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「今日はコーヒーなんだね?おや、フィオリーナ嬢のは甘い香りがするけど、何だろう?」
「コーヒーにチョコレートソースとミルクが入っておりますのよ。今度クラウも試してみますか?」
「そうだね、是非頼むよ」
3人でのお茶会は、時々こうしてクラウディオも混ざる事が増えた。
今も一言もしゃべらないフィオリーナが緊張でヤバいことになっているが、これはもう慣れてもらうしかないので。頑張れ、フィオリーナ。
ちなみにカルロが一言もしゃべらないのは通常運転と言うことで。
それはそうとフィオリーナってば流石はヒロイン。
緊張した面持ちもこれはこれでとびきりキュートなんだよね。
何て言うか、死角がない。いついかなる時も1000%ラブリー。
そして4人集まると自然と、次第に近付いてきた合同演習が話題にのぼる。
「今回の私とカルロの対決は討伐数を競うことにしたんだ。とは言え他のチームの分も森に入ったすぐの付近に魔物を残しておかないといけないから、なるべく奥に進むことと、時間も一応制限することにしたよ」
もとい、対決の話題が。
(戦闘狂共め⋯)
でも、仕事中毒のクラウディオには丁度いい息抜きかも知れない。
17歳の男の子らしいクラウディオの笑顔を見ながら、まだ実現していないお疲れ様デートは観劇より狩猟に変更すべきかな、とエリアナはほくそ笑む。
合同演習が終われば少し余裕が出来るから、その時にお疲れ様デートに行けとカルロに言われたっけ。
(⋯⋯⋯ん?んんん???)
合同演習で魔物を討伐して、お疲れ様デートで狩猟に出かける。
これってアリなの?戦闘狂ならアリ??いや、これをアリとする重度の戦闘狂、ヤバくない???
いや、分かんないけど。
もしかしたら重度と思うのはあたしの感覚なだけで、この世界では案外普通の感覚だったりしたりしなかったり?
(あとでカルロに相談してみようかな。あれ?でもカルロも戦闘狂だっけ⋯?)
黒川はそんな感じなかったからカルロの騎士精神?
いやでも、あのブチ切れカルロの恐ろしさよ。
何より、時々見せる猛禽類の様な目。
(⋯やっぱり、ジルダに相談しよーっと)
合同演習が終わればお疲れ様デート。
お疲れ様デートの前に合同演習。
今回の合同演習は小説にはなかった。
フィオリーナの継母の陰謀は小説ではまだ数ヶ月は先で、たしか秋頃だったはず。
だから今回の合同演習ではフィオリーナに危険は及ばない、はず。
対決があるとは言え、野に咲く草花とフィオリーナ、自然と戯れるフィオリーナ、あたしは深緑溢れる自然とフィオリーナのダブルの癒し効果とセロトニンをただ堪能していればそれで良い、はず。
だけど、そうと分かっていても落ち着かない。
それでもなくとも、薬草の採集であれば森の入り口付近で済むのに、討伐となると森に足を踏み入れないといけない。
たったそれだけでリスクは桁違いだ。
出来ればフィオリーナを下級の魔物にすら近付けたくない。
ただでさえフィオリーナは怯えていると言うのに。
「チーム内で別行動は出来るのかしら?」
エリアナが誰とはなしに尋ねる。
「下級とは言え魔物に少人数で対峙するリスクを厭わないのであれば、効率的にノルマをこなす為の作戦の1つではあるね」
「そっ、それでは対決も掛かっていることですし、クラウとカルロ様には討伐に専念して頂くためにも、今回は男女で分かれて別行動に致しましょうか」
クラウディオが一般的な例として教えてくれるのを、エリアナはホッとして食い気味に提案する。
今回は別行動で、次回からは生徒会役員特典である演習免除を行使すれば、フィオリーナを危険から遠ざけることが出来るんじゃないかな?
「それなら、エリーとフィオリーナ嬢には魔物討伐経験の多い教師を護衛に頼んでおくよ」
「有難う、クラウ。とても心強いわ」
エリアナは心の底からクラウディオに感謝を述べた。
「どうにかフィオリーナの演習参加をやめさせられないか、考えてるんだろ?」
出た、エスパーカルロ
今日はカルロがフィオリーナの勉強を見ていたのだが、早々に授業を終え課題を渡して生徒会役員に戻ってきていた。
クラウディオは合同演習の件で教師陣と最終確認の打ち合わせや書類の作成、確認に出ている。
「お前は合同演習のチームから外れろ」
突然の申し出にエリアナが何も返せずにいると、カルロは気にした様子もなく続ける。
「休むか見学か。とにかくお前は不参加にしとけ。元々生徒会役員は演習免除だからな、問題はないだろ」
まさにエリアナが次回からフィオリーナに使おうと思っていた手だ。
でも意味が分からない、なぜあたしが不参加なのか。
危険な目に遭う可能性があるフィオリーナこそ不参加にさせるべきではないのか。
「ああ、なるほど?そーやって、あたしとフィオリーナの対決を不戦敗にさせるつもりなんでしょ?あたしのお陰でフィオリーナと結婚出来ました、とかなったら一生あたしに頭が上がらない?」
そんな訳はないと分かっているが、カルロの真意が分からないので思いつくまま適当に言ってみる。
はいそうですか、などと受け入れる訳には到底いかない相談だ。
「くだらねえ。俺とフィオリーナが結婚してどうすんだよ?聖女は王族と結婚するんだろ?」
「大丈夫、まかせて!その辺もちゃんと「お願い事」にうまく盛り込んでおくよ」
「例えば?具体的に」
おっと?意外にものってきた。
実は気になってた事だった??
「聖女の一妻多夫制を認めてもらう」
「俺、本気でそういうの無理」
嫌悪感を隠そうともしない軽蔑を含んだ目で見られた。全くもってカルロらしい。
⋯⋯⋯てことは、クラウディオはいけるのかな?
「じゃあ、将来の王太子の腹心であるカルロと結婚する事で聖女を国内に留めておく役割を果たせますよーってアピールする」
「余計なことすんな。そもそもフィオリーナも、俺とくっつけようとするのをやめてくれと言っていたが?」
そういやそうだった。
でもさ?今はフィオリーナもブチ切れカルロにビビって、思い出の中の優しくて頼りになるカルロにいさんとのギャップに引いてるだけだと思うのね。
もう少し時間を掛けて慣れていけば⋯やだもうカルロの目が怖い。
ああそうか、カルロは恋心は上書きタイプだったっけ。
昔の恋愛についてイジられるのを本気で嫌がるタイプね。
分かった。分かったからそんな暗殺者みたいな目で見ないで。
TVでしか見たことないけど。
「⋯⋯⋯ううう。じゃあ、本当には結婚しなくてもいいからお揃いのウエディングドレスとタキシード着てお姫様抱っこして?それを宮廷絵師に描いてもらうから」
ダメ元で泣き落としにかかる。
カルロが一瞬固まったあと怪訝そうな顔をする。
「⋯⋯⋯誰と、誰の?」
え。もしかして一考の余地あり?
「勿論カルロとフィオリーナだよ」
「そんなもの残してみろ。燃やすぞ」
本気のトーンが怖いでげす。おやびん。




