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「合同演習で私達が4人でチームを組むと言うのは本当なの?」
フィオリーナに今日の分の勉強を教えるのを終え、生徒会の仕事を片付けに来たクラウディオにエリアナが尋ねた。
ちなみにフィオリーナはクラウディオから出された課題を隣室でこなしている。
「カルロから聞いたのかい?その通りだよ。だから例年の生徒会役員の演習免除と違って、今回は私とカルロの対決が可能となったんだよ」
ニコニコしているはずなのに、そこはかとない戦闘狂のオーラがひしひしと伝わってくる。
男のロマンとかそう言うやつだろうか。
それならばあたしには分かるはずもない。
どうぞお2人で楽しんでくださいな。
そう言えば、クラウディオもカルロもそれなりに鍛えているっぽい。
となると、ぶっちゃけ、どっちが強いのか気になるよね。
「あの、クラウ?つかぬことをお聞きしますが、その、クラウとカルロ様はどっちがその、強い⋯とか、そう言うことは聞いてもいいのでしょうか」
聞き始めてから、男の沽券に関わる問題だったかも知れないとか、何て聞いたら失礼にならないかとか考えて、変な聞き方をしてしまった。
完璧令嬢エリアナにあるまじき。
見切り発車よくない。あたしの悪いクセだ。反省。
「ふふ、エリーは私とカルロ、どちらに勝って欲しい?」
質問に質問で返すのズルいなーとか思ったけど。ちがうわ。
あたしは「どっちが強いか」聞いたのに、クラウディオは「どっちに勝って欲しいか」聞いてきた。
もしかして、カルロが勝って、カルロの願いを叶えてあげて欲しいと言えば、そうしてくれるのかな??
でも、カルロ的にはどうなんだろうな?
そもそも想い人と婚姻を結ぶのを王命で、という事自体抵抗がありそうなのに、その王命を賭けた対決すら情けをかけられたりしたら⋯、別の願いを言っちゃうとか、下手すれば王命の権利を放棄しちゃうかも。
「お互いに悔いのない対決が出来るのが何よりですわ」
その結果クラウディオが勝つにしろカルロが勝つにしろどちらでも⋯、あれ?
「そう言えば、クラウが勝ったら何をお願いするんですの?」
ふふ、と笑ったクラウディオが一瞬、猛禽類の様な目をエリアナに向けた。
そしてすぐいつものニコニコとした笑顔に戻ると少し茶化した風に答える。
「一生涯、私を見捨てる事なく支えて欲しい、とね」
おっと。
有能が過ぎるカルロを手放したくない気持ちは分かるが、それこそプロポーズのようですよ。
なんだろうね。この世界の表現は情熱的なのかな。
ま、仲良しなのはいいことだ。
「何とも熱烈なラブコールですのね、妬けてしまいますわ」
「おや、誰に妬けると言うのかな?」
クラウディオがいたずらっ子の様な笑顔を見せる。
これはアレかな?
カルロの不敬罪(冤罪)容疑を揶揄しているのかな?
意外とお茶目なところもある王子だ。
「勿論、カルロ様です。ご心配なさらずともお2人の仲に割って入れる者などおりはしませんわ」
エリアナが胸を張って自信満々に答えると、クラウディオが安心した様な残念な様な困った顔で笑う。
「ずっとそばに居て欲しいのはエリーで、カルロにはその助言と協力を願うのだとは思わないのかい?」
「そのような事、カルロ様に請わなくてもクラウが望むなら私はいくらでも誓いますわよ」
エリアナがくすくすと笑うとクラウディオは真面目な顔をしてエリアナを見る。
おっと。やめて。うっかりトキメいちゃう。
「それでは駄目なんだよ、エリー。私は忠誠を誓って欲しいのではなく、ちゃんと心が欲しいんだ」
「まあ、それは⋯」
王族、いや、「クラウディオ」らしくない。
なんて思うのは、小説の「クラウディオ」に引きずられすぎているのかも知れない。
そうだよね。クラウディオだって、「小説のキャラクター」なんかじゃなくて、ちゃんとここに生きている「人間」なんだもんね。
「本当に、その通りですわね。そうであれば、とてもとても素晴らしい事ですわ」
でも、大丈夫だよ。
きっとフィオリーナとなら、貴族めいた政略結婚の様な婚姻関係ではなく、愛情深い夫婦の関係を築いていける。
エリアナが優しく微笑むのを見て、クラウディオは寂しそうに笑う。
「⋯⋯キミは、エリーとはまた違った距離の置き方をするんだね?なるほど、カルロが苦労する訳だ」
クラウディオの言いたいことが分からず、エリアナは書類を持つ手を止めクラウディオを見る。
クラウディオはすっかりいつものニコニコ顔に戻り、穏やかな笑顔をエリアナに向けている。
クラウディオは、何をどこまで知っているのだろうか?
カルロは小説の事は話していないと言っていた。
だけど、クラウディオの周りにはヘロイーズもいる。
歴代の「記憶持ち」の中にあの小説のことを知る人間がいて、書き記すなり何なりして王族に残したとか、可能性なんて幾らでもある。
もしもクラウディオが小説の内容を知っていて、この先の展開、自分の未来を知って生きてきたとしたら、それはどんな気持ちだろう。
エリアナに転生したあたしも、この先の展開と自分の未来を知っている訳だけど、それとはまた全然違うわけで。
「まったく、キミは興味深いな。惜しくなってしまうからそんな風に見ないで」
いつの間に隣に立っていたのか、クラウディオがエリアナの頭を優しく撫でる。
「さあ、今日はもう帰ろう。これ以上はカルロに怒られてしまうからね」
たしかに。カルロは「遅くなる前に切り上げろ」と言っていた。
逆らいません。
フィオリーナに声を掛けてくる、と生徒会室を出るクラウディオの後ろ姿を見ながらエリアナは思わず笑いが溢れる。
明日も会えるのに、何なら毎日会ってるのに「惜しくなるから」だなんて。
流石、外国の男性は甘い。
日本人男性の愛情表現とは質も量も違うね。
TVでしか見たことないけど。
そう言えば。
カルロは光凛の感覚で言うところの外国人男性だけど。中身の黒川は日本人男性なわけで。
自然とあんな風に振る舞えるんだろうか?
それとも不承不承と言った風にこなしているんだろうか??
想像もつかないけど。
でも中身が光凛のエリアナは積極的にベタベタしようとは思わなくて。
これってつまり日本人女性の感覚だよね?
あれ?
そう言えば、外国人女性のあの積極的なセクシー衣装だったり、なんならビーチで半裸だったり、ところ構わずチュッチュいちゃいちゃするイメージは、この世界とは何かそぐわない??
でもこの世界の男性は、日本人男性が言わないような歯の浮くような言葉だったりエスコートだったりの、甘〜い感じはあるんだよね。
うーん、これは⋯。
同じ転生でも女より男の方が大変そうだね。
がんばれ黒川。
⋯⋯⋯あ。いい事を思いついたかも!
この世界の男性に負けないような、甘い感じを自然に出せる手伝いをしてあげれば良いんじゃないかな?
カルロの想い人も、好意を持っているのに素直になれないのはその所為なんじゃないかな!きっとそうだよ!!
練習相手になるとか?アドバイスするとか?
あー、でもあたし相手は嫌かな。
でもでも、見た目は完璧令嬢エリアナだし。超絶美人だし。
でもでも、うーん、⋯⋯やっぱり他の人?
フィオリーナ⋯は、だめかな。ビビられてるし。
ジルダとか?ヘロイーズとか??
これはもう、アレだね。
カルロに選んでもらうのが良いね。




