものではない」
二人は王宮の広間を通り抜け、大臣室へと向かった。
魔法使いの二人にとって意外なことに、そこには気難しい顧問官や大臣たちの姿はなかった。
会議に席を連ねていたのは、国王、第二王子、そして王立十字軍騎士団の総司令官であるエイトール将軍のみであった。
エリザンドラは騎士に視線を止めた。王国で最も多忙な戦士を、これほど間近で見るのは初めてだった。
身長は1メートル80センチ、短髪。筋肉は引き締まり、鋭い眼光を放っていた。
その角張った顔には、「霊的災害」との戦いで負った無数の傷跡が刻まれていた。
金色の装飾と緑色のバックルがあしらわれた甲冑が、彼の野性味あふれる風貌に、かろうじて高貴な気品を添えていた。
「何であれ、王はすでに決断を下されているようです、グラッコ様」
「差し出がましい口を利くな、エリザンドラくん」
扉の前に二人の魔法使いが立っているのに気づき、机に座っていた三人の男が立ち上がった。
王は頭に包帯を巻いていた。エリザンドラはそれが怪我ではなく、湿布による薬を塗布したものであることに気づいた。
君主の目は泣き腫らして腫れ上がっていた。席の傍らには杖が置かれていた。
「よく来てくれた」
「いつでもお仕えいたします、陛下」
王は席から立ち上がることなく、頷いて同意を示した。そして机の空いている二つの席を指さした。
魔法使い達が席に着いた。王を取り囲むように座るエイトール将軍と第二王子は、彼を支える柱のようだった。
「お前たち三人に、任務がある……」
パスカル・デ・ディニスは椅子に座り直した。父が他の者たちに下そうとしている任務から、自分が除外されているように感じていた。
「私の長男が死んだ」
「お悔やみ申し上げます、陛下」
「ご愁傷様でございます」
「感謝する、グラッコ様。ありがとう、エリザンドラさん」
「我が王国に不穏な何かが起こっている。そして、その影が私の息子に落ちたのだ」
王は言葉を切り、声を詰まらせた。全員が厳かな沈黙を守り、待った。
「私の息子は昨夜、暗殺された」
グラッコは三流ゴシップ紙の報道でそのニュースを知っていた。すべては情痴もつれの犯行であることを示していた。
第一王子は高貴な人生を歩み、しかるべき家柄の令嬢と結婚して王室の義務を果たす決意を固めていた。
その恋人であった傲慢な若き役者が、別れ話の後に彼を刺殺したのだと。
しかし、彼と副学長がここに呼ばれたということは、この凄惨な事件にはさらなる裏があるはずだった。
「その暗殺事件について、我々の知らされていない何かがあるのですか?」
「そうだ。ある魔女が、二人の遺体の上に警告を残していった」
「魔女ですって?!」
エリザンドラは、己の無作法に気づくことなく大声を上げていた。一斉に集まった視線に彼女は頬を赤らめ、口を閉ざした。
彼女は第二王子の口元に、かすかな微笑みが浮かび、そして消えるのを見逃さなかった。その事実を心に留める。
グラッコが咳払いをし、エイトール将軍は机の上にあったワインのボトルとグラスを掴むと、それを大魔導士の方へと押しやった。
「かたじけない、我が息子よ」
王は、その老人が震える手でグラスにワインを注ぎ、儀式のように厳かに飲み干すのを待った。
「エイトール将軍は、息子の暗殺に魔女が関与している可能性が高いと睨んでいる」
「陛下、差し出がましいことをお伺いしますが、魔女がそのようなことをして、一体何の得があるのですか?」
「それこそ、お前たち二人に協力して突き止めてほしいことなのだ。これは国家主権に関わる問題である」
グラッコは片方の眉を上げ、さらなる詳細を求めた。エイトール将軍が捜査で判明した事実を彼に告げる。
「フェルミン・デ・ディニスの恋人は、アントゥンブラ結社の者だった。」
情報を収集し、暗い野望を抱いて王太子を操るために送り込まれたスパイだったのだ。
エリザンドラは話を聞きながら、目を細めた。その物語は、あまりにも都合よく辻褄が合いすぎているように思えた。
「アントゥンブラ結社が我々を煩わせているのは事実ですが、そこまでの危険を冒すとは思えませぬな」
「暗殺者の遺品から秘密文書を押収しました。彼は紛れもないアントゥンブラの構成員でしたよ、グラッコ様」
「エイトール将軍、アントゥンブラ結社はそれほど素人じみた組織ではありません」
「いつかは彼らも尻尾を出します、エリザンドラさん」
「もし彼が重要な内通者だったのなら、なぜ第一王子を殺害したのですか?」
「王子に正体を見破られ、役者を当局に告発すると脅したのかもしれません」
「では、なぜ暗殺者はその直後に自害したのですか?」
「任務に失敗した場合、自死するように術をかけられていたと考えられます」
(ふむ……すべてが実によく手回しされていることだ、そうだろう?)
騎士である将軍は、宮廷が採用した捜査方針として、この暗殺事件を新たな魔女の存在と結びつけていることを明かした。
「若き魔女であり、混血でありながら絶大な力を持つ者。彼女は霊的災害を高度に操る術を有していた。」
彼女が通り過ぎる場所には、常に地方行政を揺るがす大問題が引き起こされていた。
グラッコは髭をひっかいた。胸中の動揺を隠すのは困難だった。彼はまた、あの坐骨神経痛のことを思い出した。
(忌々しい坐骨神経痛め!)
状況は最悪だった。霊的災害は十字軍騎士団の領分であり、魔女は異端審問官の領分のはずだった。
「その魔女の名は何という?」
「分かっておりません」
「ヤラシパとの関係は?」
「それも不明ですが、我々はその若き魔女こそがアントゥンブラ結社の首領であると考えています」
それを聞いたエリザンドラは目を見張った。第二王子に目をやると、彼は勝ち誇ったような沈黙を保っていた。
王は杖を手に取り、立ち上がると、その話を打ち切るように片手を挙げた。
「私は二つの国王令を執筆する」
王は、自らの王冠に忍び寄るその脅威に対抗するため、まず取るべき措置について説明した。
「グラッコ様、エリザンドラさん、そしてエイトール将軍。お前たち三人で『特別捜査委員会』を組織せよ」
魔女の居場所を突き止め次第、彼女を生け捕りにして連行せねばならない。もし抵抗し、逮捕令に従わない場合は、死体であっても構わない。
「そして第二に、私は王位を退き、我が息子、第二王子ノルベルト・ザカリー・パスカル・デ・ディニスに譲位する」
今度こそ、目を丸くして呆然と王を見つめたのは王子の方だった。彼は立ち上がり、机を両手で叩いた。
「そんなことはできません、父上」
エリザンドラは舌打ちをした。彼女は王から王子へ、そして首を振る王へと視線を往復させた。
「なぜできぬ? 私はお前の王であり、父なのだぞ」
「私がここに呼ばれたのは、てっきり特別捜査委員会の一員に加えていただけるからだと思っておりました」
「愚かなことを言うな。お前は今や王位継承者なのだ。王冠を危険に晒すような真似は絶対に許さん」
「フェルミン・デ・ディニスは私の兄です。私に仇を討たせてください!」
「王のおっしゃる通りです、第二王子。それはあまりにも危険すぎます」
グラッコは眉をひそめ、エリザンドラを凝視した。彼女のその態度は、いつもとはどこか違っていた。
彼女は極めてプロフェッショナルで、感情に流されない人間のはずだが、今は他人の領分に深く首を突っ込みすぎていた。
第二王子は動揺から立ち直った。全精力を集中させ、次の一言を絞り出した。
「よくも王家の問題に口を挟んでくれたな」
「貴方を保護し、復讐による軽率な行動を阻止しながらでは、事件の捜査は困難を極めます」
「私を保護する必要などない。私は十字軍騎士団に籍を置いているのだ」
「魔獣の牙にかかって死ぬのを免れるための、ステータスだけの名誉職だろう」
王はその言葉を、宣告のような重いトーンで放った。第二王子は顔が火照るのを感じた。
エリザンドラは同意の頷きをみせた。運が良ければ、王子はしかるべき場所である王座に留まってくれるだろう。
「お待ちください、陛下。恐れながら申し上げます……」
「言え、エイトール将軍」
「第二王子のおっしゃることにも、一理あるかもしれません」
エリザンドラは顔を歪めた。その鋭い眼光で将軍を射抜く。今すぐ彼が口を噤んでくれればいいのに、と願った。
「第二王子を王座の後ろに匿うのは安全ですが、それは同時に、我が方の弱さを示すことにもなりかねません」
王はその指摘に不満そうな表情を浮かべたが、彼の推論を先へと促した。
「敵がどれほど深く潜入しているか、知る術はありません」
「私を疑心暗鬼にさせるつもりか、将軍?」
「滅相もございません。殿下を宮殿に一人残すよりも、私やグラッコ様と共にいた方が、むしろ安全だと言っているのです」
王は再び椅子に腰を下ろした。机に肘をつき、顎の下に手を添えた。
まるで宇宙の神秘について瞑想しているかのようだった。会議の出席者たちを見渡し、ため息をついた。
(我が最高の騎士と、二人の大魔導士がボディガードか)
それは決して悪い話ではなかった。第二王子の協力を得る上でも、これが最善の選択肢かもしれない。
「グラッコ様とエリザンドラさんから、異議がなければな?」
「異議などございません!」
老魔導士は一礼した。議論の成り行きには不満だったが、その怒りは後で坐骨神経痛のせいにすることにした。
その一撃を受けたエリザンドラも、上司と同じように一礼し、第二王子が委員会に加わることを受け入れた。
ただし、国王令に第二王子の名が記載されることはない。彼がメンバーとして参加することは、誰も知る由もなかった。
グラッコも、そして何よりもエリザンドラも、なぜエイトールがこれほどまでにパスカル・デ・ディニスを庇ったのか、その真意を知ることはなかった。
そして将軍もまた、その王子が兄の暗殺に何らかの形で関与しているのではないかという己の不信感を、二人に明かすことは決してなかった。
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