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転生したら推しが私を嫌いな同級生でした〜完璧令嬢と呼ばれる私を前世の黒歴史で弄り倒してきます〜  作者: モチダ


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「おいお前、先刻何を言おうとした?」


カルロがおなじみの休養室改めクレメンティ家専用部屋にエリアナを押し込んで凄む。


移動中に指示を受けていたキースが氷嚢を手渡している。

なるほどエリアナの足首の捻挫が悪化していると言うのは本当らしい。

流石の目ざとさだよ、オカン黒川。何で本人が気付いてないのに分かるのさ。


あと、何言おうとしたのか、って本人に説明するの難しくない?あとちょっと恥ずかしい。

芸人さんがネタの説明をするくらい恥ずかしいんじゃないだろうか。知らんけど。

いや、言おうとしていた相手なんだから、難しいとか恥ずかしいとか言ってる場合じゃないんだけど。


「黒川にね、その、恨みを晴ら、うーん?復讐、うーん?ぎゃふんと言わされようと思って??そうそれで、黒川の言う通りだねって、黒川は正しいねって、黒川様々だわって、それで」


「御託はいい、先刻言おうとした、そのままを言ってみろ」


苛々を隠そうともしないカルロがエリアナを座らせて見下ろす。


足首を労る為とは言え、座らせておいて見下ろすって、何ていうか、あ、はい、カルロのイライラがマックスです。そのままを言うのね、そのまま。はいはい。


「私、カルロ様の仰る通り婚約を解消しようと思います⋯ふぐっ」


ふぐ、は言うつもりなかった。ふぐ、は。

そんなの完璧令嬢エリアナらしくない。

カルロに両頬を潰すように掴まれているのだ。


「おい、このタコスケに今の言葉を聞いたら、周りがどう受け取るか教えてやれ」


カルロがエリアナを睨んだままキースとジルダに言う。タコスケなのはあんたが頬を掴んでいるせいでしょうが。

あとなんか、えらそう。

なに?怒ってる?しかも、結構、怒ってる??

いやまあ、だから謝ろうとしたわけで。


あれ?そうだっけ?違うわ。怒ってるから謝ろうとしたんじゃなくて、そろそろいい加減黒川の恨みを晴らさせてあげて、エリアナからも解放させてあげて、スッキリさっぱりフィオリーナの所にいって幸せに⋯


「恐れながら、「カルロ様がクラウディオ殿下とエリアナ様の婚約関係に横恋慕して、エリアナ様がそれを受け入れた」様に聞こえます」


心ここにあらずと言った風のエリアナの意識が戻ってくるのを待ってくれていたのだろうが、どうやらカルロの圧に我慢しきれなくなったらしいキースの遠慮がちな声がエリアナの耳に届いた。

しかし届いたのは耳までだ。頭に届くまでには更に時間が掛かる。


「⋯⋯⋯⋯⋯?もう一度、お願い」


「カルロ様が、クラウディオ殿下とエリアナ様の婚約関係に横恋慕をして、エリアナ様がそれを受け入れたと、その様に、聞いた者は思います」


ジルダがまるで子どもに言い聞かせるように、ゆっくりと、区切りながら、口にする。



「えええええ、何でそんな事に!??」


ようやく事態を理解したか、と言わんばかりにカルロが溜め息を吐く。


「て言うか、それ、ヤバくない?かなり、ヤバいよね???うわ、止めてくれてまじありがとう!!!」


「一体お前は何がしたいんだ」


カルロが氷嚢を当てながらエリアナの足首の様子を見る。


良かった。


エリアナは大丈夫と言ったのだが「カルロ卿に怒られても良いのか」と言い張るジルダの気持ちを汲んで、しぶしぶ保健室に行ったのだ。

巻き直された包帯が何よりの証拠なのだ。

どうだ、とくと見るがいいぞ。黒川。

黒川の目ざとさなら、巻き直された包帯に気付くだろう。

どうだ、ほれほれ。


カルロはエリアナの思惑通り、包帯を見て満足げな顔をすると、次に目線をずらしていき、エリアナの腕を凝視した。


「あっ⋯⋯」


しまった。


とっさに目をそらすが、目ざとい黒川には通用しない。

黙って「どうぞ」の手振りをする。

「どうぞ、見せてみろ」の意味だろう。

エリアナはそれに気付かないふりをする。

気付かないふりをして早口でまくし立てる。


「えー、と、何だっけ?そうそう、あたしが何をしたいか、だっけ?そう、だから、黒川の気が済むようにと思って、でもエリアナは完璧令嬢でいないといけないし、それで「ざまぁ」を見習って皆の前で「ごめんね、黒川が正しいよ、逆らわないから許してね、ぎゃふん」とね」


誤魔化されたわけではないだろうが、カルロが取り敢えず話を聞いてやろうと言う姿勢を見せる。


「それがなんで、婚約解消の話になるんだ?」


エリアナは前世でもしたことがない様なブリブリのぶりっ子なポーズでカルロを見る。


「テンパっちゃって、えへ」


「⋯⋯⋯⋯」


カルロが信じられないものを見たという風に目を見開いている。


「「「⋯⋯⋯⋯⋯」」」


キースは素知らぬ方向を向き、ジルダは目を伏せている。


「⋯⋯⋯⋯⋯ごめんて、お願いだから何か言って、分かってるって、自分でも似合わないことしたって思ってるって、あんなの前世含めてやったことないって」


エリアナは恥ずかしさのあまり両手で顔を覆う。


「へえ、じゃあハジメテだったんだ?」


カルロが意地悪な笑みを浮かべる。


「言い方よ」


「とにかく、婚約解消はまだするな」


「そうね、時期尚早ね。でもさ?黒川?カルロ?は本当にそれでいいの??あたしが婚約解消しちゃったらカルロがフィオリーナと結婚できなくなるかもよ?それは良いの??あ、それともフィオリーナがカルロを選ぶ勝算があるとか?」


流石は黒川だ、とエリアナが尊敬の眼差しをカルロに向けると、意外にカルロは怪訝そうな顔をしている。


「え?何で俺、フィオリーナと結婚しなきゃいけねえの?」


「⋯⋯⋯うん?カルロはフィオリーナが好きだよね?一途に見守って支えてきたよね?」


照れ隠しかな?好きな女の子のこと、イジられたくないお年頃かな?

前世で黒川の事ノンデリだと思ってたけど、あたしも人の事言えなかったわ。


エリアナが反省していると、カルロが溜め息交じりに答える。


「妹みたいなもんだな。妹と結婚したいとは思わないだろ」


「うーん、あたしは前世も今世も兄弟がいないから分かんないけどさ、小さい時に「お兄ちゃんと結婚する」って言ってた子がいたよ」


「大きくなったら?」


「「クソ兄貴うざい」って言ってた」


切ないね。

年頃の女の子だからうざいは仕方ないとしても、クソはダメだよね。年上は敬わないとね。


「そんなもんだ」


「そんなもんですか。⋯うん?でも、カルロとフィオリーナは兄妹じゃないよね?」


「⋯⋯ちっ、エリアナか?」


ハタノヒカリだけの頭脳なら誤魔化せたのに、と言いたげだとキースとジルダは思ったが口には出さない。それが有能と言うものだ。


「はい、エリアナです?」


カルロがエリアナを見る。

そしてエリアナもカルロを見ているのを確認してから、徐ろに口を開いた。


「俺が結婚したい女は他にいる。フィオリーナじゃない」


「え、まじ!?誰?誰??めっちゃ応援するよ!そしたら黒川もカルロもハッピーじゃんね!それが良いよ!誰?誰?教えて!!!」


半目になったカルロが腰を上げた。


「ぜってー教えねえ。あとその腕、打撲か何かだろうけど、甘く見ないで安静にしてろよ」




休養室を出て噴水に戻る途中。

カルロとキースの間でこんなやり取りが交わされた。


「聞いてたか?キース」


「何をでしょう?」


「アレさぁ、誰も見たことないらしいんだよな」


「へえ、そうなんですね。ところでアレって何ですか?」


「そうだよな、お前は見てないよな?俺だけしか。⋯ジルダは、まあ、女だから仕方ないよな」


「ええ、俺は何も見てません」


「だよな、もしお前が見てたら、お前の記憶をなくすか、××を切り取ってお前を男でなくすか、どっちにするか悩むところだった」


「へえ、カルロ様にそこまで言わせるなんて、誰の何か知りませんが、見なくて命拾いしました」


「本当にな」


キースはこの日の記憶をなるべく早く忘れようと心に決めた。



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