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転生したら推しが私を嫌いな同級生でした〜完璧令嬢と呼ばれる私を前世の黒歴史で弄り倒してきます〜  作者: モチダ


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「そろそろ戻ってきたか?」


カルロの声で完全に意識を引き戻されたエリアナが周りを見る。

クラウディオは従者とキースから何やら報告を受けており、いつの間にか食器が下げられていた様で、ジルダがお茶を淹れる香りが鼻をくすぐる。

光凛はもとよりエリアナもそこまで紅茶の種類に詳しくないが、落ち着く良い香りだ。


「失礼しました。ええと、そう確か、クラウが顔で笑って心で泣いていると言うお話でしたね」


エリアナが淑女の微笑みでカルロに向かうと、相も変わらず眉を顰めたカルロが溜め息を吐く。


「そんな話をした覚えはないが、そう思うならあの仕事バカを止めてやれ。あとその話し方をやめろ」


エリアナも貴族らしい話し方は疲れるが、そうは言っても今日はクラウディオがいるのだ。


見るとクラウディオは従者とキースに何やら指示を出している。

そう言えば先程からこの従者、部屋を出たり入ったりしている。

ついにはキースまで小間使いにされているらしい。


「クラウディオ、お前な⋯」


呆れたようにカルロがクラウディオを向くと、クラウディオの悪びれない爽やかな笑顔が返ってきた。


「嫌だなあ、私は言いつけ通り書類を持ち込んでいないよ?少し思い出した用事をケヴィンに頼んでいたらキースも手伝いたいと申し出てくれたんだ」


ケヴィンと言うのが昼食を同席したクラウディオの従者の名前らしい。

エリアナはカルロに向き合い、祈る様に胸の前で指を組む。


「カルロ様、いけません。クラウは仕事をしていないと落ち着かない重度の仕事中毒なのですわ。こうなった以上、クラウから仕事を奪っては禁断症状で暴れ出す可能性も、ふぐっ」


「甘やかすな、って昨日言ったよな?」


例によってエリアナの両頬を掴んだカルロに凄まれる。


「カルロ、あまりエリーをいじめないでやってくれ。私のために言ってくれたのだ」


ニコニコとエリアナを庇うクラウディオさえも無視して、カルロはエリアナの頬を掴んだ手を緩めては掴み、緩めては掴み、を繰り返す。


「い、い、か?完璧令嬢エリアナ嬢はクラウディオの食事も仕事時間も全て完璧に管理していたんだぞ。都合よくその部分を覚えてないふりして甘やかしてんじゃねえよ」


え。そうだったかな?そうだったかも??


光凛の記憶を思い出した頃のクラウディオは、ほとんど姿を見かけることがない程、忙しく動き回っていた。

その所為で、王子は仕事人間と言う印象が強くて。

日本人の血が騒いだのか何なのか、えらいなー頑張ってるなー応援したいなーとか思って。

仕事を手伝って負担を減らしてあげなくては、としか考えてなかった。


そうか。仕事を手伝うばかりが負担を減らす訳じゃないのか。

食事も仕事量も時間も管理して心身の疲労を軽減させる事も、ひいては仕事効率を上げる事に繋がり結果クラウディオの負担を減らす事に⋯⋯


「ちっ、わざわざ言わなくても良いのに。余計なことを⋯」


え。今の、王子の声だったよね?

え。今、王子、舌打ちした?


エリアナが思わずクラウディオを見ると、にこやかな笑顔を向けられた。

わあ。爽やかイケメン。


エリアナがクラウディオの笑顔に絆されていると、カルロがエリアナの両頬から手を離しておでこを軽く指でつついた。


「ちなみに、クラウディオも「記憶持ち」のことは知ってるからな」


え。どういう事?

でも確かに先刻から会話が所々おかしかった。

王子の舌打ちに驚いてそれどころじゃなかったけど。

エリアナが以前のエリアナと違うことを分かっていたかの様な。


「一介の侍女が知ってる事を王族が把握してない方がおかしいだろう。だからこいつの前で無理に貴族らしく振る舞わなくていい」


たしかに、その通りなのだが。

え。いやいや、違うよね?そう言う事じゃないよね??


カルロが呆れた顔を向けているのを、エリアナが詰め寄る。


「それでも、わざわざ私が()()だと言う必要などないでしょう?」


「いや、お前、自分の婚約者の洞察力を侮るなよ」


え。何それ?

クラウディオはとっくに気付いてたってこと??

なんで?いつから?どうして黙ってたの??


「クラウ、あなた⋯気付いて、らしたの?」


エリアナが驚いたやら恥ずかしいやら、涙目でクラウディオを睨むと、クラウディオはいつもに増して爽快感溢れる笑顔でエリアナを見る。


「ふふ、綺麗で高潔なエリーに、最近は可愛らしさが増したからね」


「え?かわ、⋯か、え?⋯え??」


え。やだ。どうしよう。可愛いって言われた!

先刻まで自分は確かに怒っていたはずなのだが。

こんなに自分が現金だとは思わなかった。


だって前世で普通に生きてて、爽やかイケメンのリアル王子に可愛いって言われること、なくない?

いやまあ、今世においては婚約者な訳だけれども。

それはそれ、これはこれ、よ。

嬉しいものは嬉しいよね。


白馬の王子様って女の子の憧れじゃん?

TVでしか見たことないけど。


「あれ?前世で言われたことないの?」


クラウディオが小首を傾げる。

そんな仕草も似合っている。王子ってスゴイ。


「ありますけどアレは、動物やキャラクターをかわいーって言うのとか?言う事聞いてえらいなーって言うのとか?だからこう、女の子扱い、の、可愛い⋯とは全然、違ってましたから」


エリアナが耐えきれず両手で顔を覆うと、いつの間に戻ってきたのかキースとジルダが眉を下げ、クラウディオが慈悲の目をカルロに向ける。

ちなみにケヴィンはそれらを眺めてニヤニヤしている。

カルロが気付かないふりをしながら、しかし不機嫌そうな顔をする。


「クラウディオのも似たようなもんだぞ」


「え。まじか」


カルロの一言によりエリアナは一瞬で現実に戻される。

目覚まし時計より強力だ。


わーそうか。そうだよね。

うん。でも。良いよ。嘘でも嬉しかったし。

いい夢を見させてもらったってことで。


いい夢といえば是非ともカルロ×フィオリーナを見たかったけど。

あんなにビビられてたら望み薄かな。

いやいや。でも、恋愛漫画とかドラマとか。最初は印象最悪から始まるものが多いし⋯って、


そうだ!思い出した!!


カルロってば、フィオリーナにめちゃめちゃビビられてんだった!!

確かに昨日のブチ切れカルロはまじで怖かった。

え。カルロ。

あんなたまらん可愛いフィオリーナに、あんな人殺しみたいな目を向けてないよね??

まさかだよね???

あれはまずい。本当にまずい。


あとフィオリーナと言えば、クラウディオともう会ってるんだよね??

全然話題に上らないから実感が沸かないんだけど。

よくよく考えると1回も会話に出てこないの、不自然じゃない?

婚約者のいる身で他の女の子に、とかそういう事かな??

優しさ?気遣い?あとほんの少しの後ろめたさとか?

浮気をするならバレずにして欲しいって言う子、割といたもんな。



「エリーの愛らしい百面相をまだまだ見ていたいけど、1つ良いかな?」


クラウディオが悪戯っ子の様な笑顔をエリアナに向ける。


え。うわ。もうどうしよう。恥ずかしい。

日本人の光凛がジタバタする。

そう言えば、海外ドラマとか甘々のベタベタだった気がする。

今!今こそ、カルロに両頬を掴んでほしい!!

そうしたら中和されて丁度いい気がする!!!


昨日のブチ切れカルロを思い出して気持ちを落ち着かせたエリアナが、クラウディオに向き直る。


「失礼しました。何でしょう?」


「今日の放課後、生徒会室に集まった時に会わせたい女生徒が居るんだ」


おや?


「それは⋯」


「フィオリーナ・フランチェスカ嬢だ」



おやおや??

優しさと気遣いと後ろめたさと⋯は、どこいった?




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