オーバーなリアクション
「あ、っと、その前にさ。千奈ちゃんって、実は相手によって……声、変えちゃうよね」
穂花は目を泳がせながら言った。
前提。
これは前提、だと自分に言い聞かせる。
穂花に悪気はない。ただ、私に事実を伝えてくれているだけ。穂花はいい子、優しい子──。
数回心の中でそう唱えると、急にバカらしくなった。
念仏のように唱えていたのがバカらしい。だって、そんなに警戒することでもなくない?
相手も私と同じ人間、怖いことなんてないのだから──!!
「……そうだよ。あの……迷惑かけてたら、ごめん」
ぶっきらぼうな言い方になってしまう私を咎めてほしい。どうか、これで引いたりしないでね、穂花。祈っても無駄かなあ。
神様を信じたい気持ちと信じたくない気持ちが正面でぶつかってる。
「あのね、あたしもなの」
え、?
穂花、も?
どういうこと、なの?
ふざけてる?バカにしてる?
嫌な思考もたびたび混ざる。こういうところで私の性格の悪さを再認識させられるんだよなあ。神様も実は性格が悪かったり?
心の中で闘ってる私の耳に入った言葉は、意外な言葉だった。
驚きすぎて、声も出ない。
「あたしも、声が変わっちゃうんだよね」
穂花はなぜか淡々と話している。穂花は怖くないの?カミングアウトに似た、この会話──。
「あのね、男子とかの前だと声が高くなっちゃって……」
「それがずっとコンプレックスで……」
「だから、千奈ちゃんとは『同じ悩み持ってるのかな?』って親近感持ってて……」
穂花の声が、耳に途切れ途切れに届いてくる。
今は相槌も打てない。ただ単語を噛み砕くので精一杯。
額に汗も滲む。穂花は、そんな私を心配そうに見ている。申し訳ない、貴重な朝の時間を奪ってしまっていて。
「──あ、ごめん、もう時間だ。心晴ちゃんきてるよ」
穂花に突然そう言われて、私は驚いて公園の入り口を見た。
すると、そこにはいつも一緒に登校している心晴がいた。
「じゃあね、あたしも別の友達と行くからー」
穂花は、私にそう言うと、微笑みながら手を振って、公園を出た。
穂花が私の元から離れると、今度は心晴が近づいてくる。
「………穂花ちゃんだったね、やっぱいい子でしょ?」
「……そーうだね。話すの、楽しかった」
その言葉を聞いて、心晴は目を見開いて驚いた。
「もう、千奈がそんなこと言うなんてー!!成長したなー、よしよしー」
心晴はオーバーリアクションを見せる。でも、本当に嬉しそうだった。そんな心晴の姿を見て、私もなぜだか嬉しくなる。
「って、うるさいよーっ!!声でかいよ、心晴!!」
私は頭にあった心晴の手を振り解き、代わりに心晴の頭をコツンと叩く。
「……さ、学校行こっか。遅刻しちゃうよ」




