想像は妄想へ
ものすごくアツい気持ちになった私。
目の前の美香は、私が投げたボールをトタトタと歩いて拾いに行っている。
膝を曲げず、上半身でボールを迎えにいく姿勢。
なぜか無性にイライラしてきた。
でも、膝を曲げて丁寧に取っていても私は「ぶりっ子してる?」ってムカつくんだろうなあ。
なんて醜い心。
美香に直接何かされたわけじゃない。
ただ宵乃と繋がっている。
だから心晴のことも傷つけた。
穂花に迷惑をかけた。
宵乃達は、私の性格を踏み躙って、新しく「声格」を形成した。
無意識に人が怖くなって、声に出てしまって……その声で、何人の子を怖がらせてしまったか知ってる?
数えたら数えたで後悔しそうな人数だよ。宵乃達にこの私の辛さが理解できるわけない。
だからこそ、傷つけたかった。
でも、心晴は……私が誰かを傷つけたら、私のことを軽蔑するかな。
心晴は、傷つく辛さを知っているからこそ、「それを人にし返すのは違う」っていう考えな気がする。
…………どこまでも勝手に広がっていく、もはや「妄想」の域に達している思考は置いておいて。
私が意味のわからないことを考えている間に、すでに美香は投げ終えていた。
ぼーっとしていたように見えただろうか。
私はそんなことない。
いつも何かしら考えている。
私の脳は休むことを知らない。休むことの大切は知っているけど、休めない。休み方を知らない。
だから、私の脳には疲労が溜まっている。いつ、発散すればいいのだろうか───。
足元に転がっていたボールを拾う。
美香は頭の後ろで手を組んで、暇そうに空を見ていた。
あぁ、ムカつく。
何も知らずに晴れている空が憎い。
私の心の天気はいつだって曇りだ。
「……えいっ!」
隣で、穂花が振りかぶってボールを投げた。
穂花は、やっぱり仕草か少しオーバーだ。別に、必死に頑張ってる感が出てて良いことだと思うけど。
ボールは、とてもてと地面の石などにぶつかりながら転がる。
すると、ボールの行方を見ていた穂花が「あっ」と声を出す。
私はその声に肩を震わせる。
何があった?
穂花のペアの隣には、私のペアである美香がいる。
最悪の事態を想像する。
いや、そんなことなんて別に………ただの体育の授業だ、そんなことは……。
ボールは、美香の足元で止まった。
ボールは、美香の足元で止まった───。
2回繰り返しても、理解したくない。
「何をそんな大袈裟に」って、後から思うかもしれない。
だけど、美香はこういう場面で──
「はあ、無視した!?」
無視ができてしまう人間だということを、今思い知った。
女子の間に重く不穏な空気が流れ始める。
そして、その空気の渦中には私と穂花と美香がいる。
視線が私達に集まる。
不安そうにこちらを見ている女子も入れば、友達とこそこそ何かを話している女子もいる。




