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転生したら推しが私を嫌いな同級生でした〜完璧令嬢と呼ばれる私を前世の黒歴史で弄り倒してきます〜  作者: モチダ


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「⋯で、なんだ?また見せてくる気か?」


エリアナが自身の胸に手を添えて前世の身体では味わえなかった弾力を楽しんでいると、カルロが白い目で見てくる。


「いやいや、だから見せませんって!」


エリアナが身体の前で腕を交差させてガードするのを、カルロはちらりと目線だけ動かして見る。


「じゃあ、なに?触らせてくる?」


「いやいや、触らせませんって!!て言うか別にあたし自分からは⋯、あー、まあ、いいや」


言葉を濁らせたエリアナにカルロが言葉を被せる。


「そうだな、お前は自分から触ることも触らせることもしなかったらしいな」


「そーだっけ?」


なぜ黒川がそれを知っているのか。

誰だよ、そんなこと黒川に話した奴。

心当たりしかいないわ、本当ろくでもないセフレ達だよ。

まー、ろくでもないのはお互い様だけど。


「ただ、好きな様に触らせてただけだな」


「そーだっけ?」


だから、なぜ黒川がそれを知っているのか。


「教室でベロチューかまされても平然としてただろ」


「そーだっけ?」


わー、そんな事あったかも。

そりゃあ黒川が知っててもおかしくないわ。

疑って悪かったよ、セフレ達。


「嫌がるでもなく、喜ぶでもなく、ただ、されるがままだったな」


「そーだっけ、って、なに⋯?意外とじっくり見てたんだね?黒川さんよ」


いや、何かもう、その時に指摘されるより、あとから指摘される方がキツくない?

若気の至りっていうかさー、まあ、今のエリアナとあの時のあたし、同い年なんだけど。

もう過去の話だからね。掘り返さないで。


「だからだぞ、あの先輩が俺に目つけた理由」


「そー⋯⋯⋯何の話?⋯あの先輩って?」


エリアナの表情が固まる。

固まったまま、カルロを見据える。

嫌な汗が流れるが、淑女で良かった。

動揺してるのをカルロにバレなくて済む。


「お前を監禁した先輩」


ヒュッ、と喉から聞こえた。気がした。

全身が心臓になったみたいだ。

だけど、大丈夫。カルロには気付かれていない。

普段なら憎たらしいはずの、いつもと変わらないカルロのすまし顔が今は嬉しい。



「⋯何、言われたの?何かされた?⋯やっぱりあたしのせいで黒川⋯」


カルロが氷嚢を当てる角度をかえる。

大分、氷が溶けてきたようだ。

別の氷嚢と交換するより保健室でちゃんと診てもらった方が良さそうだとジルダに話している。

他に負傷した所がないかのチェックの念を押すのも忘れない。


カルロは、黒川は、過保護だ。

それは分かったから話の続きを。

聞きたいけど、聞きたくないけど、聞かなくては。

ようやく話の途中だった事を思い出したかのように、カルロがエリアナを見る。


「言っとくけど、あいつはあの時死ななかったし、捕まりもしなかったぞ」



黒川が、何を言っているのか分からない。



あいつ。とは。多分、先輩だろう。

先輩死ななかったのか。

まあ、それは、良い。

あわよくば、くらいの気持ちだったから。


それより、捕まらなかった?誰が?先輩が?

なんで。どうして。何のために。それじゃああたしは。いやいやそれよりも。


それよりもどうして。黒川がそれをあたしに言うのか。


黒川は何を知っているの。

何をどこまで誰からどうして黒川がなんで


「お前の企みは何1つ成功しないって事だ」


エリアナは今日も見事に完璧令嬢として振る舞えているようだ。

動揺も困惑も悟られないよう淑女然としてうまく微笑むことが出来ているようだ。

だからこそ黒川は追い打ちを掛けるように畳み掛けてくるのだろう。


「今世は無駄な事はしないで、大人しくシナリオ通り婚約解消されとけ」


ほらね。

心が抉られるような言葉の数々は喜ぶべきなのだ。

エリアナが完璧令嬢を演じられていると言う、何よりの証拠なのだから。


それに

あたしのやること全てが無駄だなんて、そんなことは知ってる。

もうずっと昔から。

そんな事の繰り返しだったのだから。


ああ。それとも、これが黒川の復讐なのだろうか。

光凛のやる事は全て無駄なのだと思い知らせること。


それならば淑女然としていては、いけないのではないか。

傷ついた姿を見せることで黒川は気が晴れるのではないか。

だけど、それだとエリアナの完璧令嬢を守ることが出来ない。

それも含めて光凛を苦しめる計画なのだろうか。


黒川の為に完璧令嬢を諦めるか、エリアナの為に黒川の復讐に応える事を諦めるか。


黒川の復讐を他のものに変えてもらうことは出来ないだろうか。

傷ついてますよ、黒川の復讐は成功してますよ、と言葉で伝えるのはどうだろう。

表情には出せないけど。

ダメかな?聞いてみようかな。

黒川は結局それで許してくれるかも知れない。

黒川だからな。

ああ、だけどそれじゃあダメなんだ。


「お嬢様」


気が付くと午後の授業を終え、帰宅の時間になっていた。


「ジルダ、私は今日もエリアナでいられたかしら」


「今日もお嬢様は完璧でございましたよ」


ジルダはエリアナを安心させるように、しかし誇らしげに言う。


そうか、あたしは黒川の復讐よりもエリアナの矜持を選んだのか。


(幸せにするとか言っておいて)


胸が痛む。くるしい。

あたしが黒川に出来ることなんて、恨みを晴らさせてあげる事くらいなのに。

と言うことは。

やっぱりあたしは、黒川に復讐されなければいけないらしい。

他でもないあたしがそう望んでいる。

そうでないと自分が許せない。


「ごめんなさいジルダ、帰る前に寄りたい所が出来たの」



生徒会室に行くとカルロは席を外していて、正門近くの噴水にいると言う。

噴水に向かいながらエリアナは考えていた。


エリアナはカルロに謝ろうと思っている。

だが。出来れば完璧令嬢に相応しい謝り方をしたい。

泣き崩れて許しを請うとか、土下座をするとか。そう言うのは出来ない。

淑女らしく堂々と綺麗な謝罪だ。

心は込めるつもりだが、表情はそこまで崩せない。


と、ここで「ざまぁ」とやらを参考にするのはどうだろう。

正門近くなら下校中の生徒で溢れかえっているだろう。

衆人環視のもと、謝罪の言葉を述べるのだ。

少しは黒川の気が晴れるのではないか?


我ながら良いアイディアだ。

これで黒川の気が済んでエリアナに関わるのをやめてフィオリーナと幸せになってくれるなら何よりだ。


「カルロ様」


丁度考えがまとまったところで噴水の点検、調査を見守り指示を出しているカルロを見つけた。

忙しいカルロの時間を奪うわけにはいかない。

さっさと用件を終わらせて退散するに限る。


「カルロ様、私、⋯⋯⋯私、」



やっべー!!何言うか考えてなかった!!!



えっと、とりあえず、ごめんね、って?え?違う?傷付いたよ??黒川が正しいって?あたしが間違えてたよ、って??


「私⋯⋯」


え、えっと、黒川は何て?

あたしのやる事は無駄なんだって、今世では大人しくしてろって、それで


そうだ!婚約解消だ!!!


「私、カルロ様の」

「ああ、いけないエリアナ嬢。痛めた足首が悪化している。そんなに急ぎの用事だったのか。保健室に向かいながら聞くから少し辛抱してくれ」


カルロは、エリアナの言葉を遮るようにまくし立てると、ズカズカと近付いて来る。


「!!?????」


まただ!!また、お姫様だっこされてしまった!!


ちょっとこれ、恥ずかしいし、何より沢山の人の前でざまぁ(もどき)をされないと意味がないのだが。


「ジタバタするな、落っことすぞ」


カルロのいつになく低い声に、エリアナは大人しく運ばれる次第となった。



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