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「ああクラウディオ。楽しい楽しいお話だから、是非ともお前にも聞いてもらいたいな」
カルロが意地悪い笑顔でクラウディオに手招きをする。
「お前とエリアナ嬢の婚約に横槍を入れて見えるらしい俺に、お前と対決しろとけしかけて来たその口が今度は、エリアナ嬢が俺とフィオリーナ嬢をくっつけようと企んでいる様だからと、俺にエリアナ嬢を諦めろと執拗に絡んできている」
うーん。そうね。今のやり取りを説明すると、まさにその通りね。その通りなんだけど。
カルロ、誤解されてるし巻き込まれてるし、被害者みたいなもんだから怒るのも仕方ないんだけど。
何て言うか、とにかく、言い方ね。
こう言うのって、怒ってる人に説明させるとだめなんだね。
何て言うか、めちゃめちゃトゲトゲしい。こわい。
でも、こうやって聞くとフィオリーナって結構うっかりさん?そこも可愛いけど。
うーん、もしかしてこれも「強制力」ってやつのせいだったりして?
そうなると、フィオリーナも被害者だよね。
あとでカルロに言ってみよう。それで、あんまり怒らないであげてもらおう。
ほら、かわいそうにフィオリーナ。何となく居心地悪そう。それでもカルロから目を逸らさない。
えーすごくない?フィオリーナ、光の速さで成長してない?ヒロイン補正かな??すごいなーかっこいいなー
ま、元々2人は幼馴染だしね。元々仲良かった訳だしね。むしろ今のビビりまくってる状態がおかしい訳だしね。すぐ元の仲良しの2人に戻るよね。
「なるほど、それは愉快だね。⋯よし、フィオリーナ嬢。フィオリーナ嬢も対決をしよう」
エリアナの意識がかえってきたタイミングを狙ったのかそれとも偶々か、クラウディオが爽やかな笑顔で奇妙奇天烈な提案をする。
「⋯⋯⋯⋯ひぃっ」
やめてあげて。フィオリーナ震えちゃってるじゃん。
おかしいな、クラウディオは脳筋ではなかったはずだけど。戦闘狂脳?
「何を言っているの、クラウ。フィオリーナ様に対決だなんて」
エリアナがクラウディオを諭すと、とびきりの笑顔が返ってきた。
「キミもだよ、エリー。フィオリーナ嬢はエリーと対決するんだよ」
何を言ってるのかな?この戦闘狂脳は??
「どうして私がフィオリーナ様と対決をする話になるんです?」
意味がわからないと頭を抱えるエリアナに悪魔の囁きが聞こえる。
「エリーが勝ったら、カルロとフィオリーナ嬢に結婚してもらえば良い」
「(え。まじか)」
思わず素が出るのをエリアナは慌てて両手で口を押さえる。
え、なになに?カルロとフィオリーナが結婚??
それは、それこそはまさに前世の記憶が戻った時から、いや、前世で映画を観た時からのエリアナの願いではないか。
推しの幸せなツーショットをこの目で拝める!?妄想ではない、リアルな2人の姿を!??生で?まじで??
結婚式でお姫様抱っこしてはにかみ合う2人とか?赤ちゃんを抱っこして微笑み合う2人とか??2人にそっくりな子供たち(6人くらい)に囲まれて賑やかに幸せそうな2人とか???
(尊すぎる⋯!だめだ涙が出る!!鼻血も出る!!ゲロも出る⋯!!!)
両手で押さえられたエリアナの口から、隠しきれない喜びが変な笑い声やらうめき声やらになって漏れ出る。
やばいやばい。先刻からギリギリアウトだ。
奇跡的にスルーされてるけど。
改めて、フィオリーナが居る場所では完璧令嬢を徹底しないと。
でも今は無理⋯!!!
「フィオリーナ嬢が勝ったら、⋯⋯何が良い?カルロを従者にする?ペットにする?」
エリアナの奇行を誤魔化してくれる為ではないだろうが、良いタイミングでクラウディオがフィオリーナに尋ねる。
あと、その選択肢は何?マニアック過ぎる。
「ひっ、そんな恐ろしい事⋯いえ、その、⋯⋯エリアナ様に恋慕するのをやめて下さればそれで結構です」
「おや、そんな事で良いのかい?欲がないのだね、フィオリーナ嬢は」
あははと楽しそうだけど、クラウディオよく見て!!カルロが超絶不機嫌になってるから!眉間のしわが当社比10倍になってるから!!!
すっかり興奮が冷めたエリアナがフィオリーナに淑女然として微笑む。
「あの、フィオリーナ様?何度も申しておりますが、カルロ様は決して私にその様な想いを抱いてなどおりませんよ」
カルロがブチ切れる前に、あたしがフォローしないと⋯!
ああ、ほらカルロの眉間のしわがどんどん深くなってる!!
クラウディオ!?今頃そんなに慌てても遅いよ!!
キースもジルダも「だまって」じゃないよ!!あたしが黙ったら誰がフォローするのさ!??
「⋯いいえ。いいえエリアナ様。カルロ様は間違いなくエリアナ様の事をお慕いしています!」
フィオリーナ、お願い。それ以上はやめて。
ブチ切れカルロにビビってる同士、ここは一旦ひこう?うっかり勘違いフィオリーナは可愛いけど、あたしの前だけにして?
て言うか、否定したら倍で返ってくるのだめだって。もう怖くてカルロの方見れないって。
こうなったら秘技「否定も肯定もしない」作戦でいくしかない!!
「仮にそうだとして、それでも、フィオリーナ様の願いは別の事になさって?それから、もしカルロ様が私に特別な感情を抱いていたとしても、それはフィオリーナ様の与り知らぬところ、そうでしょう?」
あー⋯、焦るあまりキツい言い方になっちゃったかな。
フィオリーナは純粋に心配してくれただけなのに。
だけどこれ以上長引くとカルロが怖いんだよ。
「そ、そうなのですね。すみません、私、余計な事を⋯失礼しました。そうですね、他の願い、他の願い⋯」
よかった、フィオリーナに通じたみたいだ。
やっぱり言い方がキツかったのね、フィオリーナ、恐縮しちゃってる?ごめんて。まじで。
「俺とくっつけようとするのをやめて欲しい、それで良いんじゃないか?」
お、カルロの機嫌が直ったっぽい。
よかったよかった。
「あ、ああ、はい!そう言えばそうでした!!是非それで!!!」
フィオリーナも異論はなさそうだし、一件落着。平和がいちばん。
クラウディオ?何か笑いをこらえてる?
いや、そもそもクラウディオが、従者だペットだ言ったからいけないんじゃない?
最初から「くっつけようとするのをやめる」って言ってくれてれば、あんな爆発物処理班みたいな緊張感を味わうことはなかったんだからね。
「フィオリーナ、お前、死ぬ気で頑張れよ」
カルロがフィオリーナに圧をかけてる。
もしかしてこれはアレかな?
ツンデレの仲間のなにか。圧デレ。
それかアレ。好きな子をいじめるやつ。
カルロは早いとこ、この世界の男性の甘ったるいやつを身につけるべきだね。
あたしが練習相手らしいけど。
乗り気じゃなかったけど、フィオリーナの為に子持ちバツイチさんの為に、頑張る気になってきたよ。
「⋯⋯⋯お嬢様、よろしかったのですか?」
ジルダと2人になったタイミングで声を掛けられた。
何のことだろう?対決?淑女としてあるまじき?
「やはり、お気付きでなかったのですね。先程のお嬢様のお言葉」
ジルダが困ったような、呆れたように眉を下げる。
やめて、何か嫌な予感がする。
「簡単に申しますとお嬢様はフィオリーナ様に、カルロ卿の想いを認めた上で「貴女には関係のないことよ、口を慎みなさい」と言った様に聞こえました」
うん。これっぽっちも思ってません。




