そろそろ
「………美香ちゃん、ごめんなさい。勝手に距離取って、勝手に新しい友達まで作って……」
穂花は、しどろもどろになりながら言葉を紡ぐ。いや、そんなこと謝っても……と私はなんとも言えない気持ちになる。
「はぁ?うちにそんなこと言われても、そっちはうちと仲良くしたくないんでしょ?うちが気づいてないとでも思った?」
「ねぇ、ちょっとそんなこと言わないでよ!!」
2人の間には雷が落ちてきそうだった。バチバチ、ビリビリ。
そんな状況に耐えきれなくなり、私は咄嗟に声を出す。
ここはただの体育の授業なのに。
先生は男子達にボール投げの極意を教えていた。なぜ女子のところには来ない……?
でも、今先生が来てもこの場が混乱するだけか。関係ない子まで巻き込んじゃうかもしれないんだ。
「千奈、一応うちら初対面だよね?そんな知ったような口たたかないでよ」
美香は私を軽蔑的な目で見ている。怖い、けど今度はまた違う感情である「怒り」がふつふつとわいてくる。
「……美香、ちゃん」
「あ!」
穂花の心配そうな声を聞き、私はとある記憶を思い出す。
穂花と私が、はじめて話したときのことを。
「美香は、やっぱり私と穂花を近づけたくなかったんだ。そうでしょ、美香?」
「根拠のないこと言うなよ………!!」
美香は私の言葉に被せてくる。どれだけ焦っているのか、私には見当もつかないけど……。
額ににじむ汗が、全てを物語っている。
もう、美香のことを見るとこっちが恥ずかしくなってきてしまう。共感性羞恥だ。
すると、突然穂花が口を開く。
ゆっくり、ゆっくり。
この空気を噛み締めるように。
「……美香ちゃん、ごめんなさい。ずっと知らなかった、美香ちゃんのこと。ごめん、私何も知らないまま仲良くして……」
辺り一面が静かになった。
穂花のゆっくりとした喋り方、無音で静かに吹く風、苛立ったように腕を組んでいた美香。
全ての状況が上手く噛み合って、神シチュエーションを作る。
きっとドラマとかだったら、今は「山場」だ。
きっとSNSの反応も盛り上がってるんだろうな───。
いや、待てよ。
今「SNS」っていったな……?
SNS……周りの反応……周りの女子達の反応のことを忘れていた。
私達の考えだけが一人歩きしていた。
そう思って周りの女子を見ると、やっぱりボール投げをしていなく、私達のことを遠目からチラチラと見ていた。
すると、私の視線に気づいた女子達は、少しだけ私の方へ歩いてくる。
ゆっくり、ゆっくり。
何かに怯えながらも。
そして、歩いてきた女子の中の1人が
「……ね、その……そろそろ投げないと、怒られちゃうよね……先生こっちに来るし」
私は目をぐるぐると動かして先生のことを見る。確かに、ずっと男子のところにいた先生がこっちにきている。
それに、先生の顔は不安そうだ。
やっぱり、私達のいざこざを見て「やばい」と思ったんだ。
………また、よくわかんなくなっちゃうよなあ……。
そうかな、そうじゃないといいけど……?




