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転生したら推しが私を嫌いな同級生でした〜完璧令嬢と呼ばれる私を前世の黒歴史で弄り倒してきます〜  作者: モチダ


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エリアナが前世で観た映画の中でフィオリーナが聖女の能力に目覚めるシーン。

合同演習の採集に連れて行かれた先で、安全な場所のはずが中級の魔物に襲われるのだ。

そしてその手引きをしたのが、フィオリーナの継母と手を組んだ学院の教師という筋書き。


眼鏡ネズミ教師は薬草採集の担当だと言っていたが、それならばやはり1人で付き添うというのはおかしい。

魔物と鉢合わせするリスクがある以上、屈強な輩が1人は同行すべきだろう。

第一王子とその婚約者がいるチームなのだから尚更だ。

何よりクラウディオ自身が、エリアナとフィオリーナに討伐経験の多い教師を護衛に付けてくれると言っていたではないか。


(突然の配置替えが上手くいかなかったものだとばかり思っていたけれど⋯)


もしくは第一王子であるクラウディオの方に猛者が同行すると言って譲らず、薬草採集は安全なエリアだから腕力こそないが薬草の知識豊富な教師を同行させる事で折り合いをつけたのだろうと思っていた。

もっとも、それは出発直後に眼鏡ネズミ教師の言葉で違うと判明した訳だが。


それはそうとこの眼鏡ネズミ教師も、こんな貧弱そうな体型でよくもまあ魔物と対峙するリスクをとってまで継母と手を組む気になったものだ。


(余程条件が良かったとか?お金かな?会計ミスを装って横領するくらいだもんね、お金に困ってるのかな?)


そうなるとフランチェスカ家は学院の教師の個人的な事情を把握していた事になる。

しかもエリアナへの恨みがより強い人物を選んでいる。


(いや、逆か?)


エリアナへの恨みがより強いからこそ、継母の企みに簡単にのると踏んだ⋯?


いやいや、それにしても魔物だよ?

下手すれば死んじゃうよ?

そうなるとやっぱりアレだな。

人は見かけによらないってヤツだと良いな。

それか魔物を一発で殺せる最強アイテムを持ってるとか。


前世での殺虫スプレーみたいな?

あれの大型生物バージョン?

くまスプレーとかあったよね。ワニは?

て言うかクマやワニに効いても魔物に効くかは分かんないけどね。

大型どころか超超大型になるけどね。


でも、撃退スプレー、悪くないよね?

カルロに言ってみようか。

魔物を手懐けるとか言ってたしな。

でも手懐けた魔物に撃退スプレーを試すってどうなんだろうね。なんか、かわいそう。

でも野良の魔物で試すのってリスク高くない?


念の為「効くかは分かりませんよ」と言った上で試してもらう?

でも効かないだけならまだしも、魔物をより興奮させるだとか、より強くするだとか、そんな効果があったら大変だもんね。

⋯⋯⋯うん、むずかしそう。カルロに言うのやめた。


ま、あたしが思いつく事なんてカルロがとっくに考えついてるよね。



「眼鏡⋯コホン。⋯⋯⋯先生。どこまで進むお心算ですの?この辺りでも充分採集は出来そうですけれど」


森の入り口から進み始めて10分近く経っただろうか。

足場が悪く歩みが遅いので時間の割には然程奥まで進んでいないと思うが。

あまり奥まで行かれると助けを呼んでも時間が掛かってしまい、助かるものも助からなくなってしまう。


エリアナとフィオリーナが一歩一歩慎重に進むのを、眼鏡ネズミ教師は苛立ちを隠さない顔で振り返り確認する。


「まだです。この先にとっておきの場所があるのです。私が引率しているからには是非ともお2人には希少な薬草を採集して頂かなくては困りますよ」


うん。フィオリーナを中級魔物の所まで連れて行くための言い訳なのか本気なのか、ちょっと分からない。


さて、この先はどうやって中級の魔物と遭遇させるつもりなのか。

どこかバリケードを壊した上で魔物を呼び寄せる香か何かで中級の魔物を呼ぶつもりなのか。

それとも前もって捕らえて隔離しておいた魔物の場所まで連れていくつもりなのか。


前者であれば合同演習のエリアに中級の魔物が紛れ込む危険性はあるが、手段としては単純であとの面倒が少ない。

後者であれば、その一体(だと思いたい)さえ倒してしまえばとりあえずの問題は解決するが、中級の魔物を人知れず生け捕りして隔離する術を持っている人間がいる、それも第一王子の敵となりうる側に、と言うことになってしまう。とてもとても頭が痛い案件だ。



エリアナがフィオリーナを気遣いながら周りを注視して歩いていると、壊れて隠されたバリケードの横を通り過ぎるのを確認した。


決して安心して良い訳では無いが、まだマシな方だったらしい。

とは言え、この現状にどれだけの人間が気付いているのか。

中級(であれと切に願っている)の魔物が演習のエリアにわんさか出てくる前に、せめて隠されている壊れたバリケードを元の場所に戻しておきたい。

少しでも他の人間に気付いてもらえるヒントを残したい。


それには眼鏡ネズミ教師がジャマだ。

エリアナが気付いてることを悟られたくはないから、派手に動くことは出来ない。


流石に眼鏡ネズミ教師もバリケードを超えた先をズンズン進む気にはならないのか、幸いなことに壊れたバリケードの付近で眼鏡ネズミ教師がモタモタし始めた。

エリアナもそれに興じて、珍しい植物に気を取られているフリ、生茂った草花に足を取られているフリ、フィオリーナが心配で声を掛け様子を伺っているフリ⋯、いや、これはフリじゃない、等で時間稼ぎをしつつ、眼鏡ネズミ教師の動向を伺い隙を探していると、突然、眼鏡ネズミ教師がコソコソと不自然な動きを始めた。


(⋯⋯⋯?壊れたバリケードに近付いてる?)


それはまさにエリアナが今すぐにでもしたいと思っていた事。

眼鏡ネズミ教師は壊れて隠されていたバリケードを元の場所に戻したのだ。


これでハッキリした事が2つ。

眼鏡ネズミ教師は、壊れたバリケードの存在を知っていた。

眼鏡ネズミ教師は単独か、仲間がいたとしても、ひとまずこの付近にはいない。


(バリケードを元の場所に戻したのは、しらばっくれる為か?)


バリケードが壊れた上に隠されていたとなれば人為的である事は明らかだ。

ただ壊れていただけなら何とでも言い逃れが出来る。


(させないけどね)


とりあえずエリアナは持っている魔物よけを全て、壊れたバリケードの辺りにばら撒いておいた。

カルロの影響かかなり過保護になっていたクラウディオが相当強力な魔物よけを用意してくれた様なので、これで中級魔物が演習エリアに出ていくまでの多少の時間稼ぎになるだろう。と言うか、なってくれ。


(あとは誰か、いち早く壊れたバリケードに気付いて、中にあたし達がいる事に気付いてくれると良いんだけど⋯)


壊れたバリケードを見て、中に入った人間がいると判断してくれるかは半々、もしくはそれ以下かも知れない。

普通は壊れたバリケードの中に入らない。

異常を知らせに戻るのが定石だろう。


壊れたバリケードの内側に、狼煙をあげてくるべきだったか?

だけど、いざ魔物に対峙した時にも狼煙をあげるとして、数カ所に狼煙が上がっていたら助けが遅れるかも知れない。

それとも段階的に狼煙をあげて、近くまで来ておいてもらうと言う意味では、やはり壊れたバリケードの所で狼煙をあげてくるべきだったかも知れない。

だけどあたしが気付いていることを眼鏡ネズミ教師にバレるのは確実だ。



(何が正解で不正解か分かんないな⋯)


エリアナは溜め息を吐きたいのを堪えて空を仰ぐと、フィオリーナを伺った。

フィオリーナはエリアナと目が合うと困った様に微笑んでくれる。可愛い。いじらしい。可愛い。


うん。今すぐ逃げるのはどうだろう。

眼鏡ネズミ教師に気付かれない様にフィオリーナに簡単に説明と逃げる算段を⋯、いや、小説の事を知っているカルロには簡単な説明で済むが、フィオリーナを納得させるにはどれだけの情報と根拠が必要だろうか。


「危険が差し迫ってるから逃げよう」だけでは、可愛くて優しいフィオリーナはきっと「眼鏡ネズミ教師も一緒に」と言う話になり、眼鏡ネズミ教師にエリアナが気付いていることがバレてしまう。

その時に眼鏡ネズミ教師がどんな手段に出てくるか予測がつかない。


前にカルロと話した事だ。

目の前の悪事にひとまず目をつぶって、予測出来る事態に備える方が得策だとか何とか。何かちょっと違うけど大体こんな感じ。流石はカルロ。


(カルロとクラウディオの対決はどうなってるかなー)


水を差したくないから、中級魔物には是非ともカルロ達の方へ行かないで欲しい。

いや、それともあの2人なら嬉々として立ち向かうのだろうか。


(戦闘狂だもんね)


エリアナは知らず笑っていた。

不思議そうにフィオリーナが見ているのに気付いて、淑女の笑顔で返す。


クラウディオとカルロの対決に水を差すわけにはいかない。

あたしが何とかしなければ。


エリアナは深呼吸を1つすると、改めて感覚を研ぎ澄ませる。

魔物の所へは眼鏡ネズミ教師が導いてくれるはずだ。

あたしはただ付いて行くだけ。

眼鏡ネズミ教師の視線や仕草の変化を見逃さないように。

そして魔物の気配を探りながら。


少しだが緊張感が増した。気がする。

フィオリーナを後方へ誘導して距離を取らせる。

あくまでも眼鏡ネズミ教師に気付かれない程度に。

リュックから必要なものは取り出してある。



そして魔物が現れたその時⋯⋯


「な、何をする!!?」

「死にたくなければ、魔物に関するアイテムを全て寄越しなさい」




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