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攻略

***


「ねぇ、千奈ちゃん、運動場行こ、遅れちゃうよーっ」


マイペースな私のことを、急かすように穂花が言う。

穂花は、水筒と帽子を持ってバタバタと足踏みをしている。首も横にブンブンとふっている。アニメの描写みたいで私は「ぷぷっ」と笑ってしまう。


「ちょっと千奈ちゃん、何笑ってるの!もーう!!」


穂花は困ったように笑う。そんな穂花の姿がなぜだか愛おしくなってたまらない。


「ごめん、行こ!!」


私はふと穂花の手を取る。

穂花はちょっとだけ驚いた表情を見せる。でも、すぐにころっと表情を変えて笑う。



「千奈ちゃん、ありがとう。千奈ちゃんと一緒に過ごせるの楽しいよー」


穂花は、私に向けて右手でピースサインをつくる。穂花は私の右で歩いていたから、体が横を向いて私と垂直の形になっていた。


ピースサインを作った穂花は、水筒を落としそうになり、「うわぁっ」と声を出す。

そんな姿に私の魂がうずうずといてもたってもいられなくなる。


「もー、穂花って実はおっちょこちょい?」

口から咄嗟に出たツッコミ。


なぜか、穂花に対しては声が低くならない。声が変わらない。

その理由を考えても、答えはずっと見つからなかった。



「穂花は、警戒心を溶かすのが得意なの?」


早歩きになっていた私と穂花の間が、少しだけ縮まる。


「………そうかな?そう言ってもらえて嬉しいよ」


「ねぇ、私をどうやって攻略したの?攻略本でも買った?」


冗談も交えて穂花に問いかける。ずっと、心の底から疑問に思っていたことだ。静かな場所で1人で考えても、ずっとずっと答えはわからなかった。


「あたしはね、千奈ちゃんと仲良くなるために努力して、頑張って、イメトレして……。あと、千奈ちゃんについてたくさん知った!!」



穂花がそこまで言い終えると、体育の先生が「そこの2人いそげー」と私達に言った。


その声が耳に届くと、「やば!!」と2人の声が重なる。

その声は、私の頭の中でリフレインする。大切に仕舞っておこう、と頭の中の宝箱の鍵を開ける───。



***



「はっ、千奈のやつ、元気そうにしちゃって」


目の前の女──宵乃の目線の先には、とある女子がいる。

遠い昔の思い出、と言っていいのかはわからないが、それを想起させる。


「美香、何を思い出した?」


その声に肩を震わせる。


「いや、何も……。全然……」

「嘘だぁ、美香は嘘が下手だなあ、もう」



2人は廊下の端っこ、日陰でこそこそと話していた。会話の内容とは裏腹に、空気はピリついていた───。

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