どんな子?
「あ、穂花……さん」
呼び捨てか、ちゃん付けか、さん付けか。
私の脳内を一瞬でかけまわる思考。
日々のモヤモヤの一部を吸い取っても、フィルターに吸収されずに残ってしまう不純物のような存在。
小さくて、細々としていて、一生誰にも話題にされないような──モヤモヤの種なのかな。
「千奈ちゃん、なんで『さん』付け?同じクラスだし、同い年だし、堅苦しいよー」
そう言った穂花……は私の反応を伺った。
「千奈」という人間の嫌なこと、嬉しいことを無意識のうちに探っている感じがした。きっと自覚はないけど、無自覚にやっていることの一つだと思う。
そして、それは穂花にとって普通のことなんだろうな。
「あの……昨日、ごめんなさい。仲良く…なりたくてっ」
穂花は、緊張のせいか語尾が変に上がる。
そんなに緊張しなくてもいいのに。私はただのモブキャラで、ただのクラスメイトなのに。
「そんなに謝らなくていいよ……穂花。………ありがとう、仲良くなりたいって言ってくれて」
呼び捨てすることを少し躊躇ってしまって、変な間ができてしまった。
まるで私が、「穂花と仲良くなりたくない」と思っているかのように。
あれ、でも、私は宵乃と繋がってるかもしれない人と仲良くなっていいの?
また嘘の情報で遊ばれるかもしれないのに?
そんな考えが浮かんでしまうと、急に心臓が騒がしく動く。
確かめないと、と強く思う。
「………昨日私に話しかけにきたときに、一緒にいた子って……どんな子?」
まずい、我ながら変な聞き方だ。
穂花は「え?」と聞き返す。
だが、すぐに
「あぁ、あの子か。ここだけの話、あたしあの子のことちょっと苦手で……」
と穂花はバツの悪そうな顔をしながら言った。
「苦手って……え?」
今は4月の後半。ゴールデンウィークももうすぐやってくる。
穂花は、4月に学校が始まってから、ずっとあの子と一緒にいた。勝手に2人は仲が良いものだと思っていた。
「うん、苦手…。なんか、話し方…というか、性格というか。他の子とトラブルとか起こしちゃってるのも聞いたし」
私があの子に対して思っていたことを言われ、なんとなく穂花から目を逸らしてしまう。
「あ、ごめん、こんな話……。だから、千奈ちゃんと仲良くなれたらなって思って」
「そっか」
私はぎゅっと唇をかむ。
そんなの今更言われても、関係を壊すことはできない。昨日と今日、こんな話をしてしまった以上、「仲良くなる」以外の選択肢なんてものは存在しない。
なんて、勝手に思っているだけなんだけど。




